ホイール・ビルディング

(wheel building)


今でこそ、スポークホイールの自動車というものは、極めて限られたものですが

戦前においてはそここで普通に見られた風情なんですね。

さてわがオースチンEB65もついにホイルの寿命がやって来ました、

ということで新たにスポークホイルを組み立てることになりました。


ホイルの寿命が尽きたと判断した理由

明らかに以前に比べて、ホイルの振れ量が増えたと共に スポークを詳細に検分すると

スポークの交差部が摩擦で減摩している、最大では太さの1/4を越える削れが発生していた

そしてスポーク穴から大量の錆が噴出すようになった、そして最もホイルの組みなおしを

決断させたのは ニップルとスポークが接着剤若しくは、緩み止め剤で固定されていて、

ニップルが廻らず調整が極めて困難であったことが最大の要因でした。


ホイールビルディングの実際

1.編み方の確認

これはとても重要な作業です、特に生産台数の多いものほど

リムのスポーク穴の位置などが、専用だったりしますので写真を

撮影したり、ハブに対するオフセット量やハブとタイヤバルブ

位置なども詳細を記録することを強くお勧めします。

実際に作業を進めると30年代半ばのオースチンの場合、専用のリムだということが判りました。

特別付録としてトホホの例

2.スポーク太さ、長さの測定

スポークの寸法を測定します、必要に応じてスポークを取り外し、寸法を測定するのですが

場合によってはニップル部が膠着していて、加熱等が必要な場合が有りますが、その場合

火傷、火災、他の部分の保護にご注意ください。

例スポークカタログCWC

ちなみにオースチンの場合、スポーク太さは7番でした。

3.スポーク等の調達

今回は以前ベロセットのスポーク等を依頼したイギリスの

セントラルホイルCoに依頼しました

http://www.central-wheel.co.uk/home/index.shtml

調達したスポークとニップル

右上、インサイドスポーク

左、ニップル

右下、アウトサイドスポーク

スポークは塗装するのでメッキ

(ガルバナイズド)をしていない

状態の物を発注しました。

4.ホイルの分解

スポークの編み方をしっかり記録したら、後はワイヤーカッターで、ひたすら

切リます。(結構大変なんですが)

5.ホイルの組み立て

組み立てに際して、必要な工具類として、絶対に必要なのがニップル回し

ホイルの組み立てに必要な工具類

上、スレッドコンパウンド

銅粉末をグリスに練りこんだ、ペースト

ねじに掛かる力を均一化する。

中、ニップルレンチ

コレが無いと後にも先ににも始まりません

下、ドライバ

スポークを組んだ直後に荒くニップルを

締めこむ時に必要、場合によっては電動ドライバも有効。

そして、振れ取り台、幸運にもオースチンセブンの

ホイールはこの自転車用のものでも、作業が可能でした。

場合によっては、シャフトを万力にくわえても作業は

十分可能です。

スポーク編の順序

はじめにタイヤチューブのバルブ付近から始めます。

その他、ホイルによってはリムとハブの位置合わせを行い狂わないように注意して

編んで行きます。

ハブにの種類によっては、予め全てのスポークをハブにフランジ穴に通して置かなければ

ならない場合も多く、その場合はゴム紐などで束ねると作業がやり易くなります。

塗装仕上げされているリム、スポークの場合は保護テープなどを適宜貼り付けて作業を

行うと、仕上がりがキレイに出来ます。

ホイルの調整はスポーク張力が低いうちから、下記項目に留意しながらニップルを

締めて行きます。

スポーク張力が上がった状態になってからの調整の場合は行きすぎた側のニップルを緩めてから反対側を

締めこみます、そのときもあまり一度に欲張らないで、1/4〜1/2回転程度を目安に行います。

ホイルの編み上げ目標としては下記

1)オフセット;クルマとの位置関係による

2)縦ぶれ;1.6〜2.4mm程度(1/16〜3/32”)

3)横ぶれ;1.6〜2.4mm程度(1/16〜3/32”)

4)張力


6.ホイルの仕上げ(塗装)について

ホイールの仕上げは全面塗装仕上げが多いのですが、今回はちょっとオタク的試みをしてみました。

当時の写真をよーく見ると(戦前の二輪のレース車両)スポークは黒塗りでもニップルは

白い色をしています、4輪のホイルでも定番のラッジ・ウイットワースも同様なものが

あったので、オタク的トライアルとして、ニップルの鍍金を残すことととしました。

↑ラッジ・ウイットワース                 ↑ベロセットKTT

そのため、スポークは1本1本塗装後に編むという、とても面倒な作業となりましたが そこはサンデーメカ

ならではの利点を生かしました?

スポークの塗装は

鍍金無しのスポークをカンザシ状に冶具に取り付け、プライマリ

サフェーサを吹き、上塗りをします。

この場合も賛否両論があり、無負荷のスポークに塗装しても

組み立て時にテンションが掛かりその結果外径が小さくなり

塗装がはがれるという問題ですが。そのあたり乗り込んで

来ればそれなりの結果がみれると思われます。

通常はホイルを組んだ後に脱脂洗浄後通常の塗装を行います。


塗装の補修について

塗料の種類に関しては全て塗装を除去後に再塗装する場合は

好きな塗料で構わないと思うのですが、補修の場合、元の

塗料が判明出来ない場合、油性エナメルがしわにもならず

安全と思われます。


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