「〔あの大もののヨークシャ豚が〕」の創作 1927(昭和2)年4月7日
   

「〔あの大もののヨークシャ豚が〕」の創作
1927(昭和2)年4月7日




『春と修羅』第三集の中に「〔あの大もののヨークシャ豚が〕」と題された詩 があります。 この詩の下書稿(一)は、『詩ノート』「〔扉を推す〕」として収められています。

『春と修羅』第三集 一〇三二 『〔あの大もののヨークシャ豚が〕』
あの大もののヨークシャ豚が     
けふははげしい金毛に変り      
独楽よりひどく傾きながら      
西日をさしてかけてゐる       
かけてゐる             
かけてゐる             
まっ黒な森のへりに沿って      
まだまっしぐらにかけてゐる     
追ってゐるのは棒をかざして髪もひかる
日本島の里長のむすめ        
梢枯れかかった槻の木に       
ぐらぐらゆれてゐるのは夕日     

里長が森をぽろっと出る       
なにかむしゃむしゃ食ひながら    
小手をかざしてそらを見る      

この詩には、太陽が西に傾き、豚が西日で金色になっている様子が描かれています。 この日の天文暦を調べると、

太陽南中 11時36分     
日の入  18時05分     
薄明終了 19時37分     

となります。シミュレートした画面は日の入1時間前の17時05分の空です。おおまかに17時から18時の間にでも 詠まれたと推定することができます。「ぐらぐらゆれてゐるのは夕日」という表現がなんとも ユニークです。
この日の晩には、宵の明星(金星)が輝き、月齢5.2(20時)の月が火星と接近し 美しいながめだったことでしょう。


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