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日本が国際的に開けた国になるには?

第28回講演会 2005年3月24日(木)
日本が国際的に開けた国になるには?
箱山富美子(藤女子大学教授)

 箱山氏は1982年から2003年まで国連職員としてUNICEFおよびILOに勤務。ラオス、アルジェリア、スーダン、コソヴォなどに滞在し、現地での仕事や子育て体験等から得た知見に基づいて表記の講演を行った。
 まず、日本で国際人が育たない要因は何故かを問い、「国境を接しない」「単一民族」「単一言語」といった特徴を挙げた。これらは通説として言われていることながら、その延長上にある具体的な事例を通して語られるとき、改めて納得できるものであった。例えば、ユーゴ問題を自らのことのように語り合い、自らの目で確かめるため自動車で出かけたい、と話す各国の知人たち、パリのアパートでの多様な国籍の住人との混住経験、西欧列強の旧植民地であり、自国内で多数の言語が話されるガーナなどにおける生活体験に根ざした解説は、異文化体験の希薄さが日本人の閉鎖性、均質性志向を助長しているとの指摘に、より強い説得力をもたせるものであった。
 さらに、移民の受け入れに消極的な国家のありようや、外国人教師などに対等なポストを与えないといった日本社会一般の傾向のみならず、とりわけ報道機関のありかたに問題があるとした。BBCなどによるアルグレイブ収容所やダルフール(スーダン)紛争の報道を例に、外国事情の報道が概して局所的であり、(場合によっては報道されることすらなく)かつ扱いも<マイルド>になってしまうきらいのある日本のマスコミの報道姿勢である。言い方をかえれば、日本人は日本の報道機関からニュースへのアクセスを拒否されているに等しい、という。これは、衛星放送やCATVの普及、海外旅行者の増大などにより諸外国の放送に接する機会が増えている今日、一般人でもうすうすは感じていることではあろうが、これを本質的かつ重大な事項として受け止め、広く批評していくことが大事であろう。
 講師は現在、国際理解教育や異文化コミュニケーションの分野で教鞭をとっていることもあり、日本人が国際人となるため、相手を尊重し受け入れる双方向コミュニケーション教育の重要性を指摘する。モーリタニアの砂漠に暮らす児童、未開発ではあってもみずからの土地について誇りをもって語るリビアの町長、コソヴォにおける多民族児童の共学の様子など、講師の手になる映像は、多くを物語る訴求力の高いものであり、こうした映像が広く教育現場で使われれば、大きな効果を発揮することと思われた。
 最後に、外国の教師が「コミュニケーション」を最重要と考えるのに対して、日本人教師は「生徒の努力」や「平等」を重視するという調査結果(新聞報道)を援用しつつ、「均質性」の枠から抜け出すためには、法整備、報道姿勢、外国人・外国語に接する機会の提供などとともに教育がいかに大事であるか、ということを強調した。これは英語の早期教育を行えばよい、というような単純なことではなく、日本を知り、人間の尊厳、民族や宗教の多様性を知り、・・・といった人間としての基本的な普段の営為が必要であることを述べて講演を結んだ。
 講師は主としてUNICEFの事業として児童教育支援にあたったが、質疑応答では、UNESCOとUNICEFとのあいだの役割分担などについても論議された。

(波多野宏之)


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