キューブリック死す

はじめに 犬より

御存知のようにキューブリックが死去しました。追悼文として原稿お願いします。

「人間の本質」 by犬 99.4.20
 書き過ぎな作家、出過ぎな役者、撮リ過ぎな監督、ブームやスタイルが秒刻みで変化し、余計な雑音ばかり耳に入る
最近ではある程度「過ぎた状態」で居る事を維持している人の方が勝ちと思われる風潮がある。しかし評価は低い。
当然だ。その典型がスピルバーグ。多作の中には傑作もあるが駄作も多い。これは黒沢にも言えることである。打率
で言えばキューブリックは9割近いだろう。スピルバーグは圧倒的に打数は多いが打率は3割にも届かないし黒沢も5
割には行かない。時代を先読みする点でもキューブリックは大変優れていた。何年もかけて練り上げているのに発表
した作品が時代の先を行っていたという事はどういうことなのだろう。また彼の作品には作風というものがほとんど
ない。次々に変わるのである。しいて言えば、「人間の本質」の追求だろう。そしてどれも恐い。娯楽作はないが、
醒めた笑いは随所にあった。非常に高いところに視点を置いているように見えるが実は「人間の心のど真ん中」に潜
んでいるそういう監督だったのかも知れない。新作が見られないのはとても残念です。

スタンリーキューブリックを偲んで。 byモノ 99.3.30

 新作を撮って完成したと思ったら逝ってしまいました。発表された作品はきわめて少ないですがそれだけに駄作はなく「完璧主義者」と呼ばれ一切の妥協を許さず、様々なところでトラブルや衝突が耐えなかったと聞きます。しかしそれだけ自分の撮りたい物を撮り続けられたことは自信と才能、幸運等を合わせ持っていたからでしょう。
 彼の作品で強烈に残っている作品を一つ挙げるならば、「時計仕掛けのオレンジ」です。他にも「2001年宇宙への旅」「スパルタカス」「シャイニング」「博士の異常な愛情」「フルメタルジャケット」(この時期キューブリックが”ベトナム物”を撮るという噂が立ったためかやたらとベトナムを題材にした映画が製作されたのは結構知られた話だ)などが挙げられますがやっぱりこれでしょう。今見ても新鮮で強烈です。
 今年「ロリータ」がリメークされて上映される予定ですが、近年ハリウッドでリメークものがはやっているということはもう新たに撮れる題材がなくなってきつつあると言うことなのでしょうか?なんだかハリウッドの映画産業も日本同様先が暗いように思いますがこれがただの流行であって欲しいと思います。
 話はそれましたが、もっともっとキューブリックには映画を撮って欲しかったと思います。これは単なる個人的なわがままですが、多くのファンの人達も同様に思っていることでしょう。