渡辺康建築研究所
WATANABE YASUSHI architect & associates



不揃いなこと

新聞にNFLコーチ(ニュート=ロックニー)の話が載っていました。曰く、”ベストの
11人ではなく、11人でベストになる選手を使う”。含蓄の多い言葉で、いろいろなこ
とにも言えそうです。全体が良く機能するという意味では、庭も同様に 姿の良いもの
を集めるのでなく、全体で良い状態を造るのです。その場合、1つ1つは完結した形で
なく、お互いに補い合うような、片寄った姿の方がまとめ易いように思います。建築
でも似たようなことが言えそうです。
左右対称、点対象のものはモニュメントや記念碑的な建物(国会議事堂や東京タワー
東京駅など)に相応しく、なにからなにまで揃って制御されているものは、ミニマル
アートのようでもあり、事務的でもあります。等間隔に並び、色々なものも同じ箱に
入れられて幾つも並んでいるようなことです。そして、美しさを求め過ぎると何も置
けなくなるし、話し声さえひそめたくなります。美術館などにそれは相応しいのです
が、住宅にはあまり求めたく無い感じです(使う人によりますが)。
長いテーブルに一列に同じイスが等間隔に並ぶことの反対に、正方形のテーブルに不
揃いなイスがあちこち向いて囲んでいる様な、ソファーのクッションが色も大きさも
違うファブリックで造られている様なことで、日常のもの(特に住宅)は多少くずれ
ているものが相応しいように思います。子供もいるような住宅では、様々なものはあ
る程度は放り出しておいていい感じになる空間を作りたいと思っています。かといっ
てグチャグチャな状態もまずく、なにからなにまでランダムなものは、カオスや渾沌
と同様でどこも似たものにしか認識できなくなります。あるシステムの中でもランダ
ムさを感じさせたり、バラバラなようで何かが揃っていたり、できれば並び方や崩し
方が、ユーモアや楽しさ、使っていて豊かな気持になるようであって欲しい。
そして、不揃いなもののバランスにこそセンスが必要だし、楽しく個性が表れます。
音楽でも、ミニマルミュージックから民族音楽にあるような様々なリズムが折り重な
りあうようなポリリズムまで様々です。3分の曲から2時間を超えるものや、何回か聞
くと飽きるものから、何度聞いても飽きないものまでありますが、建築は後者に近い
ものでなければなりません。

2009/12/27


composition3つ-何を揃えて、何を揃えないか
左から、Muller-brockmannのポスター/Mies van der Roheのイリノイ工科大学マスタープランの一部/Louis I.Kahnのドミニコ修道院


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