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NEW011 〈証文字尽〉用文章手習鑑

[年代等] 作者不明。江戸中期刊。宝暦以降後印。[京都]正本屋吉兵衛(正栄堂)板。
[サイズ] 大本2巻合1冊 255ミリ×182ミリ。
[内容等] 明暦板系統『新板用文章(新用文章)』の改題本。『新板用文章』の類書は頗る多く、江戸前期〜中期にかけて流布した。基本的に上巻が消息文例、下巻が証文類文例プラス字尽で、本書は新たに発見された類書である。原装題簽付きで、数千円というのが嬉しい。男性一般の用文章では、これほど影響力を持ち、長い期間に系譜をたどれるものはほかに例がない。今後の発見を含め、いずれきちんと系統を明らかにしていきたい往来の一つである。




NEW012 〈増補改正〉書用辨明字引

[年代等] 望月某(信陽望月先生)作。弘化二年(一八四五)刊。[江戸]松坂屋金之助(積玉堂)板。
[サイズ] 中本1冊 183ミリ×120ミリ。
[内容等] 異称『四民日用字引』。魚・貝・虫蛇・禽鳥・獣・食火・衣服・道具・草木・支体病疾・宮室・時令・天地の一三部毎に、日用語を列挙して、音訓(ごく稀に略注)を示した往来。本文をやや小字・七行・付訓(語彙の左右に音訓)で記す。巻頭に「真行草」の解説と「六芸細釈(図解)」「正俗文之誤(俗文の誤りを正す)」、また頭書に「千字文」と「秘伝重宝記」を収録する。似たような往来が数種あるが、本書は初見であった。




NEW013 〈漢和〉文章大全

[年代等] 村田徽典作。青木東園書。明治九年四月刊。東京・小林喜右衛門板。
[サイズ] 中本1冊 186ミリ×127ミリ。
[内容等] 異称『漢和文章大全』。書名の通り、漢語を多用した消息文(漢語文)と、近世以来の準漢文体書簡(俗文)を対比させて合計八八通収録した用文章。例えば新年祝儀状としては、漢語文の「新陽之文」が「瑞霞開端新梅頻に献芳歳之祥…」で始まるのに対し、和文(俗文)の「年頭の文」は「宿の梅新たに香を起し、峯々の霞は自ら愛度瑞を顕せり…」のように始まる。作者が緒言で「編中必漢必和ならず」と断っているように、必ずしも厳密な意味での漢文体・準漢文体ではない。明治期の用文章は、今後も数多く発見されるであろう。




NEW014 改正京都町名

[年代等] 京都中学校編か。明治初年刊。[京都]京都中学校蔵板。村上勘兵衛売出
[サイズ] 大本1冊 265ミリ×187ミリ。
[内容等] 明治八年に同じ板元から同一書名で刊行されたものがあるが、全くの別内容。書名からすれば地名尽のような印象を受けるが、実際は「抑平安城は、四神相応の地、千有余年の帝都にて、家数六万、周廻七里四通、五達の街口は、清蔵口・鞍馬口・大原口・荒神口・粟田口、伏見…」で始まり「…此山川の形、勝に百貨舟車の運送も、日に繁華に向ふへき規模壮大の都城也」で結ぶ文章中に、京都大路・小路、町、寺社、山、川等の地名を大字・三行・無訓で記したもの。内容・形式ともに、宝永四年(一七〇七)刊『わかみどり』†や文化一二年(一八一五)刊『女用都名所往来』†を模倣したものであろう。なお、巻頭首題上部に「京都中学蔵版」、また見返しに「定価金二朱」の朱印を押す。本書も既に調査済みのような印象を持ったが、何となく違うような気がして購入したもの。後で確認したら、やはり初見の往来であった。



NEW015 〈新撰〉小学童子通

[年代等] 滝沢清編。明治一四年一月刊。[東京]松田幸助板。
[サイズ] 小本1冊 115ミリ×78ミリ。
[内容等] 明治一二年刊『〈滝沢清著・開化〉絵入商売往来』と、同年刊『〈新選絵入〉消息往来』を合本した往来物。それぞれ単行本では既に発見済みであったが、合本したものは新発見である。それぞれの解題を引いておく。

〈滝沢清著・開化〉絵入商売往来
【作者】滝沢清作。【年代】明治一二年(一八七九)刊。[東京]松崎佐兵衛(稲花堂)板。【概要】異称『〈開化〉絵入商売往来』。小本一冊。銅版刷り和装本。「凡、通商持扱文字・員数許多(あまた)なりと雖も、平常専用之概略者、日記・判取・当座帳、仕入・仕切に大帳也…」で始まる明治期新編『商売往来』。内容は堀流水軒作『商売往来』†同様の文章で、適宜当用に改めるが、通貨のくだりでは「天保・寛永・文久銭、耳白銭を取交て毎時之流通幾許ぞ…」のように近世以来の通貨が通用していたことを示す。通貨、呉服・布帛・織物・洋服、襖類・染色、穀類、青物・山菜類、禽鳥、魚貝、虫類、家屋・建物、果物類、薬種、飲食物(料理)、器財・諸道具類、草木類、金石類、武具・兵器類までの語句を列挙して、「其他雑品数多にて、難指算止筆畢」と結ぶ。本文を小字・六行・付訓で記し、頭書に本文に対応した挿絵を掲げる。

〈新選絵入〉消息往来
【作者】滝沢清作。【年代】明治一二年(一八七九)刊。[東京]松崎佐兵衛(稲花堂)板。【概要】小本一冊。銅版刷り和装本。近世流布本『累語文章往来(消息往来)』†の明治期改編版の一つ。「凡、消息者、達贈答安否之音信、於之四方、人民所用基本也…」と起筆して、新語・日用語など「書帖取扱之文語」を列挙する。書翰の異称、四季時候の文言、安否を問う言葉、また、公務任免、日月、交際・訪問、転宅、栄転、売買・取引・租税、輸送・交通、学芸、養生、人倫、慶事、婚姻その他の関連語句を書き連ねる。本文を大字・五行・付訓(漢語の多くに左訓)で記す。頭書は全て本文内容から連想される四季や日常生活風景の挿絵である。