「冬の『小岩井農場』を歩く」(2)
   

「冬の『小岩井農場』を歩く」(2)


Kenji & Event

1998年1月2日 小岩井にて

der heilige Punkt

イラスト・マップ(ただいま準備中)


徒歩レポート続きです。 写真の番号は、上にあるマップに対応していますので、対応させながらご覧下さい。(ただいま準備中)

☆「小岩井農場」へ!(2)☆
   

旧本部【12】
ここからパート4になります。 左の写真の赤い屋根の建物が旧本部の建物です。 この建物を賢治は「本部の気取つた建物が桜やポプラのこつちに立ち/そのさびしい観測台のうへに/ロビンソン風力計の小さな椀や/ぐらぐらゆれる風信器を/わたくしはもう見出さない」(パート4)と描いています。 賢治が訪れたのは1922年のことですから、屋根の上に展望台をつけた形はとてもユニークな設計だったと思われます。 辺りをのんびり歩いたら、「冬にはこゝの凍つた池で/こどもらがひどくわらつた」(パート4)という池もすぐ近くに見つけることができました。

県道網張線【13】
賢治はここでトロ馬車のコースであった桜並木の道へと進まず、耕耘部への近道となっていた道を行くため右折します。 「耕耘部へはここから行くのがちかい/ふゆのあひだだつて雪がかたまり/馬橇も通つていつたほどだ」(パート4)と説明されているとおりです。 現在は、ちょうど賢治が右に曲がったこの近道のあたりに、県道網張線ができ、そこを歩くことができます。 これは小岩井駅方面から小岩井農場まきば園へと行く道の途中にもなり、すぐに見つけることができます。

der heilige Punkt【14】
県道沿いにはからまつが植林され、その左右にはうねるような曲線を描いた牧草地(当時は耕地)が続きます。 まるで北海道の原野のような気持ちの良い風景です。 賢治は1月に訪れた時のことを「あのときはきらきらする雪の移動のなかを/ひとはあぶなつかしいセレナーデを口笛に吹き/往つたりきたりなんべんしたかわからない」(パート4)、また「この冬だつて耕耘部まで用事で来て/こゝいらの匂いのいいふぶきのなかで/なにとはなしに聖いこころもちがして/凍えさうになりながらいつまでもいつまでも/いつたり来たりしてゐました」(パート9)と回想しています。 賢治はこの場所をder heilige Punkt(ドイツ語で「聖なる場所」)と呼びたいような気がすると言っています。

県道網張線付近【15】
県道沿いは左右同じようにゆるやかな曲線を描いた田園風景(もちろん雪景色)が続きます。 この田園風景を、賢治はまた「そのキルギス式の逞ましい耕地の線が」(パート4)ともとらえていて、異国の地名を使って表現しています。 ここから賢治はさらに北上し、四階倉庫付近で畑の方の道へと入ってゆきます。

県道網張線付近【16】
現在の丸谷地の四階倉庫付近を目指しました。 左右に広がる雄大な風景、遠くには岩手山の姿、雪景色ながらもあまりの好天に汗だくで歩き続けました。 道はちょっと登り坂になっています。 静かなひとときも、時折通過する車のエンジン音にじゃまされるとちょっと残念です。

四階倉庫付近【17】
写真の左側にある建物が、四階倉庫です。 もうかなり老朽化が進んでいるようですが、県の文化遺産的な建築物として認定されたそうですので、今後本存されてゆくことでしょう。 この付近は製材所のようです。 ここから「酪農部」「山林緑化部」「技術研究センター」へと入ることができます。

中丸バス停留所【18】
ここが僕の徒歩コースの引き返しの場所です。 四階倉庫を見たあと、歩いてきた道をたどり小岩井駅発13時06分の列車に間に合わせなければなりません。 (ちなみに賢治は小岩井駅14時49分発の列車で帰花しています) 本当はもっと先へと歩いて行きたいのですが、今回はここで終わりとなりました。 今度は5月に実現させてみたいものです!

☆旅の資料集たち☆

この冬の徒歩旅行のために、予め以下の参考文献などを利用し準備しました。 記して感謝したいと思います。(敬称略 順不同)

【新】校本宮澤賢治全集 第2巻 詩[I](筑摩書房)
「拡がりゆく賢治宇宙」(宮沢賢治イーハトーブ館)
「宮沢賢治名作の旅」(渡部芳紀著/至文堂)
「宮澤賢治語彙辞典」(原子朗著/東京書籍)
「宮沢賢治イーハトーヴ図誌」(松田司朗著/平凡社)
「宮沢賢治の彼方へ」(天沢退二郎著/ちくま学芸文庫)
「ワルトラワラ」より『原風景を歩く』(岡澤敏男)
「『宮沢賢治と小岩井農場』展のご案内」(榊昌子)
1/25,000地形図「小岩井農場」「姥屋敷」(建設省国土地理院)

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