■■■AYAの宝塚歌劇 観劇記■■■


星 組

宝塚グランド・ロマン
1914/愛


ラテン・ファンタジー
タカラヅカ絢爛
−灼熱のカリビアン・ナイト−




2004年2月20日(金)〜3月28日(日) 宝塚大劇場公演

2004年5月 7日(金)〜6月 6日(日) 東京宝塚劇場公演



観劇日:金子亜矢さん=観劇

3月 4日 1階10列47→ビデオ収録日
3月11日 1階 3列51→朝海ひかる、舞風りらさん観劇

劇場:
宝塚大劇場



HP主人 森(=SUN)筆。

今回も、金子さん メール投稿劇評 ありがとうございます。

今回は、グランド・ロマン「1914/愛」。
モンマルトルの酒場「ル・ミルリトン」と、芸術家村「ラ・リュシュ」が、舞台だそうです。

アポリネールが登場なそうな。
アポリネール。
彼の書いた本を、プーランクが作曲したオペラがあります。
「ティレジアスの乳房」

何年か前に演出助手で参加し、再演もされたオペラ。
初演は、東京グローブ座が、まだジャニーズ事務所が所有前の頃のグローブ座。
再演は、東京文化会館でした。

コルビュジェの弟子である前川國男氏が設計した東京文化会館。
私は、この建築物が結構好きです。

他に、好きな劇場(建築物)は、日生劇場。
設計、村野藤吾氏。
しかし、この日生劇場、演る側には優しくない劇場のようであります。

そして、新国立劇場のエントランスから広がる共通ロビー。
ここに初めて立った時、
人がいて 美しい建築である
ということに感動した覚えがあります。

建築作品は 誰もいない時に 写真に納められます。
それが一番 美しかったり します。
ココ(新国立劇場のエントランスから広がる共通ロビー)は、
「人」がいるからこそ、美しい。
そういう、建築空間でした。

他に、好きな劇場は、
ザムザ阿佐ヶ谷。
これは、制作さんにとっては やり辛い劇場のようですが。

そしてやはり、文学座アトリエ。

そして、
まだまだまだまだ ありますが!

芝居限らず、箱色々。
「劇場名」揚げ列ね。
ド忘れしていて、記載しきれない事多々ありや、ということで、
「劇場名」を揚げ列ね、無し にて。
キリがなしにて、揚げ列ね。

統べて 思い出しきれる ハズは なし。

人の記憶はアテにならんです。
特に、自分。
ダメじゃん、自分。

ってなことで、金子さんの劇評いってみよう。




宝塚グランド・ロマン
1914/愛



作・演出:谷正純


<解説>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 宝塚歌劇が誕生した1914年、
欧州では戦渦の拡大に、
愛と芸術に生きる人々が新たな旅立ちを強いられていた・・・・。

 舞台はモンマルトルの酒場「ル・ミルリトン」と、芸術家村「ラ・リュシュ」。
ロートレックが描くポスターで一躍有名になった、
魂のシャンソン歌手アリステェッド・ブリュアンと、
謎の伯爵夫人アデルとの愛の行方を中心に、
ベル・エポックを謳歌したアポリネール、モディリアーニなど芸術家たちの
青春群像を描くレビュー劇。

(ちらしより)



<メインキャスト>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

宝塚歌劇団 星組

アリスティド・ブリュアン(シャンソン歌手、「ル・ミルリトン」の経営者)
:湖月わたる

アデル/謎の伯爵夫人(オペラ歌手志望の娘)
:檀れい

ギョーム・アポリネール(詩人)
:貴城けい

アメデオ・モディリアーニ(画家)
:大和悠河

アナトール(伯爵家の執事長)
:英真なおき

ポール・ギョーム(美術評論家、画商)
:汐美真帆

マルク・シャガール(画家)
:立樹遥

モーリス・ユトリロ(画家)
:真飛聖

ハイム・スーチン(画家)
:涼紫央

マリー・ローランサン(女流画家)
:叶千佳

エドモン(「ル・ミルリトン」のウェイター)
:柚希礼音

クロディーヌ(アデルのルームメイト)
:陽月華

                               他 星組生

<感想>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「人間『夢』を捨てたら終わりだねえ」

 と、簡単に上のような結論に観終えた後は至るのだが。
とにかく、どれも中途半端な印象の芝居である。
箇条書きにすると

〔1〕・上のちらしにある「レビュー劇」とは具体的にどの部分をいうのか?

〔2〕・本筋(アリスティドとアデル)はハッピーエンドだが、悲恋でもないし、
    コメディタッチといっても完全なコメディでない。
   ・中途半端。

〔3〕・脇の筋に当たる、芸術家の面々の人生がそちらはほとんど皆シリアスなのに、
    所詮脇の筋だから一面しか書き込んでいない。
   ・芸術家を多用せずに、常套手段といわれようが
    二番手とかは主人公のお友達でいいのでは。
   ・本筋をしっかり書いて欲しい。
   ・脇の筋が皆有名人だけにありすぎ。
   ・本筋が弱い。

〔4〕・なんで最後、急に全員がハッピーエンドで終わる?
    これから戦争が始まるし、芸術家は多くは苦難の人生を歩むのに。

 ということで、55点ぐらいしか付けられない。
とにかく「『夢』を捨てない人たち」ということで群像劇としたかったのだろうが、
主役も芸術家にすればそうなるだろうが絵描きでもないからそうも行かず
「なんか終わった」で幕が閉じてしまう内容だ。
とにかくもっと本筋中心に展開してほしい。
そうすればなにか心に残る内容となると思うのだが。
あとは人別に。


 アリスティドの湖月わたる
この主人公、一人称が「俺様」なのですよね。
「俺様」−う〜ん、テレビアニメの「ドラえもん」のジャイアンぐらいしか言わないのでは。
これは湖月ぐらいしかいえないですね。
他の組の主演男役全員合いそうに無い。
特に花組の春野と月組の彩輝には。

いや、そんなことは置いておいて、「俺様」と自称する主人公なのだ。
まず、「毒舌家」なのだから、物事を裏表無く見る目を持っているし、
そんな彼だから「貧乏人ども」といいつつも優しく施してやる心をもっているし、
そして「俺様」なのだから大将気質で、ジャイアンと違う意味で度量が大きい人物だ。
度量が大きいところは、本来の生まれのよさも手伝っていると思うのだが。
ただ、宝塚の主役が「俺様」では、ロマンに欠けるので
「本当は伯爵家の嫡子」という設定にしてあるのだと思う。

湖月は「俺様」も違和感がなかったし、
度量の大きいところも大雑把に演じているようであるが、
実は緻密な計算があることは十分感じられた。
ただ、彼女の特技から考えると、歌手というより
ダンサーにしておいた方がいいような気がした。
大劇場のお披露目から彼女の柄にあった、ダイナミックな役が続いているので、
今度は『永遠の祈り』でみせた、繊細なところがある役を観たいと思うのだが。


 アデルの檀れい
アデルは初めだけはルームメイトの入院費用を稼ぐため、
謎の伯爵夫人のふりをして費用を手に入れたが、その後は私服しておらず、
本当の自分と伯爵夫人の二面性を楽しんでいるところもあり、
本人自身はだだのオペラ歌手を夢見る純粋な娘である。

こう書いてくると主演女役がやるには楽すぎる感じがするが、
檀もキャリアがあるのだから楽しんでこなしているように見えた。
それでも、初めの伯爵夫人のところはニセなのに堂々としていて
プログラムを読んでいないとニセとは分からないであろう。
ただ、アデルの時の髪型はもう少し凝って欲しい。


 アポリネールの貴城けい
雪組からの特別出演だが、今回の彼女は初めての特別出演だからか
「雪組のレベルを示すぞ」という意思がショーも含めて強くこちらに伝わってきた。

さて、アポリネールは冷静で理知的な詩人であるが、
不当逮捕からマリーを失っても理解があり、
最後は志願兵で出兵するところまで出番の時間の割には心理描写が盛りだくさんであるが、
貴城は人物が細切れに見えないようにうまくやっていたと思う。
特に紫の衣装は素敵に見えた。


 モディリアーニの大和悠河
こちらは宙組からの特別出演であるが、『雨に唄えば』の時にこの組に出演していたので、
あまり違和感を覚えなかった。
モディリアーニは男っぽくて親分肌の芸術家だが、
『白昼の稲妻』につづき、親分肌の役が続いているのであまり新鮮には感じなかった。
むしろ「ヤング」で売り出した彼女の売りが
「芯の太い男っぽさ」に変わりつつあるのかな、と感じた。
湖月と同じことを書くが、今度は繊細な役を観てみたい。


 アナトールの組長、英真なおきさん。
しょぼくれて、ロボットみたいでとにかく面白かった。
スリムなので余計伯爵にこき使われているみたいだし、なんともいえない味があって、
最後に引っ込むところでは2回観て2回とも拍手が起きていた。


 画商の汐美真帆
ビジネスマンだが、この人の芸風に沿った篤実な人柄が感じられて、
芸術家たちより年長の感じも良く出ていた。
星組はスター級の男役が多いのでこれからのポジションが難しいところだろうが、
「癒し」を感じさせるこの人の個性は貴重だと思うので頑張って欲しい。


 シャガールの立樹遥とスーチンの涼紫央
絵画のことを詳しく知らない人間にとっては同じように見えてしまった。
もう少し、台詞で考え方の違いなどが分かればいいのにと思った。
ただ、シャガールの「100年、いや200年後に認められる画家だっているんだ」
という台詞は「絵なんてそんなもんだよね」とえらく説得力があった。


 ユトリロの真飛聖
アル中でいつも泳いだ目をしているのが印象的だったが、
寂しくて酒におぼれていくところなど今ひとつ繊細な演技が観たかった。
ただ、同期の大和演じるモディリアーニとの友情の場面は同期同士の効果か息が合っていた。


 マリーの叶千佳
凄く寂しがりやでアポリネールが5日留置されただけで、彼の元を去ってしまうのだが、
自分は「捨てられた女」なのだ、という情念はよく表れていたが、
女流画家としての自立した面があればいいと思った。


 エドモンの柚希礼音はカンカンの場面の15回転を含め、生き生きとしている。

 クロディーヌの陽月華は出すぎず、ヒロインの女友達を演じているので、
大分娘役としての情感が加わってきたなと思った。

 そのほか、長い時間動くことが出来ないモデル役の百花沙里
変に高い声を出さなくてはいけないオルガの仙堂花歩が目に付いた。





ラテン・ファンタジー
タカラヅカ絢爛
−灼熱のカリビアン・ナイト−



作・演出:草野旦


<出演者>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

宝塚歌劇団 星組


<解説>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 太陽と海と音楽の島、そしてカリブ海に浮かぶ情熱の島−キューバ。
そのキューバを舞台に、満月の夜、一年に一度、
海の中から甦る妖精たちのストーリーを織り込んで展開する、
明るくエネルギッシュでトロピカルなショー。

 キューバの高名な振付家、サンディアゴ・アルフォンソ氏を招聘して、
灼熱のラテン・ワールドを繰り広げる。

(ちらしより)


<感想>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「思ったよりド派手でなかった」

あえていうと

「2階のこと、考えようよ」

 構想はラテンのショーで『ノバ・ボサ・ノバ』+『サザンクロス・レビュー』
というところなのだろうが、柳の下のドジョウとはいかないものである。

前者は名曲の多さ、後者はにぎやかなところと静かなところの対比のよさで優れていたが、
これらを超えるのは確かに大変だろうと思う。
しかし、阪急電車に乗っている人間なら、絶対目に付くド派手なポスター
(いい加減宝塚に慣れている父ですら「あのド派手なのはなにをやるのか」と聞いてきた)
+「絢爛」という語が入ったタイトル、から55分のうち25分は手拍子をし続けて、
という期待はあっさり裏切られた。

確かにキューバの先生の振り付けは斬新でレベルの高いものであるし、
出演者も客席なだれ込みのところでは
凄いアピールでラテンのショーとしてはなりたっているが、
今ひとつ日本人の血が沸き立ち踊る、という感じではなかった。
新作でなくていいのなら『サザンクロス・レビュー。』にして、
キューバの先生の場面を入れ替えたほうが良いとすら思ってしまった。
60点。

 それとこのショーはマリア以外出演者皆妖精ということなのだが、
ファンに蹴り倒されるかもしれないが、
妖精の主役がタカラジェンヌのなかで「妖精」というイメージから一番遠い湖月わたる、
というのが設定の間違いかもしれない。
妖精の女王のマリアに人間のポノポが恋した、の方がこのコンビでは自然だと思うのだが。

 それと、今回は花組に引き続き「客席なだれ込み」について提言したい。
今回、金子は非常に1階のいい席で2回観劇できたから良かったものの、
2回客席なだれ込みがあるのを2階で2回みる状態だったらどうだろう。
1回しか観なかったかもしれない。
特に今回は中詰めとフィナーレのパレードである。
前者はまあ諦めるとしても、後者は一番綺麗なところを2階からオペラグラスで
狙ってみようとするところに1階席へ行かれてはどうしようもない。
やはり「客席なだれ込み」は1公演1回、フィナーレはなし、でお願いしたい。
ちなみに3月11日は2階席の人は数えるほどしか客がいなかったそうだ。
観客動員のことを考えるなら、2階席をもっと配慮すべきだと思うのですが、歌劇団様。

 あとは場面別に。


第1〜4場 プロローグ

 真飛聖の第一声からはじまるのだが、
彼女も知らないうちに芯で踊って観られるようになった。
この後は羽根の洪水、といった感じだが、
檀れいにも次の場面が無いのだから最後まで羽根を背負って付き合って欲しかった。
ただ、檀は芝居に引き続きショーでも鬘にもっとこだわってほしい。


第5場 海の妖精たち→第6場 ハバナ

 貴城けいの場面であるが、童心に返った可愛い場面で可愛かった・・・で終わりたいのだが、
ダブルダッチ(金子に言わせれば二重長縄跳び)が大変だ。
11日は成功したが、4日はビデオ収録なのに失敗で、
11日は金子のみならず成功に思わず拍手してしまった。
東京千秋楽までには完璧になるのだろう・・・。
なんだか、縄跳びの方が印象に残ってしまうシーンだ。


第7・8場 熱砂

 湖月と檀が初めて出会うシーンであるが、
周りのダンスがキューバの先生の振りなのかエネルギッシュでよかった。
ただここでも妖精のポノポの湖月の一人称が「俺」は違和感を覚えた。
妖精なら「僕」だろう、と。


第9〜14場 海のカルナバル

 中詰めであるが、銀橋での貴城けいと大和悠河の男役ぶりの競い合いが見応えがあった。
いうなれば「プリンスVSサラブレッド」と言うところか。
湖月の赤いスーツは一度、他の主演男役全員に着せてみてどううつるか観てみたい、と思った。
ここももっと檀に出て欲しい。

 客席なだれ込みの後のロケットの前の真飛の歌は安定していて、
特出が無い通常の公演になったらポジションが上がるだろうなと確信した。


第15場 夢

 湖月と柚希礼音のキューバの先生振付による蛇のダンスであるが、
凄くカウントが取りにくそうで観ているだけで難しそうなダンスだ。
短時間だが2人良く踊っていると思う。


第17場 灼熱の夜

 大和中心の場面だが、酒瓶を持って踊るところは、
大和になかなか男役の色気が感じられて良かった。
大和も月組を出てからの方が成長は著しいように思う。
やはり組み替えというのは本人にとっては初め大変だろうが、
その人の成長につながるので宝塚全体のバランスを考えたらやるべきときはする方がいいのだろう。
大和もこれからが楽しみだ。


第19場 ハリケーン

 このショーの中で一番好きな場面だ。
まず、風が下手から上手に吹いていて、
主演コンビが今まで観たこともないようなリフトをして(キューバの先生振付)、
見応えがある。
ここも湖月と檀は良く踊っていると思う。


第20〜22場 陽は又昇る

 パレード前にポノポがマリアの元に帰ってきて
デュエットダンスをするところが宝塚らしい。
湖月は全編に渡って鬘を工夫しているのは買える。
このあと上に書いた懸案の(?)パレードに突入するのだが、
1階でジェンヌさんが手を取って立ち上がらせると一緒に踊る老婦人もいらっしゃって、
こういう交流できる人はいいだろうが、2階は〜になってしまう。


 と色々書いてきたが、サンティアゴ先生の振り付けは斬新で面白かったし、
1階にいれば楽しみもあるのだが、今ひとつのれなかったのが事実だ。
このショーは月組で続演予定。
もう少し熱い血が感じられて、手拍子で手が痛くなるようなショーになることを望んで終わる。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□劇評■筆者□□□□
金子亜矢
bacew609@jttk.zaq.ne.jp
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

−SUNの舞台観劇記へ戻る−

−タイトルへ戻る−