Part of Nobumi Iyanaga's website. n-iyanag@ppp.bekkoame.ne.jp. 4/9/05.

aabmfjlogo picture

This page is in UTF-8

第24回
2004年 2月27日
波多野宏之
メディアシオン[媒介作用]:文化情報の担い手と社会

 今日、情報・コミュニケーションの観点からさまざまな文化事象をみると、その枠組みが大きく変化していることに気づく。例えば、美術館のもっとも中心的な位置に図書室が設置され(2002年オープン、熊本市現代美術館ホームギャラリー)、丸の内の官庁街には、多くのボランディアが介在してさまざまな形と色彩の牛(の彫刻)が出現する(2003年秋、カウパレード)。図書が美術館を侵食し、アートは美術館を捨て、街にでる。
 このような時代にこそ、文化情報専門職のABCD(Archiviste, Bibliothécaire, Conservateur, Documentaliste など)は、そのディシプリンやコミュニティに固執することなく、各々の単一の思考方法を超えて、トランスディシプリナリティを求める必要がある。現に、情報処理の世界においては、文書館、図書館、美術館・博物館、各種資料センターなどの目録法に関して、それぞれの方法を尊重しながら、なおこれらを横断(クロスウォーク)して共有できるような処理モデル(Conceptual Reference Model, CRM)などの提案が国際的に行われている。
 ところで、上記の ABCD に代表されるような専門職は、英語で「メディエーター」(メディアトゥール médiateur)とも呼ばれ、その機能は「メディエーション」(メディアシオン médiation)であるとされる。フランスにおいては、1960−70年代に「アニマトゥール animateur」「アニマシオン animation」が社会教育指導者や図書館における読書推進活動担当者とその機能を指す言葉として用いられたが、現在では、「メディアトゥール・キュルチュレル médiateur culturel」「メディアシオン・キュルチュレル médiation culturelle」が、とりわけ、現代美術(館)における、作家(作品)と観衆や行政を結びつける新たな職能として注目を浴びている。このような専門職制度にかかわる問題以外にも、美術館や図書館に関連したボランティアや NPO などの果たす媒介者としての役割を正しく評価しなければならない。
 こうした「メディアシオン」の機能概念を思想的に位置づけたものにレジス・ドブレ(Régis DEBRAY, 1940-)の創始した「メディオロジー médiologie」がある。これは「伝達作用(transmission)の社会的機能を技術的構造との関わりにおいて扱う学問」(西垣通)と理解されているが、DEBRAY は以下のように述べている:
「『メディオロジー』の『メディオ』とは、メディアやメディウムを意味するのではなく、『メディエーション(媒介作用)』、つまり記号の産出と出来事の産出の間に現れる中間的な手続きや集合体の、力学的な全体を意味する。そのような中間体は、『混成体(ハイブリッド)』(ブリュノ・ラトゥール)、すなわち同時に技術的、文化的、社会的でもある媒介作用に酷似する。〔中略〕メディオロジーは、専門機関や専門用語にたいして、みずから境界侵犯的[transfrontières]、横断的[transversale]でありたいと考えるのだ。」(『メディオロジー宣言』)
 「メディアシオン」は、卑近な例ではわれわれ日仏会館友の会の果たす媒介機能から、ABCD などの専門職能、美術館や図書館の制度、さらには一国、国際間の教育文化の制度にまで敷衍して考察されるべき、一つの重要なキー概念であるように思われる。
 日仏会館図書室には、DEBRAY の原著の多くや、理論誌 Les Cahiers de médiologie も所蔵している。

波多野宏之・記


日仏会館図書室友の会・ホームページへ | 公開講演会・要旨ページへ


Go to NI Home Page


Mail to Nobumi Iyanaga


This page was last built with Frontier on a Macintosh on Sat, Apr 9, 2005 at 5:47:06 PM. Thanks for checking it out! Nobumi Iyanaga