葛飾区再生計画案行政編


FATA REGUNT ORBEM ! CERTA STANT OMNIA LEGE

(不確かなことは運命の支配する領域。確かなことは法という人間の技の領域)

―― ローマの格言 ――

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

第13章(教育)関連資料

<教育資料32> (01.03.26 読売新聞)

区立の学校選べます 学区超え希望生かす

 東京・足立区、江東区 全小中学校で「完全自由化」

 東京の足立区と江東区が2002年度から、すべての区立小中学校を対象に、保護者と子どもたちが進学先の学校を自由に選択できる制度をスタートさせる。これまでに品川区などが小学校をブロックに分けて実施しているが、小中学校とも区内全校から選べる「完全自由化」は大都市部で両区が初めて。学区の自由化も多様になってきた。(初貝 佳邦)

* * *

 これまで、公立小中学校は、原則的に住んでいる場所によって通学区域(学区)が決められていた。このため、両区では、「進学実績の高い中学へ通わせたい」「特定のクラブ活動が盛んな学校へ行きたい」と、住民票を移してまで、子どもを学区外の希望校に通わせる保護者も多かった。

 足立区は今月、「多様化する子どもと保護者の要望にこたえる」として、2002年度の入学者から、区立小中学校を自由に選べる「学校選択の自由化」制度を導入することを正式に決めた。

 江東区も2月、学区は残すものの、無条件に変更を認める自由化方針を打ち出した。

 小学校について品川区は区内を4つのブロックに分けて2000年度から選択自由化を実施しているが、両区がブロック制でなく、完全自由化としたのは、なぜか。

 昨年9月19日。足立区の「学校選択の自由化懇談会」の第3回会合。実質的な議論が始まったこの日、委員の間からは、こんな意見が出た。

 「ブロック制にすると、境界付近の子どもは、隣接ブロックにある近くの学校も選べなくなる」「自由化といっても、ブロック制だと選択の幅が狭められる」

 一方で、「通学の安全確保を図るためには、ブロック制の方がいい」という意見もあった。

 結局、同懇談会は「ブロック化は制限を設けることになるので自由化の趣旨に反する」として、完全自由化の道を選んだ。指摘された通学の安全の問題については「親の責任で対応すべきだ」とした。

 江東区教委も「従来の指定校変更の実態を見ると、区内の遠い学校まで通学する小学生もいる。ブロック化はかえってこの実態に制限を加えることになってしまう」と、区内全域から自由に選べるようにした。通学の安全の問題についても、同区教委の萩原博冶・学務課長は「その点も考慮して保護者が進学先を判断すべきだと考えた」という。

 基準なければ選べない 学校の情報公開カギ

 それでは、学校選択利のさきがけだった品川区は、こうした両区の完全自由化の動きをどう見ているのだろうか。

 同区教委の久保田孝之・学務課長は「ブロック制をどうするかは、今後の検討課題だ」という。同区が小学校についてブロック制とした大きな理由は、小学生が遠い学校まで通えるのかという体力の問題を考慮したのと、「大都市部では最初の自由化だったので、いきなり区内全域から選んでいいと言われても保護者も困惑するだろう」と考えたからだという。

 しかし、ブロック外の学校に進学させたいという保護者も当然いる。昨年4月に新1年生の保護者を対象にしたアンケート結果では、3%がブロック外の学校に進んだが、「従来の指定校変更制度での対応となるので、手続きが面倒だという声が窓口で寄せられた」という。 同区教委はこのため、アンケートを新年度も行ったうえで、「ブロック不要という声が多ければ、見直しを検討することになるだろう」と話す。

 教育界に大きなインパクトを与えた学区の自由化にも様々な形が出てきた。しかし、「自由に」と言われても、選ぶ基準がなければ効果はない。学校側の情報公開が成否を決めるのはどこも同じだ。

 足立区教委は今月9日、区内115の全区立小中学校にファクスを送り、10月に行う保護者らへの学校公開の期間を従来の1週聞から2週間に伸ばすことを伝えた。また、全小中学校の指導方針などを紹介した小冊子をつくり、各学校に独自のPR用パンフレット作成を呼び掛ける方針だ。

*******

学区自由化広がる兆し

 学校選択の自由化の動きは、1997年に文部省(当時)が出した「通学区域制度の弾力的運用について」という通知がきっかけになっている。

 読売新聞社が全国の都道府県教委に尋ねたところ、学校選択の自由化を既に実施したり、導入計画を明らかにしたりしている市区町は、都内の品川、豊島、足立、江東の4区と日野市のほか、三重県紀宝町、岐阜県穂積町の7か所だった。現在3,250ある市区町村の中では、まだまだ少数派だが、「学校選択自由化のメリットが浸透すれば、徐々に全国に広がるだろう」と専門家は見ている。

 このうち三重県紀宝町は、98年度から、入学者だけでなく在校生にも進級時の学校選択を認め、町立の小学校7校を自由に選択できるようにした。

 同町は県の南端に位置する人口約8,200人の小さな町だ。過疎化で児童数も減少傾向にあり、同町教委は「小規模校と比較的大きな学校との教育格差があり、小規模校から大きな学校に変えたいという希望にこたえるため選択自由化が必要だった」と説明する。99年度には、浅里小の児童が自然減から1人だけになり、この児童が4年から5年に進級する際、隣接する北檜杖小への転校を選択したのを機に、浅里小は休校となった。

 地元では「地域の中核施設である学校が休校になるのは寂しいが、子どものことを考えると1人だけで友達もいないのはかわいそう」という声が強かったという。

 これまで、在校生の進級時の学校変更は、98年度は1人、99年度は3人だったが、2000年度は0、新年度も希望者はいないという。

 一方、岐阜県穂積町は、92年度から町内の小学校4校、中学校2校に、各校年間100万円の予算をつけて特色ある学校づくりを進めてきた。そのうえで2000年度から、中学校の選択の完全自由化を全国で初めて実施した。「せっかく学校に特色を持たせても、入学者が選べなければ意味がない」と町教委の井探吉男・学校教育課長は語る。

 ところが、初年度、2001年度とも、約350人の中学1年生のうち、学区外の中学に進学希望を出した生徒は1人ずつだった。

 井深課長は「各校の特色が、まだ十分に浸透していない」と率直に認める。

 都内では、品川区が2000年度から、小学校を区内4ブロックに分け、その中で学校選択を自由化し、中学校についてはこの4月の新入生から全区立中を対象に選択できるようにした。

 同じく新年度から、日野市が小学校を8つ、中学校を4つのブロックに分けて、ブロック内で学校を選択できる制度を導入、豊島区も指定校とその隣接校から選べる「隣接校選択制」を導入する。足立、江東両区の完全自由化に対して、ともに限定的な自由化だ。

 葉養正明・東京学芸大教授(教育制度)は「全国の自治体は、選択自由化に関心を持ってはいるが、まだ品川区などの動向を見極めようという姿勢だ。学校の活性化などの利点が浸透してくれば、自由化の流れは徐々に広がっていくだろう」と見ている。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

<教育資料33> (01.04.02 読売新聞)

「新指導要領」に向け、学力どうつける?

教科と連携「総合学習」 「習熟度別」で意欲・自信

 新学年の授業が、もうすぐ始まる。新しい年度はいつにも増して「学力」が教育界の問題点になりそうだ。小中学校の教科内容を3割削減する新学習指導要領への移行期最後の年度となるうえ、文部科学省が「新指導要領は、子どもが学習すべき最低限の基準」との姿勢を打ち出しているからだ。習熱度別学習や総合的学習の教科とのかかわりなどが焦点となる。学校はどう変わるのか。 (勝方信一)

●問題解けたら別教室へ

* みんな一緒の一斉授業を見なれた目には、それは不思議な光景だった。川崎市立東小倉小学校で3学期終了間際に取材した2年生二クラスの算数の授業。2階の自分たちの教室で1年問のまとめのプリントに取り組んでいた子どもたちが、問題を解き終わると1階の教室に駆け降りていく。そこには、別の教師が待っていて、より高度な問題のプリントを渡す。授業は2クラス合同となる。ぎりぎりになって1階へ降りてきた女の子は「跳び箱が4段から5段に変わったときみたいにうれしいな」とにこにこ顔だった。元のクラスはだんだん、子どもが少なくなってきた。「う−ん」と頭を抱えていた男の子がいた。<一列に並んだ子どもの前から13番目と後ろから7番目は同じ人。子どもは全部で何人?>の問題を解く式ができない。「同じ人のところが分からないのね。図に書いてごらん」と担任に丁寧なアドバイスを受け、はっと気がついたが、時間切れとなった。「悔しいけれど分かったからいい。次、頑張る」

* 同小では、教科を構成している各単元の授業は最初、クラス全員一緒に行い、理解の程度に差が出てくる終わりごろ、必要に応じて習熱度別の方法をとる。次の単元は、また全員一緒の授業から始まる。2002年度から全国一斉に導入される総合的学習も前倒し実施している。5年生が昨年度、2学期から3学期にかけて行った学習は、「エネルギーを探れ」がテーマだった。グレープフルーツに銅板、アルミ板を差し込んで「果物電池」を作る。自転車の照明用ダイナモを分解し、発電の仕組みを知る。発電所へ見学に行く。調べたことをグラフに書いて発表する。環境と工業のありかたについて話し合う。理科、算数、国語など、教科との関連が重視されている。

問われる学校の力量

* 東京・品川区立荏原三中では昨年度、数学の一部で4コースに分けた授業をした。各コースのレベルを示す試験を行い、その出来具合を生徒が判断して、どこに入るか決めた。よくできる生徒が基礎的なコースを選び、じつくり復習した。実力より高いコースを選び、苦労した者もいた。区教委から指導助手として派遣された大学院生が授業を手伝った。埼玉県杉戸町立広島中学では、もう10年以上、2年生以上の数学、英語を「基礎基本コース」「深化発展コース」などに分け、生徒に選ばせている。数学は単元ごとにコース希望を変更し、英語は年間を通して固定する。定期試験は同じ問題で行う。生徒の希望は基礎コースが多い。習熱度別学習は「子どもを差別している」との批判を受けやすい。実効を上げるには、「競争」ではなく「それぞれに応じた学習」ととらえる意識改革が求められる。広島中では以前、基礎基本コースを「下のクラス」と発言した教師が同僚に厳しくたしなめられたことがあった。

 総合的学習も、子どもが自分で学んでいくものでなければならない。ともに学校の雰囲気、力量が問われる。先月、東小倉小を退職した塚田庸子・前校長は「習熱度別学習は自分のためになった、と子どもが思うようになってほしい。総合的学習も、将来につながる力をつけるものでなくてはならない」と言う。同小では毎週水曜日、読書活動の時間がある。教師やボランティアの母親らが様々な民話や童話、小説などを読んでくれる。子どもたちは廊下の張り紙を見て、好きな本の読み聞かせがある教室を選んで行く。

 同小の子どもたちが「みんな一緒」にこだわらない理由が分かったような気がした。

自治体 教員増、独自策で対応

●「3割削減」懸念の声 

 習熟度別学習や総合的学習が注目されるのは、文部科学省が最近、「基本的教科の少人数、習熟度別授業の実現」「総合的学習と教科との有機的な連携」を強調するようになったためだ。

 新要領が教科内容を3割削減するため、子どもたちの学力低下を懸念する声の強いことが、背景にある。同省は今、「新要領は最低限の基準」とし、すべての子どもに基礎基本を徹底するとともに、指導要領に示された内容を理解した子にはより発展的な指導をすることを求めている。

 今年度、同省は英語、数学などの少人数授業のため、小中の教員数を全国で4,500人増やす。5年間で22,500人増やす計画だ。東京都ではこれを受け、今年度、小学校で239人、中学校で145人の教員増をはかる。増員分は、例えば2クラスの学年で、差のつきやすい基本的教科の授業を生徒を3クラスに分けて行うことなどに充てられる。生徒の興味や関心に応じたクラス分けも考えられるが、都教育庁では「興味、関心で分けられない教科もある。習熱度別の授業を基本とする」としている。

 総合的学習で同省は、体験や地域学習に重点を置いた事例集を発行しているが、今年度は教科とのかかわりも取り入れた事例集を出す予定だ。

 学力問題に独自に取り組む自治体も出てきた。鹿児島県教委は1999年に「新世紀カリキュラム審議会」を発足させ、子どもたちの学力向上策を検討してきた。先月、「基礎学力の定着に向けた今後の施策の方向」を発表した。

 高校入試で小学生レベルの問題を5教科いずれかで解けない生徒の比率を、現在の10%から5%に減らすことなどの目標を示している。「ゆとり教育」が基礎学力の揺らぎとならないよう、指導の再点検を求めてもいる。来年度以降、県内の小中学校を対象とした独自の学力調査を実施することもうたっている。

 総合的学習についてもガイドラインを示した。「体験的な活動の中で児童生徒が楽しそうであっても、それが教科を学ぶ意欲や行動につながらなければ空疎な実践と言わざるを得ない」とした。お年寄りを訪問する活動の中で、敬語の使い方や図表やグラフを使った発表の仕方を身に着けるなどの具体例を示している。

 新指導要領がうたう「自ら学び、考える力」は大切だ。しかし、子どもたちの「勉強離れ」が指摘される中で、どのようにしてそれを身に着けさせるか。指導要領を超える内容も教えてもよいなら、その教材はどうするか。課題は山積している。文部行政だけでなく、自治体の取り組みも問われる。


BACK to 再生計画案     BACK to 第13章(教育)関連資料目次
ご意見、お問い合わせ
E-Mail:k-sigeki@tau.bekkoame.ne.jp