EOS/E-TTL徹底研究
プロローグ〜EOS10Dでストロボを使おう
銀塩一眼レフEOS55を使っていたときには、
いかにストロボを使わないかに凝っていた。
それは、結婚式の披露宴とか、皆がみなストロボを光らせて同じ
写真を撮っている中で、個性的で印象の強い写真が取れるからである。
ただ綺麗なだけの写真は沢山有る中で、キャンドルサービスの輝きや、
スポットライトの効果で盛り上がった臨場感溢れる写真を手渡してあげると、
これはもう、喜ばれる。…可能性は高い(^^) くっきりはっきり写った写真は
他の人が撮っているのだから、ほんの数枚印象深い写真があれば充分なのだ。
EOSには手ブレに強いISレンズも有るし、EOS55が内蔵している赤色LEDの
AF補助光は、真っ暗闇でも、コントラストがゼロの被写体でもすいすい
ピントが合うから最強のノーフラッシュ・カメラであった。
(EOS10DのAF補助光はフラッシュの連続発光で、イマイチ合焦速度が遅いが、
外部ストロボを接続すれば、赤色LEDの補助光も使える)
しかし、デジタル一眼レフ、EOS10Dを使うようになってから、日中にストロボを
補助光として使う技術が気になる。
これは、デジタルカメラが極端な露光量の差に弱いという
特性を補う必要に迫られているせいだ。要するに、
ネガフィルムなら、写ってさえいれば後から補正できたのが、デジカメ
では、白く飛んだらアウトだし、黒く潰れたら、補正してもノイズだらけ
という気難しさがあり、「光をコントロールする必要がある」ということだ。
また、晴天屋外のポートレートで、モデルの顔に出来る影を
和らげたいとか、そんな必要もある。(モデル(というか妻)が、アートっぽい
写真を好まないので…(^^;;)
ところが、これまでストロボをあまり使わなかったので、イマイチ、カメラが
何を思って露出制御しているのか良く分からない。そのためびっくりするような前衛的
写真が出来上がることが多い(^^;
そこで、明るい場所でレフ板代わりにストロボを焚く、人物に
キャッチライトをいれる、薄暮の風景と人物を適当な露出で撮る、真っ暗な
場所で人物を白く飛ばさないなどのシチュエーションの勉強をしようというのが、
このページの企画意図である。
とっても機能の多いEOSのストロボ(勉強編)
■E-TTLのセールスポイント
詳細はメーカーHP(E-TTLの解説)を見ていただくとして、主なポイントはこうなっている。
- E-TTLは「プリ発光記憶式評価調光」
レリーズの瞬間にプリ発光させたストロボ光と定常光を合わせて測光・評価演算
画面内の高輝度部や高反射物を検出してナチュラルな表現をする
- ハイスピードシンクロ(FP発光)撮影
外部ストロボをFPモードにしておくと、「最高同調速度」を超えると自動的に
普通のシンクロ撮影から切り替わり、シャッターの最高速まで同調する。
大口径レンズや日中シンクロに便利。
- FEロック機能
スポット測光範囲を利用し、プリ発光によってデータを記憶する。(16秒間)
プリ発光直後に主被写体をAFフレームから外したり、背景に高輝度な部分が
あっても、適正露出が得られる。
- ストロボ発光量のブラケッティングが可能(外部ストロボの機種による)
定常光とストロボ光の比率を変える。
- 多灯撮影のフルオート化を実現(しかもワイヤレス)
●E-TTL IIのセールスポイント
新機能のセールスポイントは、つまり旧機能の弱点である。
メーカーHPのE-TTL IIの解説
E-TTLは「測距点が主被写体である」という考えをもとに評価測光をしていたが、
測距点自動選択や中央測距点任意選択では、調光させたい部分と測距点が一致せず、
適正な調光がなされない場合があった。
そこで測距点に依存せずに安定した調光を行う方式を開発した。
- プリ発光により被写体を特定する「被写体特定・加重平均評価調光」
- レンズ距離情報を加味
●E-TTLの方式的な限界とは
以上のカタログ上で見られる方式上の限界を整理すると、
「測距点と主要被写体がずれると調光が合わない」
という現象に尽きる。
主要被写体以外の高輝度部分を無視する評価測光は、至近距離にある
反射物の影響を受けないという利点があるが「測距点と主要被写体が一致しない」
場合には、逆に主要被写体を無視して背景に調光しようとするので、
被写体が真っ白になる現象を起しやすい。
つまり「日の丸構図」を避けようとすると、調光は破綻する。
定常光の撮影であれば、AFがロックするのと同時にAEロックされるので、
どのようにフレーミングを変化させてもこのような矛盾は起こらず、ストロボ
使用時と使い勝手が大幅に異なる。
これを補うには「FEロック」を使うしかない。
■E-TTLのマニュアル要約・注釈
何ページもあるマニュアルを要約・注釈する。
- EOS10Dの同調速度は30秒〜1/200秒まで
- FEロック:*ボタンを押すとストロボがプリ発光し、画面中央で部分測光し、
記憶する。(16秒間保持)
- ストロボ調光補正: 露出補正とは独立でストロボの強さのみ補正する
- E-TTL:全自動
AFフレームと、ストロボの測光位置は一致する。
逆にいうと、ストロボ使用時は、AF後に構図を変えると失敗する。
日の丸構図を避けるには、AFフレーム自動選択にしておけば、ピント
もストロボも勝手に最適になるはず。と信じる?)
あるいは、「FEロック」を使って自分で露出を決める。
- 撮影モードによる動作の違い
※何れのモードでも、AF後に構図を変えると駄目ということに注意
- Pモード:全自動
シャッター速度は1/60〜1/200秒。
手ぶれをしない範囲で、出来るだけ背景も写そうという動作。もっとも安全。
- Avモード:絞り優先・スローシンクロ
自動的にスローシンクロ(30秒〜1/200秒)になり、背景まで
綺麗に写る。はず。ただし三脚必須。
(CF機能に「1/200秒固定モード」があるが、同等の機能を実現するためには、
Mモードを使うほうが手っ取り早いだろう。)
日中シンクロでは、白飛びに注意。(シャッター速度の上限)
- Tvモード:しシャッター優先
1/200秒以下を選択する。絞りは自動
背景のブレを気にするときにはこのモード。
- Mモード:マニュアル
ストロボは主要被写体に対してオートで、背景はM設定に
従い任意の明るさ
背景の明るさと、ストロボの明るさを別々にコントロールしたい時には、
基本的にMモードを使うのが手っ取り早いだろう。
- 外部ストロボのFP発光モード:
1/200秒より速いシャッターが切れる
日中シンクロで絞りを開けたいときに有効な機能。(非FP発光モードで
シャッターが同調速度の上限を超えると警告が出るが、そのまま撮影すると
白飛びする)
(ただし、実質GNは低下するので、主要被写体が遠いと発光量不足に注意)
- 日中シンクロ、ストロボ露出自動低減制御: CF14
日中シンクロで自然な描写をするために、ストロボ光を弱く当てる機能。
しかし、弱く当たりすぎることも多くはっきり「逆光」の時には
この機能を停止して、自分で露出補正したほうがいいことが多い。
- 赤目緩和機能あり(メニューから)
- 外部ストロボのAF補助光機能:
CF機能で、外部ストロボの発光(禁止)とAF補助光の発光(禁止)を別々に設定できる。
ストロボをシーン/目的別にどう使うか
■手っ取り早く綺麗に撮る
カメラのE-TTL機能が考えてくれるので、カメラの考えとぶつからないように、
測光はPモード、AFフレーム選択もオートにする。
AF後に構図を変えると失敗の元。
■人物と夜景
Avモードでスローシンクロになるのだが、定常光の測光は実は背景ではなく、
ピントを合わせたAFフレームを重点に測光した結果だ。
だから、人物と背景の輝度差があると露出が合うとは言い難い。(ネオンピカピカ
だったり、逆に真っ暗だったり)
デジカメなので試し撮りを見て背景とフラッシュを別々に露出補正しても良いけれど、
背景はMモードで測光、前景はFEロックで各々別に露出を決めたほうが
手っ取り早い可能性が高い。
※いっそのこと「人物入り夜景モード」を使ってカメラ任せという手もあるが。
■日中シンクロで、人物の目にキャッチライトを入れる
「日中シンクロ、ストロボ露出自動低減制御」が働き、あからさまにストロボを
当てた感じにならないように弱く当ててくれるので、P/Avモードで難しいことは
無い。はず。
AFロックを使うとき、FEロックも併用することに注意。
定常光が明るいほど、キャッチライトは弱くなるが仕方ない。
外部ストロボ使用なら「FP発光」モードにする。
※いっそのこと「ポートレイトモード」を使ってカメラ任せという手もある(^^;
■日中シンクロで、逆光にレフ版代わり
強い逆光の場合、「日中シンクロ、ストロボ露出自動低減制御」が逆効果で、オート
任せだと思うほど光が当たらないことが多い。CF14で機能を抑止するか、めいっぱい
調光露出補正をかけるかのどちらかになる。
また、背景との輝度差が大きいのは「夜景」と似た状況なので、Mモードを
使って別々に測光するのも有効だ。
外部ストロボ使用なら「FP発光」モードにする。
…と、このように見ていくと、どうも「シーンを選択して完全にカメラ任せ」にするか、
「マニュアルでこつこつ合わせる」かの選択になる。
背景とストロボ、二つの光源の比率は撮影意図によって千差万別。調光の手間も光源
二つ分、倍の手間になるのは覚悟してじっくり撮るのは仕方ないようである。
[戻る]