<行政資料集 4>

求人条件から年齢制限撤廃 中高年雇用促進へ努力規定   厚生省 次期国会に法改正案

 労働省は5日までに、雇用対策法を改正し、企業が採用条件に年齢制限を設けないよう努力義務規定を盛り込む方針を決めた。年齢による雇用差別をなくすことで、リストラなどによる再就職や転職を目指す中高年労働者を支援するのが狙いだ。厚生労働省は、同法改正案を次期通常国会に提出し、2001年10月からの施行を目指す。<解説後掲>

 労働省がまとめた原案によると、「事業主は労働者の募集及び採用に際し、求職者に対し、年齢にかかわりなく均等な機会を与えるよう努めるものとする」との規定を設ける。ただ、「合理的な理由」が認められた場合は例外とする。合理的な理由の定義は法律とは別に指針で定めることにしており、業務の習熟に最低限必要な年数を定年年齢から引いた年齢を上限とする場合などを検討している。この規定は中途採用を想定し、新卒の定期採用は対象外とする。

 これに関連し、坂口労相は、読売新聞の取材に対し、「年齢制限は極力排除するということで、企業に努力義務を課すことが一番だと思う」と述べた。

 労働省所管の特殊法人「日本労働研究機構」の調査(99年11月)によると、9割の企業が採用条件に上限年齢(平均41.1歳)を設けている。このため、リストラなどで離職した中高年が再就職しようとしても、能力と関係なく、門前払いされることが多い。実際、2000年11月の有効求人倍率は全体で0・65倍だったが、45〜54歳は0・44倍、55歳以上は0・13倍と低い水準だった。労働省はこうした実態の背景に、年齢制限による雇用差別があると判断した。罰則は設けないものの、年齢制限廃止の努力義務規定を法律に明記することで「個別企業へ指導、要請をしやすくなる。一定の効果は確実にある」と見ている。

<解説> 日本型雇用に影響も 求人採用で年齢制限撤廃 総合的な対策必要

 労働省が打ち出した求人採用での年齢制限廃止を企業の努力義務規定とする方針は、中高年の失業者の救済につながる一方で、定年制、年功貸金制が一般的な日本の雇用慣行にも影響しそうだ。これまで、雇用確保のためには、定年を延長することに重点が置かれてきた。しかし、採用の年齢制限が撤廃されれば、「意欲、能力があれば年齢にかかわらず採用できることになり定年制が崩れることになりかねない」(労働省幹部)との懸念が生じる。突き詰めれば、能力のある中高年を採用する代わりに、定年前の職員のクビを切る現象が出てくることも予想される。

 また、中高年ほど人件費がかさむが、年功と別基準の賃金で雇用すれば労働組合の反発も予想される。年功による賃金の在り方の問題にも発展する可能性が出てくる。労働省は、基本的には「定年制を緩やかにし、年齢とは無関係に就職の機会を得られるよう雇用慣行を変えることが必要」(幹部)と考えている。年齢制限の廃止はその一歩でもあるが、急激な変化は問題が多いため、努力規定にとどめたという。

 ただ、年齢制限の問題だけでは、中高年の雇用環境の改善につながらない。例えば、中高年の再就職が難しいのは、企業側の要望と働き手の能力がかみ合わない″ミスマッチ″も要因だ。IT(情報技術)や福祉など求人が増えている新しい分野に他産業から再就職しようとすれば、それなりの知識や技術が要る。高齢者や中高年の雇用環境の改善は、年齢制限の廃止だけでなく、職業訓練、制度の充実などと合わせ、総合的に行う必要がありそうだ。    (01.01.04 読売新聞 政治部 浜砂 雅一)


<行政資料集 5-0>

忘れるな大震災  その日に備えて

自治体は防災訓練を見直す時だ                 (00.9.1 正論/産経新聞)

東京都範にイベント型から脱却を           帝京大学教授  志方 俊之

現実に近い状況で実施

 毎年9月1日の「防災の日」に、全国各地でそれぞれに防災訓練が行われる。今年もこの機会をとらえて政府・地方自治体・企業などが一連の訓練を行う。自然災害は地方行政の区割りに従って起こるとは限らないし、とくに大規模地震災害は近隣の自治体が相互に協力し合って対処するのが当然だから、関東地域では「7都県市」が合同で行うことを通例としている。今年、東京都はこの訓練に参加する一方、9月3日に都独自の総合防災訓練「ビッグ・レスキュー東京2000、首都を救え」を行う。東京都が独自に訓練を行う理由は大きく二つある。

 第一の理由は、少しでも現実に近い状況で訓練を実施したいとの考えからだ。これまでの訓練は曜日を限らず行われたため、ウィークデーの日常業務や都心部の車の流れをあまり妨害しないよう、臨海部の埠頭や河川敷など広いスペースを使える場所を選んで行うことが多かった。そこに仮設の小屋や瓦礫の山をしつらえて、これを高層ビルや倒壊ビルと見立てて救助訓練を行ってきたのだ。したがって、どうしてもイベント的な訓練、あるいはショー的な訓練になり易かった。また、ウィークデーだと訓練を視察したり見学したりするのは、限られた防災関係者と一部の都民となり、ボランティアや都民自身の参加が少なくなってしまう。このような観点から、都は敢えて日曜日を選んで高層ビルの立ち並ぶ都心地域での訓練に挑戦することにした。訓練場所を実際の高層住宅街等(銀座・東葛西・西白髭)や、都庁前と都内の公園(駒沢・木場・舎人)に選んだ。

国家機能との連携は初

 もちろん広いスペースのある埠頭や河川敷や都西部(立川)も重要で、これらの地域は、むしろ都の外から救援に駆けつける大規模救援部隊を受け入れる機能を実地に検証する。

 晴海埠頭には、主に海上自衛隊や海上保安庁の艦船を集結させて医療基地として活用する。江戸川の篠崎地区河川敷は、遠く北海道や東北地方等から救援に騒けつける陸上自衛隊の大規模集結地としての機能を検証する。

 第二の理由は、都は一つの自治体ではあるが、首都として国家行政機能の中枢部を擁しているからだ。石原慎太郎都知事は国家機能との連携を重視している。都以外の地方都市が大規模災害に見まわれた場合は、東京という国家機能が活きているから、国による救済措置は遅滞なく行われる。しかし、東京都を直下型地震が襲った場合は、国家中枢そのものが甚大な被害を受けるから、国による救済措置はかなり遅れるのではないかとの心配がある。密集し高度に発達した現代社会がどんな状況になるのかは分からない。全く未体験の領域だから、都民が予想もしなかった状態に陥るかもしれない。したがって、政府が全国的な防災訓練を指揮統制している「防災の日」との重複を避け、国家機能が一時的に喪失した状況を想定した訓練を政府と都が一体となって別の日に試みるのである。

 今回は、総理官邸と内閣安全保障・危機管理室や各省庁、とくに防衛庁・運輸省・建設省等が、この趣旨を深く理解して、訓練の計画段階から積極的に関与した。これは防災訓練史上、画期的なことである。例えば、多数のヘリコプターが低空を安全に飛び交うようにするため、低空城の空域統制、離着陸管制や、警察・消防・自衛隊・海上保安庁・ボランティアグループの間の連携要領などで、各省庁と自治体を横断して行われた調整要領は、それ一つだけをとっても特筆すべきものがある。

自衛隊のビッグな参加

 今回は「ビッグ・レスキュー」という訓練名が示す通り、史上最大規模の「ビッグ」な防災訓練である。従来の規模に加え、今回は自己完結性をもった自衛隊の力を組み入れたものとなった。阪神・淡路大震災の際に出動したピーク時の自衛隊員は約20,000名、航空機は167機、艦艇は12隻だった。今回の訓練に参加する自衛隊員は約7,100名、航空機は82機、艦艇は5隻であるから、大震災時に実際に出動した自衛隊の規模の3分の1以上のものとなる。従来のように、500名程度の参加人員で20,000人規模の部隊の動きをシミュレートすることは「スケール・エフェクト」があって難しい。小は大を兼ねないからだ。今回のように、3分の1以上の規模で部隊の動きを検証して初めて、実際に近い状態で3自衛隊の統合した指揮・統制・通信・情報(C3I)、航空運用、補給輸送等のための問題点を浮かび上がらせることかできる。

 もう一つの特徴は、訓煉の主眼を「レスキュー」に絞ったことだ。救援活動にも給水や給食など色々とあるが、とにかく「初動における人命救助」が最も大切だ。都民の生命と財産、とりわけ生命を守ることは都知事の最大の責任のlつである。それだけではない。東京都を大地震が襲ったとき、都知事のリーダーシップが発揮されず、行政の手遅れが原因となって、何万人もの都民が死亡することになれば、その東京を首都とするわが国は、とても文明国家と呼べないからだ。(しかた としゆき)

 

<行政資料集 5-1-1>

01.01.12 第1回

被害予測を極秘調査

南海地震

 2040年プラスマイナス10年。「南海地震」が発生するとされる期日だ。その日に備え、兵庫県が津波被害予測の現地調査をひそかに行っていたことが11日、わかった。専門家らは「いつ起こってもおかしくない」と警告を発し始めている。国をあげての対策も静かに進行中だ。クリアすべき課題の多さに比べると、残された時間は少ない。平成7年の阪神大震災の教訓を、今こそ生かさねばならない。(大震災取材班)

 阪神大震災の震源地(明石海峡)に近い淡路島。最南端に位置する南淡町は、「鳴門の渦潮」や水仙郷などで知られる。そんな風光明美な町を昨年12月9日、県の防災関係職員や大学の研究者ら約20人が訪れた。小高い丘から波静かな湾を見下ろし、無数に浮かぶ養殖用のいかだや漁船を指さして、研究者の一人が言った。「ああいう浮遊物が津波に運ばれ、陸地を直撃して被害を大きくするんだ」

 兵庫県は震災から3年10ヵ月にあたる10年11月、防災関連の行政機関、学識経験者らからなる「津波災害研究会」(会長、河田惠昭・京都大防災研究所教授)を発足させた。県内の過去の津波被害の調査やコンピューター・シミュレーションによる南海地震の被害想定を行い、津波対策の強化を図るためだ。

 河田教授らによる安政南海地震(1854年)の断層モデルをベースに、震源地を、兵庫県に最大の被害を及ぼす位置(和歌山県潮岬沖の海底)に移動させ、マグニチュード(M)8.4と想定した。この条件でシミュレーションすると、津波が南淡町に到達するまでの時間は約45分。最高5.5〜6メートルの波が来るとの結果になった。

 南淡町の現地調査はこうした結果を、河川や防伎堤など現実の地形に即してより精度の高いものとするのがねらいだった。

*   *

 今月7日、淡路島・北淡町で開催された「活断層シンポジウム2001」で、京都大理学部の尾池和夫教授(地震学)が「南海地震は必ず来る」と断言した。尾池教捜は、1946年(昭和21年)の前回の南海地震など、残されている過去の記録をあげて説明した。

 東海、南海ふたつの地震が重なった1605年の慶長地震(M7.9、死者、数千人)と1707年の宝永地震(M8.4、同20,000人)▽1854年の安政東海地震(M8.4、同約3,000人)と安政南海地震(M8.4、同数千人)▽1944年の東南海地震(M7.9、死者・不明名1,223人)と1946年の南海地震(M8.0、死者1,330人)。

 巨大地震の記録がこれほど多く残り、今後の発生の予測が容易なのは世界中で南海地震だけだという。

 「西日本各地では、南海地震が発生する前の50年間、発生後の10年問に、M6から7の地震が集中的に発生するパターンがある。この二つの期間に発生する地震の数はその他の期間の4倍にのぼる」

 前回からほぼ50年後に起きた阪神大震災が「巨大地震の空白期」を打ち破り、南海地震が発生する直前の「西日本の活動期」の始まりを告げた。そして昨年10月の鳥取西部地震がそれを裏付けたという。

 南海地震の発生時期については、もっとさし迫った予測がある。

 プレート境界型の南海地震の震源地は、日本列島の伊豆沖から四国沖にかけてのびる海溝、南海トラフとされる。その南海トラフを平成8年から調査している政府委員会の委員長を務める安藤雅孝・名古屋大教授は説明する。

 「前回の南海地震は、それ以前に比べれば規模が小さい。エネルギーが十分に放出されていないため、発生時期はもっと早まる可能性がある」安藤教授の予測は2016年ごろだ。

*   *

 ところが、これらすべての予測をくつがえすかもしれない観測結果が、東海地震を常時観測している静岡県で注目されつつある。

 現在、日本で唯一、地震発生に関する予報を出す地震防災対策強化地域判定会(会長、溝上恵・東大名誉教授)は、東海地方の地震観測の中で「地震活動の低下」「観測地点となっている静岡県・御前崎の地殻変動の鈍化」を確認した。これらの現象は、地震活動が収まりつつあることを示しているのではない。東海地震が発生する直前の「静穏化現象」の可能性があるのだという。観測結果について、静岡県観測調査室は「『数年後の発生』をにらんだ対策を視野に入れ始めている」と明かす。

 尾池教授の凋査では、慶長地震、宝永地震、安政南海地震、前回の南海地震の過去4回の例は東海地震発注後、30時間から2年の間に南海地震が起きている。東海地震が南海地震を誘発するとみれば、あと10年ほどの間に南海地震がやってくることになる。

 兵庫県の予測では、少なくとも、県内の死者は127人、負傷者は966人にのぼる。太平洋に面した高知県では「海底4,000メートルで地震が発生すると、津波の勢いは時速720キロにも達する。津波は地震発生から最短2分で県沿岸に達する」と予測する。沿岸部から安全な高台まで避難する余裕はない。三重県では、地震発生による死者を272人(前回11人)、負傷者を13,000人(同270人)と弾き出した。巨大地震の対策は急務なのだ。

 

<行政資料集 5-1-2>

01.01.13 第2回

生のデータ開示必要

自主防災

 「とにかく、津波からいかに逃げるかに焦点を絞った」高知県の防災担当者は言う。やがて来る巨大地震、南海地震を想定した防災計画のことだ。太平洋に面している高知県は、昭和21年の前回の南海地震で地震動と津波の直撃を受け、死者、行方不明者計670人を出した。それだけに、考え方が現実的だ。

 「四国は、四国山地で瀬戸内海側と太平洋側に分断され、高知へのアクセスは悪い。そのため、緊急事態でも他府県の救援がすぐには期待できない。自分で自分の身を守るための防災計画なのです」

 高知県では平成11年に県と市町村が1年間にわたる検討をしたのち「津波浸水予想図」を作製した。これを沿岸25市町村に配付し「住民と話し合って町村ごとに津波の警報伝達や避難誘導のマニュアルをつくって、いつでも使えるようにしてほしい」と異例の要請をした。

 「南海地震」に相当する過去の巨大地震の例をみれば、宝永地震(1707年)が、マグニチュード(M)8.4、安政南海地震(1854年)もM8.4、前回の南海地震(1946年)はM8だった。M8.4が本来の姿とみるべきであり、その規模で算出した一部の予測では津波の高さは最大20メートルにも及ぶ。津波は、わずか30センチでも子供が1キロ流されるほどのエネルギーを持つとされ20メートルの津波の破壊力は計り知れない。

 だが、防災担当者は言う。「現存ある水門は時間稼ぎにしかならない。だからといって、総延長700キロにも及ぶ沿岸25市町村に堤防を張り巡らすのは財政上、現実的ではない。各市町村や住民がふだんから防災意識を高め、逃げる経路を考えて訓練するなど、自衛するはかないのです」

*   *

 政府が実施する海溝「南海トラフ」の総合研究で委員長を務める名古屋大の安藤雅孝教授は、高知県が主張する「自主防災」の考え方を評価する。「確かに自主防災が最大の武器となる。私の考えでは、阪神大震災直後の犠牲者のうち8割は、震災を想定した自主防災が徹底していれば助かったと思う」そのうえで、自主防災を啓発するために、「巨大地震発生が近づいていることを示す生のデータを、常時開示していくことが必要」と指摘する。

 南海地震は、海底4000メートルにある南海トラフの歪みで発生する。深海底の動きを監視するには、深海底でも耐え得る最新の観測技術が必要だ。これまで深海底を観測する技術が世界的になかったために、現実性が乏しかった。しかし政府が平成8年から5年間で約9億円を投じた南海トラフに関する調査では、米国とともに海底に機器を設置して前例のない観測を始めた。さらに、深海底の資源や地質、微生物の研究を進めるために行われている国際共同プロジェクト「深海底ドリリング計画」で、政府が5年後の使用をめどに開発を進めている深海掘削船は、海底下数千メートルまで抗を打ちこめる。この抗が観測器の役目を務め、震源に近いところで、より正確に南海トラフの動きをつかめるのだ。一方で陸にも観測器を設置すれば、陸海双方から南海トラフをはさみうちにでき、確度の高い情報を市民に提供できる。これらの刻々と変化する情報をもとに、コンピューターで被害想定シミュレーションを行っていけば、リアルで効果的な防災計画が策定できる。安藤教授は「正しい知識があってこそ、自主防災のための啓発も可能」と話す。

*   *

 最新の技術による観測情報と自主防災。これだけあれば来る大地震にも対応できるように思える。しかし、情報を提供する行政にとってみれば、これら二つの要素をどう結び付け、Xデーまで緊張を保ってどう市民にアピールし続けるのかが一番の難題だという。

 高知県の防災担当者は「『地震がきますよ』といっても多くの巾民は、与えられた情報で事態を理解し、自分の身をどう守ろうかと考える前に、まず『行政が堤防をつくれ』と逆に要求されてしまう」と、悩みを打ち明ける。

 昨年末、「今後20年以内にM8クラスの海溝型地震が発生する」と、政府から公式に発表された宮城県の防災担当者は「政府が見解を示したとしても新しいデータが提供されないかぎり、これまでの防災計画を変えたり、市民に新しい緊張を求めるのは無理」と、数10〜100年に1回しか来ない地震への対応の難しさを説明する。

 これに対し、「明日にも起きる」といわれた東海地震のために、過去20年間、地震防災を進めてきた静岡県の防災担当者は「自分のところの地震は100年に1回かもしれないが、日本各地ではいくらでも起きている。それらのすべてが市民啓発の材料になりうる」と話す。しかし静岡県の自治体でも、市民啓発のノウハウをつかむのに10年かかったという。ノウハウを模索し始めた他の自治体に、南海地震を無事乗り越えることができるだろうか。京大防災研究所の河田惠昭教授は「市民と市民、市民と自治体、自治体と自治体、そして国と自治体のネットワークを密にすることで知識と経験を共有し、スピードアップをはからねばならない」と訴えた。     (大震災取材班)

 

<行政資料5-1−3>

01.01.14 第3回

自衛隊との連携重視

仮想防災訓練

 「石狩支庁管内で全線不通」「千歳空港、被害状況の確認があるまで全面閉鎖」。無線で次々と報告があがってくる。

 北海道札幌市をマグニチュード(M)6.5の直下型地震が襲ったという想定で、札幌駐屯地(札幌市中央区)で昨年11月、パソコンを使った防災訓練「災害対処指揮所(CPX)訓練」が実施された。現場からの情報に基づいて判断し、部隊に命令を出すのが指揮所で、訓練は関係機関との連携や指揮能力の向上を目的に行われた。

 駐屯地の体育館にはネットワークでつないだパソコン約50台が設置され、北部方面隊隊員約440人のほか、北海道庁や札幌市、道警などの関係機関からも20数人が参加した。コンピューターシミュレーションによる防災訓練は日本で初めての試みだ。

 パソコンの中に札幌の市街地図、航空写真が入力され、仮想の街がつくってある。仮想部隊に出動命令を出し、被害の大きい地点で救援活動を行わせる。 「震度」「震源の深さ」など条件を変えながら、各防災機関が割り出した建築物、道路などの被害想定データがシステムに組み込まれており、新たな出動命令を打ち込むと、現場までの最新の被害状況が次々アウトプットされてくる。これまでの防災訓練と大きく違うのは、訓練のシナリオがなく、事前の被害状況設定もないことだ。変化していく状況のなかで即座に判断し、次に何をするかを決定して仮想部隊に命令しなければならない。

*   *

 このシミュレーションプログラムは、北部方面隊が師団同士の演習用として独自に開発したコンピューターシステム「師団対抗指揮所演習(ICE)」がもとになっている。平成7年の阪神大震災以降、災害派遣が増えてきたため、システムを作りかえたという。自治体に訓練への参加を呼びかけた理由について、池田整治・北部方面総監部広報室長(45)は、「災害派遣を通して、自衛隊内で関係機関と情報を共有しながら一体化した活動をする重要性が再認識されたため」と釈明する。

 また、システムの開発を手がけた北部方面総監部防衛部防衛課の納富一成・ソフト開発長(53)は「防災計画は理想形。非常食は何万食分あるから大丈夫と思っていても、備蓄倉庫がつぶれたらどうするのか。そんな問題点が指揮所訓練で見つかる」と話す。実際、訓練後、北部方面隊の「災害派遣計画」の一部がさっそく修正された。

 今年も訓練を予定しており、今度は救出人数を時系列でグラフ化し、救助や救出活動がどの程度効果的に行われたか判定する。

 訓練を見学した安全保障・危管理担当の関克巳・内閣参事官(47)は「大災害が発生した際の意思決定が大きな課題になっており指揮能力の真価が問われている。それには従来の防災訓撫ではだめ」とし、北部方面隊の訓練を評価した。大震災を経験した兵庫県の防災担当者は「震災当時、人も情報も集まらなかった。実践的なシミュレーションがないと防災計画はうまく機能しないと痛感している」と明かし、北部方面隊にならった訓練を今後、取り入れたいという。

*   *

 「もっとも訓練しておかなければならないのは、災害対策本部(自治体)と自衛隊との連携だ」大震災のとき、中部方面総監として自衛隊の災害救援活動の総指揮にあたった松島悠佐氏(61)は断言する。「最大の反省点は自治体と自衛隊との協同訓練が行われていなかったこと」従来、神戸市の防災訓練に自衛隊が呼ばれることはなく、その結果、大震災で自衛隊との連携のまずさが露呈したという。自衛隊が、救助活動の集結地として想定していた神戸市内の公園は被災者の避難場所となっていたため、輸送用の大型ヘリコプターを着陸させる場所もなく、利用できたのは灘区の王子陸上競技場だけだった。当時、中部方面隊第三師団に在籍し救援活動にあたった大塚敏郎・陸上幕僚監部総指副監察官(55)は「日ごろから、自治体と自衛隊との間で人間関係を築いておくことが大切だということを実感した」という。防災訓練の際に、自治体は実際に災害対策本部を設置して「どこに、どうやって、どんな指示を出すのか」「災害出勤要請をする場合は、だれがどこに連絡するのか」などを、自衛隊と連携して時系列に従って一つひとつ、やっておくことが大切、という。

 中部方面総監部の災害派遣担当者は「訓練を通して警察、消防、自衛隊がそれぞれ自分と他の組織がなにができて、なにができないのか、互いの能力を知っておくべき。能力を相互補完し合いながら、効率的にそれぞれの特性を発揮できるような態勢にしておかねばならない」と話す。訓練を自衛隊と協同で実施していれば、自衛隊が想定している集結地やヘリポートが、自治体の避難場所に指定されているといった問題点は、すぐに見つかっていたはずだという。松島元総監は無念そうに語った。

 「県や市と平素から緊密な連携をとって協同訓練を行っていたら、もっと効果的な救出活動ができ、それで助かった人もいたかもしれない」災害発生から72時間が、人命を救えるかどうかの境界線なのだ。(大震災取材班)

 

<行政資料5-1‐4>

01.01.16 第4回

まず倒壊から身を守る

危機意識

 長年の東海地震の警戒で住民啓発が十分、行き届いているはずの静岡県でも、防災担当者が頭を抱えることがある。「手間と金のかかる対策が進んでいないのです」非常食の準備はほぼ達成されているが、家具の固定の達成率は50%、耐震診断の受診率は20%だという。「非常食は、生き残ってはじめて必要になる。建物や家具の倒壊から身を守るのが先決なのに、それがなかなか徹底できない」

 東海地震に関しては、平成11年夏から、20年来の活動観測で初めての「変調」を示すデータが集まるようになった。巨大地震の発生が現実味を増しっつあるだけに、防災担当者は焦りの色が隠せない。「阪神大震災では、多くの人が倒壊した建物の下敷きになって亡くなった。あのいたましい被害を目の当たりにしたはずなのに…。これから、住宅耐震化の大々的なキャンペーンに乗り出したい」

 阪神大震災の被害を調査した東濃地震科学研究所(岐阜県)と金沢医科大は、建物の倒壊で閉じ込められた人は、神戸市の人口の15%にあたる約20万人と推計した。

 さらに、閉じ込められた人を負傷度別に分類し、存命期間の目安を示している。地震発生直後、胸部圧迫などによる窒息で数分間▽頭部や胸部損傷で2〜3時間▽腹部損傷で3〜12時間▽四肢損傷で24時間以上▽健常者は3日間。つまり、家具の配置、固定や建物の耐震補強によって、倒壊時の破壊程度をできるだけ小さくできれば、体の損傷も軽くなり存命期間ものびる。

*   *

 神奈川県とともに救命機器の開発を進めている横浜国立大の佐土原聡教授も、地震から身を守る方法として、第一に「家庭での家具固定や住宅の耐震補強」をあげ、その上で閉じ込めが発生した場合には「救援機器の適切な配備が威力を発揮する」と指摘する。佐土原教授は神奈川県と共同で、倒壊現場で被災者が閉じ込められている場所を探る探査機器、救助のためにガレキを撤去するジャッキ、それらの使用や配備のノウハウ―について開発・研究を行っている。「大震災のとき、救援する人手も機器も絶対的に不足していた。それが人的被害を大きくする要因のひとつだった」負傷の度合いと存命期間の相関関係を示す東濃地震科学研究所などのモデルでは、健常者の3日間がデッドライン。それまでに人手と救援機器をどれだけ投入できるかがかぎだ。

 佐土原教授は「救命機器は、人力で動かすものからハイテクを利用するものまでさまざまな形態が可能」と技術面のレベルの高さに自信をのぞかせながら、注文をつけた。「機器を生かすためには、閉じ込められた人を発見したあと、ガレキを除去し救助するまでのシミュレーションができていることが必要です。さらに、配備場所、配備数、救援者の能力に応じた機器の選定たどソフト面の充実が不可欠」倒懐現場で真っ先に行われる「発見作業」では、赤外線センサーやガス探知による探査機が威力を発揮するはずだが、阪神大震災を経験した神戸市消防局などを調査して意外なことが浮かび上がったという。「実は、閉じ込められた人を最も効率的に探知できたのは、ハイテク機器ではなく血縁関係者や近所の人たちだったのです」血縁関係者や近所の人たちは、倒壊した家屋に住んでいた家族の人員構成や屋内の間取りを、ある程度把握しているためだ。倒壊現場で閉じ込められたとき、自分は救い出してもらえるか。それは、自らの防災意義とふだんからの周囲とのコミユニケーションにかかっているともいえる。

*   *

 「危機感を持ちつづけている人と、『もう来ないだろう』と思っている人に二分してしまった」。県民の防災意識について、静岡県の防災担当者は話す。「20年前、『東海地震が明日にも発生する』といわれて緊張が一気に高まったあと、10年にわたり繰り返し群発地震が発生したため、緊張を維持できた。比較的平穏な近年は、県民意識が一種のエアポケット状態にある」という。一方、南海地震への警戒を強める高知県は「現在の平穏な生活が当たり前と思っている大人を啓発するのは困難」として、子供たちを対象にしたユニークな対策に取り組んでいる。地震発生を2030年と仮定すると、そのころに、現在の小学生は家庭や地域の大黒柱になっている。彼らの将来展望のなかに南海地震発生を組み入れてもらい、危機意識を植えつけてもらう。平成11年には津波をシミュレーションしたCP―ROMを各学校に配布したほか、高知大とともに体系的な防災教育プログラムを開発中という。阪神大震災では兵庫県南部を中心に限定された範囲で被害が出た。南海地震では揺れと津波によって広い範囲に被害が出る。このため、阪神大震災のときのように周辺の自治体からこぞって救援に来てもらうことは難しい。これまで、東海、南海地震で多大な被害を受けた自治体の防災担当者は口をそろえる。「住民一人ひとりが、強く防災意識を持ち続けないと21世紀を生きのびることは難しい」    (大震災取材班)

 

<行政資料5-1‐5>

01.01.17 第5回

府県の壁越えプロ育成

広域支援

 1854年、数千人の死者を出した「安政南海地震」の津波は米国西海岸・サンフランシスコにまで到達した。このときのマグニチュード(M)は8.4。次の南海地震で想定されている地震と同じだ。「沿岸に衝突してもなかなか衰えないのが、津波の特徴」京都大防災研究所の河田惠昭教授は言う。大阪湾のように海峡部が狭い場合は、進入した津波が沿岸各地で反射し、それが湾奥の大阪市付近で合わさって大きくなる。瀬戸内海も多数の島によって多重反射が起きるうえ、淡路側から入ってきた津波と豊後水道側から入ってきた津波が合わさって大きくなることも考えられる。

 「かつて塩田が広がっていた瀬戸内海沿岸も、今では海面に垂直なコンクリート護岸になっている場合が多く、津波は何度も反射を繰り返すだろう」津波は太平洋沿岸で高さが最大20メートルとも予測されるが、河田教授の計算では、瀬戸内海でも局所的に3メートルを超える可能性があるという。「明治時代以降、瀬戸内海で津波被害が発生しておらず、沿岸の自治体のなかには防災計画で津波被害を想定していないところもある」と危ぐする。

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 阪神大震災後の災害対策の進ちょく状況を調べるため、兵庫県は昨秋、46都道府県と12政令指定都市、26中核市を対象にアンケートを行った。どの自治体も「災害対策は必要」と認識しているものの、実際は、職員に対する防災研修を「まったく行っていない」か「ほとんど行っていない」ところが計62団体にのぼり、全体の7割強を占めた。その理由として「時間が取れない」ことや「内部に防災研修を企画できる専門家がいない」ことをあげ、外部機関が行う防災研修について、81団体は「必要」との認識だった。また広域支援の点では、74団体が大地震のさいには「専門的ノウハウをもつ支援チームを活用したい」と答えている。なぜ、行政に防災専門家が育たないのか。前回(昭和21年)の南海地震で大きな被害を受けた高知県の防災担当者は、「地震や津波を理解するには専門相識が不可欠だ。行政マンと地球科学などの専門家が互いに歩み寄って知識を共有することが必要」と話す。今月6日、神戸市中央区で建設工事安全祈願祭が行われた「阪神・淡路大震災メモリアルセンター(仮称)」(平成14年春、完成予定)は、こうした声にこたえる施設として期待を集めている。センターの役割のひとつの柱は、阪神大震災の資料収集や震災の衝撃を映像や模型で再現する展示など震災の経験や教訓を継承すること。そして、もうひとつの柱が震災対策についての総合的、実戦的な能力を備えた人材の看成と、そうした人材を有事の際に活動させる広域支援の機能だ。震災以来、「広域防災機構を作るべきだ」と国に訴え続けてきた貝原俊民・兵庫県知事は、センターの建設にあたって「消防、警察、自衛隊はそれぞれ、消火や治安、国防についてのプロだが、防災全般についてのプロはいない」としたうえで、「米国のFEMA(米連邦緊急事態管理局)のような防災のプロ集団が日本にも必要。メモリアルセンターは、日本の災害対策の中核として発展させていく」と話した。具体的には、センターは府県の壁を越えて機能しやすいよう県の一機関とせず、財団法人の運営とする。河田教授をセンター長として迎え、医療、ボランティアコーディネート、ライフライン関係など常勤、非常勤あわせて10ほどの分野の研究者を招く。これらの研究者は、災害に見舞われた自治体の首長に専門的知識をアドバイスする。河田教授は「広域支援をスムーズに行うためには、自治体の書類の様式を統一するといった『ジャパン・スタンダード』なるものが必要になる。メモリアルセンターは、それを作り、普及していく役割を担うだろう」と話す。

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 国は今年中に、次の南海地震の規模や発生時期などについての初の長期的見通しを発表する予定だ。それなのに、現在、全国で東海地域にだけ適用されている「地震防災対策強化地域」を南海地震の被災予想地域にも適用する気はない。「数日中に巨大地震が起こってもおかしくない『前兆現象』が、東海地域にはあったが、まだ南海地震には見られない」というのが、その理由だが、国の南海トラフの調査で委員長を務める安藤雅孝・名古屋大教授は、「強化地域」の制度そのものに疑問を投げかける。「『前兆現象』のあった東海地域で22年間も巨大地震が起こらず、他の地域で次々と起こっている。『前兆現象』にこだわらず、将来、必ず起こる南海地震の被災予想地域にも『強化地域』を通用すべきではないか」コンピューター・シミュレーションによる南海地震の被害想定調査をもとに、兵庫県は今年度中に防災プランを策定する。防災担当者は「津波の怖さをどうやって伝えていくかが、これからのわれわれの重大な仕事になる」と話した。 =おわり

◇この連載は、社会部・北村理、水沼啓子、神戸総局・大橋一仁が担当しました。


紙面批評       時宜を得た震災企画         (01.01.21 産経新聞)

東京電力会長 荒木 浩

危機管理に役立てたい

 6年前の1月17日、阪神地方をあの忌まわしい地震が襲った。震災によって起きた火災も加わり、6,000人を超える方々が尊い命を落とされた。テレビ画面を見るだけの我々は全くの無力で、なす術を知らなかった。今改めて考えると、あの災害は相当程度、人災だったと思わざるを得ない。

 この12日から17日まで5回にわたって連載された「忘れるな大震災『その日』に備えて」は極めて時宜を得た中身の濃い企画だった。他紙を見ても社説で取り上げたのが数紙、17日当日に今に及ぶ被害について報道したのが2、3紙だけであった。それだけに、今回の企画は光っていた。

 あの震災による大きな被害は、私たちの社会に潜み、普段は気付かない多くの課題を暴き出した。災害に直面して、設備、制度、組織、そしてそれらを運用する人間の弱点、硬直性や官僚性、備えの無さなどが暴露された。一言で言えば、あらゆる面で危機管理ができていなかったのだ。私は命を落とされた6,432名の方々の死を無駄にしないためにも、地震災害への備えに万全を期さなくてはならないと常々考えているだけに、今回の企向とその内容には、賛辞を惜しまない。

 企画は、被害予測調査の実態、生データ開示の必要性、自衛隊などとの連携、広域支援など優先順化の高いものから、生の情報を足で稼いで集め、つまびらかに報道している。

 防災システム改善につながる正確な情報を伝えることは幅広く役立つ。例えば、電力会社にとってもそうだ。主要な社会的ライフラインのひとつである電力供給を頂かる者は、ひとたび事が起きれば、速やかに災害現場へ出向く。そして、時に地域を越えて、国、地元自治体、企業、地元住民とネットワークを組み、電力復旧を始めとする、いろいろな支援を行う。それだけに、私どもは万一の事態に備えた危機管理を通常の業務の中に組み込んでいる。

 ただ、いかに立派なシステムを作っても、いざという時に機能しなければ意味がない。防災システムに関する最大のポイントは、肝心な時にしっかりと機能し、実効をあげることだ。

 そこで一つの提案だが、実例や生の情報が詰まったこの企画記事をもとにして小冊子を作り、自治体や関係機関に配ってはどうだろうか。その中では各界から持ち寄った情報を採録し、企業が緊急時の具体的行動指針をまとめた常時携帯カード(当社ではエマカードと呼ぶ)を全社員に配付する、といった事例も細介してよいと思う。

 いずれにしても、この記事が防災意識の徹底に向けて広く社会全体の関心を呼び起こし、危機管理の充実につながることを期待したい。

米停電を踏まえて報道を

 ところで、この紙面批評の締め切り間際の18日、米国・カリフォルニア北部地域が広範囲にわたって停電にみまわれたというニュースが飛び込んできた。産経新聞18日夕刊は、百万世帯停電と大きく報じ、19日の朝刊でも一面トップで扱われた。正直、同業者である私どもとしては、固・地域こそ違え、ゾッとする出来事である。

 世界で最も先進的であり、IT革命の発信地、シリコンバレーを含んだ米国景気の牽引地域をも巻き込んでの出来事だけに、電力供給の重さと現代社会に潜む大きな弱点とが浮き彫りにされたと言って良かろう。

 実は、これまでの報道にある通り、1990年の英国での電気事業民営化に始まり、英米を中心として、この電気事業の規制緩和・競争化は大きな流れとなって世界各国で進められつつある。その最も先進地であり、モデルの一つと考えられていたのがカリフォルニア州の電気事業改革である。それは一種の壮大な社会的実験とも言えるもので、電気エネルギーを市場で扱う普通の物財として扱うことが考えられている。それだけに、昨夏に続き、冬にそれを上回る混乱が生じていることは、世界的な関心事だと言って良い。

 折しも、日本でもここ4年ほどの検討期間を経て、電気事業の規制緩和が進みつつある。昨年の3月から、大口の電力ユーザーは電力会社を選べるようになり、新規にそうした顧客向けに電気を販売する企業も誕生し始めている。文字通り、電力会社も競争の時代に入りつつあるのだ。もとより電力会社は、国際的に高いと批判を受けている電気料金を引き下げるべくさまぎまな努力をしなければならないし、そのために導入され始めた競争化、市場化を忌避することは許されない。

 ただ、改める方向性、これからの電気事業や規制のあり方については、海外の事例はもちろん、わが国の歴史に学ぶことも含めて、さまざまな角度から検討しなければいけない。

 日本では、カリフォルニアのような混乱を避けるためにも、十分な議論と検討を重ね、じっくりと進めていくことが大切であり、報道にあたってはそうした点も踏まえて大いに論じてもらいたい。                                    (東京本社発行最終版による)


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