「宮沢賢治春季セミナー」
   

「宮沢賢治春季セミナー」


Kenji & Event

1999年3月21日〜22日 一関・松島・平泉方面


「宮沢賢治春季セミナー」

平成11年3月21日(日)〜22日(月)
於 一関・松島・平泉方面

主催
宮沢賢治学会イーハトーブセンター
宮沢賢治イーハトーブ館

雪の中尊寺

宮沢賢治春季セミナーバスツアー「異途への旅 Part2」 日程
3月21日(日)
 10:00 (新幹線)新花巻駅正面玄関前集合
 10:15 (在来線)花巻駅正面玄関前に集合
       花巻南インター〜(東北自動車道)〜一関インター
 11:50 一関市「弧禅寺」着、船着場跡見学
       一関駅経由
 14:40 石巻市「日和山公園」着、賢治詩碑見学
 15:00 石巻市「日和山公園」発
       石巻インター〜(三陸自動車道)〜松島インター
 15:45 宮城郡松島町「瑞巌寺」着、見学
 16:35 宮城郡松島町「瑞巌寺」発
 17:30 宮城郡七ヶ浜町菖蒲浜「大東館跡」着
 17:50 宮城郡七ヶ浜町菖蒲浜「大東館跡」発
 18:00 宿泊「小野屋ホテル」着
 18:10 講話「宮沢賢治の海」(講師 奥羽大学助教授大沢正善氏)
 19:30 夕食交流会
3月22日(月)
  7:00 朝食
  8:30 「小野屋ホテル」出発
  9:50 小牛田町「斎藤報恩農業館」(小牛田農業高校内)着、見学
 10:30 小牛田町「斎藤報恩農業館」発
       古川インター〜(東北自動車道)〜平泉インター
 11:00 昼食(平泉P)
 12:00 平泉「中尊寺」着
 12:50 講話(中尊寺住職 佐々木邦世氏)
 13:30 「賢治詩碑」「中尊寺金堂」見学
 14:00 平泉「中尊寺」発
 14:40 一関駅経由(解散)
 15:40 花巻駅経由(解散)
 15:55 新花巻駅(解散)


宮沢賢治春のセミナー、3度目の参加です。 今回は、岩手県南部〜宮城県北部への一泊旅行です。 賢治が修学旅行で出かけた地や、詩碑のあるゆかりの地を訪ねる旅です。 宮沢賢治イーハトーブ館関係スタッフ、地元協力者の方々のおかげで楽しいひとときを過ごすことができました。 今年もまたたくさんの学会イベントが用意されています。 間もなくアップしますので、詳しくは学会を紹介するページをご覧ください。

☆バスツアーレポート☆
   

狐禅寺
花巻を出発したバスは、高速道路を利用し一関へ。 賢治は中学4年(1912年5月27日)の時に、修学旅行で「はじめて海を見る」こととなる体験をします。 当時さかんであった水上交通を利用し、一関の北上川寄りの地、狐禅寺(こぜんじ)の地から、石巻を目指して80キロを下ります。 賢治は、一関駅から約1キロの道を歩き、狐禅寺の船着場に到着、川蒸気船に乗り川を下りました。 写真の石畳が当時の様子を残す唯一の遺物だそうです。 河川交通が盛んであったこと(ツアーで配布された資料に詳しい)、また、北上川の河川氾濫のことなどいろいろと知ることができました。

日和山公園
ここは石巻にある日和山公園(ひよりやまこうえん)です。 賢治は弧禅寺を発ち、海辺の町石巻で船を下ります。 そして、日和山公園の高台に立ち、はじめて海を眺めます。 いったいどんな気持ちで眺めたのでしょうか。 公園には桜の木が多数植えられており、そんな季節にも訪れてみたいと思いました。 また、ここには賢治の詩碑もあります。

公園の賢治詩碑
写真はその日和山公園にある賢治詩碑です。 昭和63年12月に石巻市が設置したものです。 石には、「われらとひとしく丘にたち/青ぐろくしてぶちうてる/あやしきもののひろがりを/東ははてなくのぞみけり/そは巨いなる藍の水/海とはおのもさとれども/傳へてききしそのものと/あまりにたがふここちして/ただうつつなるうすれ日に/そのわだつみの潮騒の/うろこの國の波がしら/きほひ寄するをのぞみゐたりき」と刻まれています。 素材は稲井石とよばれる、花巻市桜(羅須地人協会跡地)にある賢治(雨ニモマケズ)詩碑と同一素材からできています。 公園内には、芭蕉や啄木の碑など、多数の文人の詩碑が建てられています。 盛岡の森義真さんの資料によれば、国内に数ある賢治詩碑(約80基)・啄木詩碑(約140基)の中で同じ場所にあるのは国内に3箇所のみとのこと。

瑞巌寺
バスは石巻から、松島にある瑞巌寺に移動します。 瑞巌寺(ずいがんじ)は、828年慈覚大師円仁により開かれた寺院です。 宗派は臨済宗で、その本堂には国宝や重要文化財が多数保存されています。 賢治は石巻に一泊したあと、船で松島に向かいます。 父宮澤政次郎宛の手紙によれば、その時の海は大荒れで、賢治を含め吐く者が続出したとというエピソードが残されています。 松島に着いた賢治たちは、写真の瑞巌寺を見学しています。 とうとう小雨が降り出してきてしまいました。

講演「宮沢賢治の海」
松島瑞巌寺を見学し、その後賢治が伯母のヤギを見舞って訪れたという浜の迎賓館「大東館」跡に向かいます。 少し前から降りはじめた雨が強くなりましたが、菖蒲田浜にあるその跡地を賢治学会の会員でもある後藤秀樹さんの解説で見学することができました。
 その後、今夜の泊まりとなるホテルに到着すると、奥羽大学教授の大沢正善先生のお話で「宮沢賢治の海」という講演が行われました。 写真は講演の様子です。 賢治の7回に及ぶ「海への旅」について、作品から、そして賢治自身とのかかわりをわかりやすくお話されていました。

旧斎藤報恩農業館
第2日目は、賢治が羅須地人協会の時代に訪れた小牛田の地からはじまります。 写真は斎藤報恩農業館の本館建物だったもので、現在は小牛田農業高校の農場管理室となっているものです。 校長先生のはからいで、立ち入り禁止だった建物の2階まで階段を整備して案内していただきました。 また、地元の文化財保護委員長でもある今野博さんのお話で、賢治が昭和6年4月〜9月にかけてやってきた時の様子が、用意された貴重な資料をもとにうかがい知ることができました。 賢治はこの地で活躍する同郷の知人を訪ね、石灰肥料の販路開拓や、農業活動の実情を調査をしていたようです。 写真の本館も築73年を経て、老朽化により、本年には解体されるとのことでした。 賢治ファンにとっては、また貴重なゆかりの場所が消えてゆくことになります。

中尊寺本堂内
バスは高速道路を経て、次の訪問地平泉中尊寺に向かいました。 写真は本堂で説明してくださる住職の佐々木邦世さんです。 賢治と仏教のかかわり、特に島地黙雷(1838〜1911)とのかかわりを中心に、賢治や他の文人などのお話をされました。 お話のあとは、吹雪にもかかわらず、お寺の中をていねいに案内して下さいました。 ここにも賢治の詩碑があります。

賢治詩碑
写真では文字が判読できませんが、賢治の文語詩「中尊寺〔一〕」の「下書き稿(三)」が刻まれた碑です。 詩碑は金堂への入り口のある門を入ってすぐ右手の場所にあります。 解説板には、次のように文語詩の全文と説明があります。 「中尊寺 宮沢賢治 七重の舎利の小塔に、蓋なすや緑の燐光/大盗は銀のかたびら、おろがむとまづ膝だてば/赭のまなこたゞつぶらにて、もろの肱映えかゞやけり/手触れ得ず十字燐光、大盗は礼して没ゆる 詩碑の文字は宮沢賢治実筆のものを約二十倍に拡大して写したもので、金色堂建立八百五十年を記念し、昭和三十四年に建てられたものです」
 また、碑の台座の石には貝の化石があり、いかにも賢治らしいこだわりのある作りとなっています。

中尊寺金堂
賢治はこの中尊寺を松島に行った翌日(1912年5月29日)に訪れています。 上記の「中尊寺」のほかに、歌稿としては「中尊寺/青葉に曇る夕暮の/そらふるはして青き鐘鳴る。」(明治四十四年一月より)があります。 この作品にも出てくる「青き鐘」が鐘楼として今も残されていました。 後半は吹雪に震えながらの見学でしたが、なかなか意味のある旅行となりました。

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