11. 4.16 「原発は危険」指摘してきた。「安全」判決に改めて疑義
大地震が起きたら、原子力発電所は危険ではないか――。周辺に住む住民は各地の訴訟で、国や電力会社と長く、激しく争ってきた。ほとんどの判決は「安全性に問題はない」と判断したが、東日本大震災では深刻な事故が起き、収束の見通しも立たない。「これで裁判所もわかったはず」住民側は、改めて原発全体の安全性に強い疑問を投げかける。(ソース:朝日新聞/11. 4.16)
「恐れていたことが現実に起きてしまった。今回の地震で『想定外』という言葉をよく聞くが、胸が締め付けられる思いだ」。中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)の運転差し止め訴訟で原告団の代表を務める白鳥良香さん(78)は語る。
危険認めた判決 「電力会社の想定を超えた地震動によって事故が起こり、住民が被曝する具体的可能性がある」。2006年3月、金沢地裁の井戸謙一裁判長(当時、今年3月に退官)は、北陸電力の志賀原発2号機(石川県志賀町)の耐震性は不十分だとして、稼働中の原発の運転を差し止める全国唯一の判決を言い渡した。
後で活断層発展 74年以降に運転が始まった松江市の島根原発1・2号機では、98年になってから、約2.5キロ南に長さ8キロの活断層があることが判明した。「耐震設計上、考慮すべき活断層はない」と説明を受けてきた住民らが提訴。訴訟の過程で中国電力は活断層の長さを修正し、2008年の段階で「22キロ」とした。
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◆ 北海道電力泊原発<北海道>
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23. 4.10 放射能汚染を巡る日本人の誤解と政府の説明責任
<チェルノブイリの惨状を知る被曝治療の権威ロバート・ゲイル博士に聞く>
放射性物質が広範囲に拡散し、予断を許さない深刻な状況が続く福島第一原発。4月4日には、東京電力は国の基準値の約100倍に相当する濃度の「低レベル」汚染水約1万1500トンを海に放出する異例の措置に踏み切った。タービン建屋地下などに滞留するさらに高濃度の汚染水の回収先を確保するための応急措置であり、放出による人体への影響はないと東電・政府側は説明しているが、事態悪化を招いた両者への不信感は根強く、放射性物質の大気中への拡散や土壌汚染リスクがさかんに報じられるなかで、国民の不安は拭えない。はたして現状の放射線は本当に心配のないレベルなのか。陸海の多様な生物も汚染される中で、長期的に見た場合、放射線の累積量に本当に懸念はないのか。1986年のチェルノブイリ原発事故でソ連政府(当時)に依頼されて現地で救命活動に従事した放射線被曝治療の専門家、ロバート・ゲイル博士に話を聞いた。ちなみに、ゲイル博士は、福島原発事故後も日本を訪れ、事故対応について政府関係者らと意見交換をしている。同氏の結論を最初に伝えれば、現状の放射線量は心配のないレベルであり、そのことを説得力をもって国民に説明できる人間が政府内にいないことが問題だという。
(聞き手/ジャーナリスト、瀧口範子) (ソース:ダイヤモンドオンライン) ――今回の来日の目的は何か。 福島第一原発で復旧作業にあたっている作業員を診る医師らと会い、作業員を隔離治療する決断をどのような時に下すのかといった点について話し合った。また、東電関係者と被曝のレベルや作業員の保全についても懇談した。消防士や自衛隊、作業員、医師らが待機する事故対応拠点も訪れ、意見交換を行った。さらに、首相官邸では福山哲郎官房副長官と面談し、放射線のリスク、またそれを国民にどうわかりやすい方法で伝えるかについて話し合った。 ――福島第一原発における作業員の作業環境や、日本政府の対応をどう評価しているか。 医学的な観点から見て、作業員の安全確保は基本的に適切に行われていると考える。被曝線量限度もかなり保守的な目安に従っている。体内被曝、外部被曝を測定する各種計測器をつけて被曝量の管理を適切に行っている限り、そして想定外の爆発事故が起こらない限り、短期的にも長期的にも健康に影響が及ぶことはない。
――どのように噛み砕くのがいいのか。 たとえば、(日本政府は)現在、飲料水では放射性ヨウ素が1リットルあたり300ベクレルを超えると好ましくないというメッセージを国民に伝えている(乳児の規制値は100ベクレル)。しかし、この数値は何も目の前のコップに入った水を飲むと危険だということを示しているのではない。
――放射性物質を含む大量の汚染水が海に放出されたことで、魚介類への影響も懸念されているが。 それについても、同じことだ。
――福島第一原発の周辺地域および住民はこれからどうすればよいのか。 おそらく最もあり得るシナリオは、こうだ。原発の状況は改善しているが、完全に制御できるようになるまであと数ヵ月かかる。1号機から4号機は廃炉が決定的となったが、その方法が石棺(コンクリートで固める)であれば2〜3年はその作業に必要だ。解体撤去には、さらに数十年単位の歳月が必要だ。
――住民が戻ったとして、長期的に見て健康に影響が出る可能性はないのか。 住民が放射線量の高い雲の中をくぐるようならば話は別だが、それは今回現時点では起こっていない。では、一定期間が経って、保守的な被曝線量限度の目安を超えた場合はどうなのか。むろん、土壌の放射能汚染がどの程度かによって、外部被曝だけでなく体内被曝のリスクも継続的に検査する必要があるのはいうまでもないが、たとえば70歳の高齢者でこれまでタバコを吸い続けてきたような人ならば、現状のレベルの放射線によるガンのリスクは微々たるものに過ぎない。若年層には勧められないが、高齢者ならば、場所によっては住み続ける選択肢もあり得るだろう。
――土壌の放射能汚染についても、われわれは適切に理解していない可能性はあるか。 放射性セシウム137の半減期(放射線量が半分になるまでの期間)は30年だが、これはいわば実験室のガラス瓶の中での話だ。現実の自然界では雨や浸食によって、もっと速く減っていく。ただし、水道管の中に入り込むと危険なので、厳しくモニターする必要がある。 放射能汚染が懸念されているホウレン草やミルクも、先ほど言ったようにその汚染されたものだけを一生飲食し続けた場合に危険だという値だ。現在、アメリカの各機関が、魚介類やコメへの影響についても計算しているところだ。 ――チェルノブイリ事故直後の惨状を知る立場から、今回の状況をどう見ているか。 チェルノブイリは、福島第一原発の現状とは比べものにならないくらいの大惨事だった。放射線量も多かったが、事故をさらに悲惨なものにしたのは他の要因にもよる。たとえば、事故直後現場に駆けつけた消防士らは、放射性物質が飛散していることをまったく知らされていなかった。防御服もなく生身で放射線にさらされながら、消火活動を行っていたわけだ。 また、20年以上前のソ連では、住民に政府の情報を伝達するのは簡単なことではなかった。教育レベルも低く、政府の言うことに従おうという意識もあまりなかった。 (チェルノブイリ事故の影響で)6000件の甲状腺ガンが報告されているが、これは子どもたちが放射性物質に汚染されたミルクを飲み続けていたからだ。周辺は農村地域で、当時は食糧の流通システムも発達しておらず、住民たちは地元農村で採れたものを口にしていた。こうしたことに加えて、(放射性物質が甲状腺に害を与えるのを防ぐ)ヨウ素剤も十分に行き渡らなかった。つまり、原発事故直後に本来取られるべき措置のすべてが取られなかったのだ。
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