■■■AYAの宝塚歌劇 観劇記■■■


月 組

ミュージカル・ロマン
長い春の果てに
Based upon the Film “DIS-MOI OUI” by Alexandre Arcady


リチャード・ロジャース生誕100年記念
ミュージカル・レビュー
With a Song in my Heart
-君が歌、わが心に深く-

"This Musical Show is presented through special arrangement with Toho Music Corporation on
behalf of The Rodgers & Hammerstein Theatre Library of New York City."




2002年  8月23日(金)〜 9月30日(月)  宝塚大劇場公演

2002年 11月15日(金)〜12月23日(月・祝)東京宝塚劇場公演


観劇日:9月5日(木) 1階9列52番

劇場 :宝塚大劇場


HP主人 森(=SUN)筆。

フランス映画「世界で一番好きな人」
この宝塚バージョンなわけだね今回。

フランス。
先週末(9月7、8日)演出助手で参加したオペラ公演があった。
フランスもの。
3年前(1999年9月)にグローブ座で公演したモノの再演。
その時も演出助手にて参加。

演目は2本立て。
ジャン・コクトー作「人間の声」
アポリネール作「ティレジアスの乳房」
二作品ともプーランク作曲。

ジャン・コクトー作「人間の声」
オペラの為に書かれたのでは無く、
先ず戯曲として世に出される。
タイトル『声』

女の、ある夜の物語り。
女優の一人芝居。

別離を告げられた女は、相手の男からの最後の電話を待ち続ける。
しかし眠れぬ夜に耐え兼ねて女は睡眠薬で自殺を図る。
友人マルトに助けられてそれは未遂に終わる。
その翌日深夜、女は一人電話を待つ。

−−−−舞台はここから始まる。

1920年代のパリ。
まだ、電話が「交換手」よって繋げられていた時代。
まだ、電話で話しながら外へ出ていくなど 夢物語だった時代。

電話を待ち続ける女は、混線だらけの錯綜した電話事情に翻弄されている。
そこに待望のベル。
昨夜の事件を悟られまいと明るく振る舞う女。
しかし会話は次第に女の思惑を離れ、語るつもりのなかった事柄に及ぶ。
二人の5年間。
結末への数日。

「話して、話して、何でもいいから話してよ・・・!」

最初のうそ。
最後の電話。

「愛している、愛しているわ・・・・」

消えいくように、声はパリの街に沈む。

−−幕−−


ジャン・コクトーという創造者が、私はとても好きだ。
とりわけ彼の作った戯曲の中で「声」は格別に好きだ。

この「声」という作品や、「声」に係わる人やらに、何故だか遭遇することが多い。
と、友人に言うと「好きなものには縁があるんだよ」と言われる。
だから「そういうもんなんだろうねえ、面白いものだねえ世の中は」
などと爺さんのような返答などしてみている。

そのテキスト「声」にプーランクが音をのせる。
モノ・オペラ。一人芝居ならぬ一人オペラ。
ピアニストと演者の2人の 濃密な空気。

前回はオーケストラにて指揮者がいての、オペラ「人間の声」。
今回はピアノだけ。指揮者もいない。

ピアノの「音」と「間」。
電話での男の声であり、息遣いである。
女自身の心の揺れでもある。
時に電話のベルとなり、
時に電話の向こうで流れるジャズにもなる。

その「音」を、「間」を、どう解釈していくのか。
「男」は何と言ったのか。
「女」はどう思ってそれに対応しているのか。
それらを探るのは実に面白い。
選択肢と組み合せは無数だ。

演じ手の数だけ「声」はあり、
そして、その演じ手が、20代、30代、40代・・・
その時各々の「声」がある。

だからこそ、
「またどこかで」
「またいつか」
そう握手を交わす 終演後の楽屋。
至福の時間である。

もう一本のオペラ「ティレジアスの乳房」。
なんでもありオペラ。

シリアス「声」と、スチャラカ「ティレジアスの乳房」。
いい二本立てだ。

そしてどちらのキャストも「楽しかったー」口々に。
私も楽しかった。

打ち上げ 朝までコース。
今度は飲みの後はラーメンでなく蕎麦にしてくれい。

2002年夏日本にて フランスオペラに明け暮れる。

ってなことで、金子さんの劇評いってみよう。




ミュージカル・ロマン
長い春の果てに
Based upon the Film “DIS-MOI OUI” by Alexandre Arcady


   原作:アレクサンドル・アルカディ
脚本・演出:石田昌也


<出演者>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

大劇場:宝塚歌劇団月組72名  (専科)星原美沙緒、汐風幸、湖月わたる
 東宝:宝塚歌劇団月組72名  (専科)星原美沙緒、汐風幸、湖月わたる


                 ステファン(脳外科医):紫吹淳
             エヴァ(ピアニスト志望の少女):映美くらら

        ナタリー(精神科医。ステファンの元恋人):汐風幸
        クロード(外科医。ステファンのライバル):湖月わたる
         ジョルジュ(病院長。ステファンの父親):星原美沙緒
               イボンヌ(ジョルジュの妻):夏河ゆら
               ベルナール(エヴァの祖父):光樹すばる
                   ジャン(新聞記者):汐美真帆
フローレンス(弁護士。ステファンの現在のガールフレンド):大空祐飛
       アルノー(麻酔医。今は美容外科病院を営む):霧矢大夢
               ブリス(ステファンの親友):大和悠河

                          他 月組組生

<解説>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 偶然の出会い、別れ、そして・・・10年越しのハッピーエンド。
愛に関するエピソードを多くからめ、
脳外科医とピアニスト志望の病弱な少女との恋を
ショパンの旋律に乗せて描く心温まる恋物語。
1995年にフランス映画の鬼才アレクサンドル・アルカディが描いた秀作「世界で一番好きな人」をモチーフに フランスとスペインを舞台にロマンチック・ミュージカル化。
月組トップコンビに相応しい現代的なラブ・ロマンスを描く。

(ちらしより)


<感想>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 「大劇場にしては少し小粒で、そつなくおさまっているミュージカル」

 このミュージカル元は、フランスの映画だそうだが
フランスのエスプリというものはなんとなく感じられた。
ただ、舞台から感動が溢れてくるようなミュージカル(例:「エリザベート」)ではなくて、ほっと安心するような内容で、大劇場には少しまとまりすぎた感がある。
バウホールやドラマシティ向きだと思った。
80点。あとは人別に。

ステファンの紫吹淳(リカちゃん)。
かつては、リカちゃんは色の濃い役が多くて、
さて二枚目となると、取ってつけたような感じがしたが、
トップ3作目ともなると、すっきりした主役像を表現していた。
このステファンという役は、現在は手術ミスから立ち直れずにいて、
また女性関係も心の整理がつかなくて、そういうモラトリアムの最中にエヴァが現れ、
彼女を通して段々と自分を取り戻していく、
という一人の男の再生を表現しなくてはいけない。
リカちゃんはモラトリアムのところが上手く表現できていて、
エヴァとの出会いで段々再生されていく過程がよく演じ分けられていたと思う。
超金髪というのには初め驚いたが、段々と役を見ていくうちにそう違和感がなくなった。
二枚目リカちゃん完成という感じであった。


 エヴァの映美くらら(くらら)。
ステファンが好きでたまらない、14歳の思春期の少女の心模様を上手く表していたと思う。
少女の押し付けがましさや、大人(フローレンス)に対して気を使ってみたりして、
「うーん、若い子ってこうだよね」
と自分の若い頃(いかんいかん、そう昔ではない)を懐かしく思い出させてくれた。
今の彼女にとって背伸びしない適役だったのではなかろうか。
特に、銀橋で「世界で一番好きな人」を歌うところは、とても可愛かった。


 ナタリーの汐風幸(コウちゃん)。
専科で女役?と思ったが台詞の声に違和感がなく、実生活では恋に少し傷ついて、
その傷を癒してくれる人を探しているが、
仕事としては精神科医としてはちゃんと従事している、
という賢い女性をいつもながらきちんと脇をしめていた。
ただ、歌になると少し男役になっていて
やはり男役の芝居が見たかったな、という気になった。
今回は、男役2人を女役に回すことで大分役のバリエーションが広がったが、
やはり、男役は男役の方がいいな、というのがあくまでも個人的感想である。


 一方、クロードの湖月わたる(ワタル君)は、いつもながらの骨太い男役の造形で、
「医術は金だ」と思っている男が、
どうしようもない自分の病で倒れる無念さを十分表していた。
ただ、ワタル君に当てられる役は、なんだかいつもこういう「骨太」な男が多いので、
次に専科出演するときは、弱い男とか、
新境地を開けるような役を先生方に書いていただきたい。 


 ジャンの汐美真帆(ケロ)は堅実な役で、この人に合っていてよかったが、
「ガイズ〜」のビック・ジュールが面白かっただけに、
もう一ひねりある役にしても、もっと面白かったと思う。
よく考えたら、この役だけ恋人がいないのですね。


 フローレンスの大空祐飛(ユウヒ)。
初め出てきたときにチャーミングではっと目を引いて女役もお似合いであった。
また、アメリカ人ということで物事をはっきりいうところもなかなか悦に入っていた。
もう少し、台詞の声が高ければ文句ないが、全然男役は感じられなかった。
一度ショーでも女役も観てみたいものである。


 アルノーの霧矢大夢(キリヤン)。
ナタリーに最後は愛される役だが、
前作のアデレイドに比べて少々役が小さすぎる気がした。
ただ、元気印の彼女、アメリカ人には見えるのだが、
フランス人には見えにくいところもある。


 ブリスの大和悠河(タニ)。
プログラムにイギリス人、と書いてあったが
芝居が終わるまでフランス人とばかり思っていた。
軽いところは上手である。
しかし、キリヤンに続いて、月組2番手の彼女にとっては役が小さすぎるような気がした。


 最後にステファンの父の病院長の星原さん。
さすが、専科、父親として息子が可愛い面と病院の医師の長としての倫理観を
うまくバランスをもって演じられていた。


 いろいろ書いてきたが、やはり作品の粒の小ささが拭いきれず、
そこへ役を詰め込んだ結果、それぞれの役の奥行きが深くなくなってしまったのは
仕方ないとはいえ、残念である。
もう一度観るときは、フランスのエスプリというものをもっと感じてきたいと思っている。





リチャード・ロジャース生誕100年記念
ミュージカル・レビュー
With a Song in my Heart
-君が歌、わが心に深く-

"This Musical Show is presented through special arrangement with Toho Music Corporation on
behalf of The Rodgers & Hammerstein Theatre Library of New York City."


作・演出 岡田敬二

<出演者>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

大劇場:宝塚歌劇団月組72名  (専科)星原美沙緒、汐風幸、湖月わたる
 東宝:宝塚歌劇団月組72名  (専科)星原美沙緒、汐風幸、湖月わたる


<解説>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 今年で生誕100年にあたる、ブロードウェイの大作曲家リチャード・ロジャースの音楽は
日本人にとって健康で清潔で、
アメリカの正義を信じる「グッド・アメリカ・ライフ」の象徴だった。
宝塚歌劇ではミュージカルプレイの基礎を彼の音楽から教わり、
そして育てられたといっても過言ではない。
今回の作品は彼の音楽をベースに、独自の世界を展開。

(ちらしより)


<リチャード・ロジャースの凄さ>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 「on the 5th」のときも書いたが、
ガーシュイン・ポーター、そしてロジャースとくれば、
ミュージカル音楽の基礎の基礎である。
なんやかんや、宝塚で、また東宝ミュージカルで聴いてきた結果、
金子、実は今回のショー、1つも知らない曲がなかった。
もし、ロジャースで一番好きな曲を挙げよ、といわれたら
「マイ・ファニー・バレンタイン」である。
なにせ初めて覚えた英語の歌であるので。

今回のショーでは、極力日本語に訳してあって、小さいお子さんにはこの方がいいだろう。
リカちゃんが小粋に歌った「マンハッタン」などは、
面白い韻も踏んであって原語のほうがいいかもしれないが、
あくまでも日本人向けのショー。
日本語で正解であると思った。
そんな名曲に彩られたショーが始まる。


<感想>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「やたら宝塚らしい、ただ明るいだけのショーだった」

 ショーというものに対して、金子は、
1場面は感動するシーン、共感するシーン、魅惑されるシーンが必要だと思うが、
今回はなんだがそれがなかった。
1階A席3分の1空席があったのも仕方ないか、と思ってしまった。
豪華なだけではいけないのである。
舞台から客席へエネルギーを与えてくれるシーン、
客席が舞台に魅了されるシーンが1場面はないと、
いいショーとはいいがたい。そういう意味で50点。


第1章 オープニング

 前半の優雅な幕開きは良かった。
黒燕尾と白いドレスでいかにも宝塚、という感じであった。
後半のタニとキリヤンの老夫婦のおちゃらけぶりは、あまりにも二人が動きすぎるので、
若いことばれまくり、という感じであった。
少し古い例で失礼だが、草野先生の「ジャンクション24」(H3年)の中詰めの
大浦みずきの老けぶりは見事であったな、と思い出してしまった。


第2章 少年時代

 リメイクの場面だが、正直冗長に感じてしまった。
少し、岡田先生の名場面「花占い」と似ている気がした。
少年たちに追いかけられる紫城るいが「スラップスティック」についで
「トム・ボーイ(元気な女の子)」ぶりを発揮して、観ていて気持ちが良かった。
それと、リカちゃん、コウちゃん、ワタル君ぐらいの学年になると、
正直「少年」はきついかな、と思ってしまった。


第3章 思い出の40th

 初めのキリヤンのアドリブたっぷりの「ブルー・ムーン」は流石であった。
またあとでの、美々杏里の正統派の「ブルー・ムーン」も
この人ならではの聴き応えがあった。
この場面は主にワタル君中心であったが、
ブルーの衣装がよく似合って、ここもまた宝塚らしくてよかった。
ただ、分からないのが、ここが中詰めなのか、
つぎの章が中詰めなのか、中詰めがないのか、である。
中詰めがここなら、
最後までリカちゃんに出てもらったほうがいいのではないかと思うのだが。


第4章 オリエンタル・ファンタジー

 ここでつくづく、「ああ、この組の二番手はタニなのだ」と感じた。
一人白の軍服でそりゃ格好いい。
くららも、あまり背伸びしないで組んでいる感じがした。
ただ、ここは「南太平洋」をモチーフにした場面なのだろうが、
いきなり東洋、というのはギャップがあった。
「バリ・ハイ」など名曲を使うだけでなく、元のアメリカ軍人と、
従軍看護婦というアメリカ人同士のカップルのほうがいいような気がした。
このあとの「間奏曲」のコウちゃんは歌唱力があるのに、
芯になる場面が折角専科から特出しておきながらなくて、少し可哀想な気がした。


第5章 チャイナ・ドール

 もしかしたら、このショーの一番の見もののリカちゃんの女役である。
初めのチャイナ・ドレスのところでは、凄いリフトをするワタル君に拍手がいっていたが、
リカちゃんの女役はなかなかクールな感じである。
そして、その後はダルマのお衣装。
素晴らしいおみ足なのに、リカちゃん、恥ずかしがってる・・・
「いい女だよ!」とかけ声をかけてあげたくなった。


第6章 全ての山の頂をめざして

 始めのくららの「エーデルワイス」は声が澄んでいていい。
その後、この章の題名の曲を美々と掛け合いで歌うのだが、一歩も引かないくららは凄い。
最後にリカちゃんが出てきて全員で歌うのだが、
「シトラスの風」の衣装が多く使ってあって、
そっちへ目が行ってしまったことも正直あるのだが、
今ひとつ団結力が感じられなかった。
いっそ、歌う人が歌って、踊る人が踊るほうがいいのかもしれない。


第8章 フィナーレ

 初エトワールの花城アリアはなかなか声がとおっていて、
また有望なエトワールの出現だ。
また、スターが順々に大階段から降りてくるときは、
「シャル・ウイ・ダンス」など、名曲がちりばめられていて、
ロジャースの多作ぶりに感心した。

 ということで、なんか豪華だったけど、感動せずに終わったショーだった。
見ものはリカちゃんの女役?でしょうか。
なにか、もう一つ、出演者全員の力がパワーとなって、観客に伝わるシーンが欲しかった。

 以上、色々書きましたが、妄言多謝。
これから見られる方の参考になれば嬉しいです。
それでは、これで終わります。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□劇評■筆者□□□□
金子亜矢
bacew609@jttk.zaq.ne.jp
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