「宮沢賢治の新刊から2」
   


「宮沢賢治の新刊から2」


Kenji & New Books

1998年6月11日


Office Kenji Kenji Book 賢治鳥類学


賢治鳥類学

赤田秀子 杉浦嘉雄 中谷俊雄 著

新曜社
ISBN4-7885-0642-4

賢治と鳥についての本、「賢治鳥類学」の紹介です。 およそ400ページにも及ぶ分厚い量、豊富な情報、「鳥類学」と呼ぶにふさわしい迫力です。 著者は宮沢賢治学会で活躍されている方々です。 賢治の作品には多くの鳥たちが登場しますが、それは鳴き声であったり、その色であったり実にさまざまです。 賢治と鳥といえば、「宮沢賢治鳥の世界」(国松俊英 文・薮内正幸 絵)が有名ですが、今回出版された「賢治鳥類学」はさらに網羅的に多数の引用文を掲載しています。 興味深く読んだところをちょっと紹介してみましょう。 おなじみの童話「銀河鉄道の夜」に、「鳥捕り」という登場人物がいますが、鷺を捕まえて食べるお話をする場面があります。 実は、このモチーフはすでに別の形で発想されていたことが、「鳥」を手掛かりに推理されています。 「風の又三郎」の先駆的な作品ともいえる「種山が原」の中に、達二がの女の子と小鳥(ヒワ)のお話をする場面があります。 達二が少女にヒワをあげようとしたら、実はそれは夢で、ひわは萌黄色の和菓子だったという部分です。 「銀河鉄道の夜」の構想メモに「カムパネルラ 少女とひわやいんこのことをかたる。」というまさにこの部分を示したと思えるメモがあります。 鳥がお菓子に変わるという話は、ここからきていると説明されていました。 ガンやサギがお菓子になるというのは相当な想像力を要しますが、ヒワが萌黄色の和菓子に変わるというのはごく自然な想像である、という内容には思わず納得してしまいました。 さて、こんな具合に、実にたくさんの作品引用を用いたこの本は、賢治と鳥を結びつける研究書であると同時に、興味深い読み物ともいえるでしょう。 構成は、第一部 身近な鳥 ヒバリ、ウグイス、ツバメ...、第二部 家禽類その他 アヒル、セキセイインコ、黒白鳥、レンジャク...、第三部 水辺の鳥 ミソサザイ、オナガ...、第四部 山野の鳥 イワツバメ、ワシ、タカ...と大きく四つに区分されます。 後半には、賢治作品に登場する鳥を網羅した「宮沢賢治バードウォッチング」がついています。


「賢治鳥類学」へのリンク集
Link : kenji tyouruigaku

WBSJ 日本野鳥の会(日本野鳥の会)
日本野鳥の会サンクチュアリセンター(日本野鳥の会)
Yachoo! オンライン野鳥図鑑(とがみさん)



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