映画館がやってきた!

スクリーン選びのヒント集

- ビーズ or マット -

 私がCPJ-A300の導入記を書いてから、毎月1.2名のペースで 「ホームページを見てCPJ-A300を買いました」という嬉しいメールを頂きます。
 その中で、スクリーン選びについて質問されることも多いので、私の経験/考えを まとめたいと思います。

生地の選択

 ホームシアター用には、ホワイト、ビーズ、パールの三種類が代表的でしょうが、 私は、ホワイト(マット)と、ビーズの二種類のスクリーンを使ったことがあります ので、この二つの画質と使い勝手についてお話しします。
 結論としては、 だと思います。

●「明るいプロジェクターにはホワイト、暗いのはビーズ」という説
 CPJ-A300(60ANSIルーメン)も含めて、80〜100インチ投射で、現在の プロジェクタでホワイトでは鑑賞に堪えないほど暗いということは、 「明るさの基準」をどう考えるかにもよりますが、まず無いと言えるの じゃないでしょうか。
 少なくとも、CPJ-A300の90インチで、部屋を真っ暗にした場合は、 ホワイトでもビーズでも、ハイライトは十分に眩しいくらい明るく感じます。
 つまり、明るさに関しては、真っ暗にすれば心配ないということ。
 反対に、ホワイトに対してビーズが明るいと言っても、最近の低ゲインの 高画質タイプビーズは、「一目でわかるが、びっくりするほどホワイト違う わけではない」というのが、実感です。

 従って、プロジェクタの出力と、生地の相性は考えなくて良いと思います。

●画質の違い
 ホワイトはしっとり。ビーズはギラリ。
 という定説は事実だと思います。
 ただし、ビーズの「ギラリ」が悪い方向に感じられるのは、よほど ハイゲインかつ安い製品のことではないかと思います。
 ビーズにも、ゲイン2.6, 2.4, 1.9 など色々ありますが、私が使っている ゲイン2.4の製品では、ビーズ的な粉っぽさや不具合はありません。  ゲインが低くなるほど、表現はマット的になっていきますね。

●視野角
 ビーズスクリーンは、光は入ってきた方向に帰っていきます。
 従って、画面の中央に座ってみるのがベストポジションで、 ここから離れるにつれて徐々に光量は減ります。また、スクリーンからの距離 によっても、視野角が変わります。
 わが家のゲイン2.4のスクリーンの場合、スクリーンから2〜3m離れた位置で スクリーン幅の内側なら光量低下はさほど問題になりません。

 大勢招いて鑑賞するのが目的なら、ほぼどこから見ても同じ明るさの ホワイトが有利ですが、「一人〜家族で鑑賞」という使い方なら、 ビーズの視野角に不満を感じることはないと思います。

●迷光や室内の照明など、室内の環境への対応力
 これが、ホワイトとビーズでもっとも違う部分だと思います。
 ビーズの最大の利点は、絶対的な明るさよりも、室内の照明や迷光の影響を 受けにくいことにあります。

 専用シアタールームで、壁まで真っ黒にする場合、ホワイトもビーズも それぞれベストの絵を映し出すでしょう。
 その場合、しっとりとしたマットの方が映画的画質だと言われると思います。

 しかし、壁が黒くない場合、照明を残したい場合は、ホワイトの画質は 著しく低下し、ビーズに勝つことは出来ません。

 ホワイトの場合は、その性質上どの方向からの光も満遍なく反射します。
 そのため、画面が明るいと部屋の中全体が明るくなり、この光がまた画面を照らすこと によって、画面のコントラストが低下します。

 ビーズの場合は、スクリーンに入射した光は、プロジェクタに戻るため、 左右の壁面よりむしろ、後ろ(プロジェクタの背後)の壁の方が明るくなります。
 スクリーンに近い部分の壁は、ホワイトの時より圧倒的に暗いままで、また、 反射は光源に戻る性質から、左右の壁面からの光は、壁面に戻り、鑑賞者の目には 入りません。
 この相乗効果で、ビーズ・スクリーンのコントラストは、ホワイトより圧倒的に 有利になります。

 リビングで、明かりを残したい場合も、ホワイトは影響を受けてコントラスト が低下しますが、ビーズの場合は光源が直接スクリーンを直射せず、 光源が、鑑賞者の軸線に無いなら、スクリーンが白く見える程度はごく僅かで 済みます。

 私の家では、ホームページの 「映画のための照明設計」に書いているように、 お客さんが来たときには、宴会が出来るように三灯を使って照明しています。
 これで映画を見ながらLDのジャケットが読める程度の明かりが採れますが、 ホワイトだと、画面横のスタンドで完全にスクリーンが白くなり、 何も映らなくなります。(プロジェクタの出力が高ければ取りあえず、映ることは 映るでしょうが)
(上記のページにあるサンプル写真の天井灯は、鑑賞時は消しています。念のため)

 結論として、ホワイトは、完全にまっ黒黒の部屋を作ることが出来るときだけ 威力を発揮し、それ以外の時はビーズの方が高画質であると言うことになります。

●耐久性
 ビーズは、多少画面が波打っても、スクリーンの明るさむらがおきにくいのが 特徴です。ホワイトもまず、大丈夫でしょう。ただし、パールは大変シワに弱い そうです。
 爪でひっかくなど、画面に傷を付けてビーズが剥がれると、当然ビーズ・スクリーン はダメージを受けます。手垢にも弱そうなので、使わないときは必ず収納した方が 良いと思います。もっとも、他の方式でも、これは同じだと思いますが。

巻き上げ方式の選択

 巻き上げ方式には、主に次の5種類があります。  わが家はオーエスの「スプリングモーター式」で、これがやはり一般的でしょう。
 キクチも最近改良型が出たようですが、慣れれば概ね思い通りの所でピタリと 停止させられるので、使い勝手も悪くないです。

 電動式は、引き出すときにスクリーンに負担が掛からず、希望の高さでピタリと 止まると言う利点はあるものの、重く大きく高価で、そこまですること無いと 思います。
 もっとも、120インチクラスになると、重くて電動が必須になってくるようですが。

 掛け図式は、とても安いですが、出し入れが面倒で、収納時にシワになりやすそう です。また、面倒だからといって出しっぱなしでは、早く汚れるでしょう。

 キクチには、床から立ち上げる方式もありますが、窓際設置にするなら 邪魔だということと、 唯一画面の下端が比較的低い位置に来ることが考慮すべきポイントでしょう。
 プロジェクタの設置と一緒に考える必要があります。床置きにはぴったりですね。
 また、置くだけで済むのもグッド。

 張り込み式は、シワが出ないと言う強みがありますが、片づけられないので、 そのままでは部屋が明るいときにはずいぶん落ち着かないだろうと言うことと、 ヨゴレ防止のために、カーテンなどを引くようにすることが、ポイントでしょうね。
 しかし、専用シアターで電動カーテンなどと組み合わせれば、一番格好いい スタイルであることは間違いないですね。

サイズと比率の選択

●サイズ
 小さければ、色も濃くなるし、アラも見えないので、一般的に高画質で、 楽なのは間違いないでしょう。
 しかし、プロジェクターを買う人が、小さな画面で満足するとは思えません。
 だから、可能な限り大きくて良いのではないかと思います(^^;
(なんだか書くまでもない結論だ…)

 画面を大きくすることで、使っている機器の悪い癖、ソフトのアラも 拡大されるわけで、単純に考えても、100インチは、25インチの16倍(面積比) アラが拡大されます。
 ついでに液晶PJだと、格子模様もよく見える。

 だけど、大画面を目指す人はそんなことで怯んではいけません。
 お金がある人は、機器のグレードアップ。無い人は心の目で補うと(笑)

 なお、「液晶で拡大すると字幕が見にくくなる」という説を聞いたことが ありますが、一文字を構成するドット数が変わるわけじゃないので、全く問題 ありません。むしろ見やすいはず。

●ワイドスクリーンは必要か
 TVはすっかりワイドが主流で、スクリーンもワイドタイプがたくさん 出ていますが、スクリーンはプロジェクタに合わせるべきでしょう。
 とすれば、ワイド対応PJはSONY W400QJ くらいのもので、後は4:3にすべき。

 ワイドしか見ない人は構わないのでしょうが、絶対的な面積は4:3スクリーン の方が大きいので、4:3画像をズームで縮小してワイドスクリーンに映すのは 勿体ないですね。
 キャメロン監督ファンは、たぶんTVサイズと劇場公開サイズと二種類の ビデオを購入するから、4:3必須でしょうし…(笑)

 また、液晶PJはワイド映画の黒縁もうっすらと白くなるので、これを黒布や 画用紙でカバーすると格段にくっきりした画像になります。
 どうせカバーするなら、4:3スクリーンでも、ワイドでも同じことだと思います。 (なので、大は小を兼ねるということ)

その他のポイント

●画面サイズと視聴距離
 画面に近づくほど迫力が出るのは確かですが、私はスクリーンサイズによらず 最低2.5〜3m離れて見るのが良いと思います。
 それは、あまり近づくと人間の神経は、目の焦点と両眼の視差から 「近くを見ている」という認識をしてしまうからです。
 その場合、どうしても、ある距離にある平面の出来事として見えてしまうでしょう。
 一方、画面からある程度離れると、平面っぽさが薄らいで、リアリティーが増してくる でしょう。

 視力によっても個人差があると思いますが、このように、ある程度離れて みることは、絶対必要です。そして、離れて見て迫力を感じるためにも、 大画面は必要なのです。
 もしも、視野に占める画面の面積だけで迫力が向上するなら、TV画面でも 画面に近づけば視野いっぱいで迫力が得られるはずですが、そうならないのは、 はっきりと立体感(平面感)を感じなくなる程度に離れることが絶対必要だった のです。

●音響と視聴距離
 近すぎるのはまた、音響的にもマイナスがあると思います。
 まず、視聴位置を頂点としたセンターSPと画面中心の角度が、近づくほど開いていきます。 これは、セリフがーセンターに定位しない感じが増してしまいます。
 つぎに、リアSPからの距離が離れてしまうことも、定位感にはマイナスがあります。

 まあ、座る位置は簡単に実験できるでしょうから、色々試してみると良いと思います。


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文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!