映画館がやってきた! 映画鑑賞記

クイーン・ヴィクトリア〜至上の恋

■DATA 原題:MRS BROWN(1996年イギリス)
キャスト:ジュディ・デンチ(ビクトリア女王)

Story

  • 1837年 ヴィクトリア女王18歳で即位。20歳でアルバート公と結婚
  • 1861年 公が腸チフスで他界。病的なまでに深い服喪生活に。
  • 1864年 アルバート公存命中の従僕、ジョン・ブラウンが呼ばれる
 ブラウンは陛下の馬と共にオズボーン宮に呼ばれる。 「陛下が乗馬でもして気晴らしが出来れば」という側近達の苦心の末の 策だった。…という所から物語は始まる。

 このときヴィクトリアはすでに45歳くらいであるし、ともかく毎日 喪服で暮らしているので、宮廷の物語といってもとにかく暗い。侍従 達も女王陛下の前では何か答えるとき以外は自分から口をきいても いけないという状態で、華やかさのかけらもない。
 女王はジュディ・デンチ(恋に落ちたシェイクスピア)で、ブラウン ともども、派手さとは無縁の俳優だ。しかし、二人が心を通わし、 徐々に女王の顔に笑顔が(彼の前だけではあるが)戻ってくるところは なんだかほっとする。
 しかし、政治の世界では女王の長い不在と「ブラウンのえこひいき」 をネタに王政を覆そうとするもの、早く王になりたい皇太子、 アイルランド独立運動などが渦巻き、元祖パパラッチまで出没し 女王の身辺を騒がす。
 そんな中で、女王を守ることに命を懸けるブラウンと世間の目の 対立は日々深まっていき、ブラウンの行動の逐一が大衆紙のゴシップの タネになるまでになり、女王はMrs.ブラウンと揶揄される。
 映画はひたすら、女王の心の支えとして一生を仕えたブラウンの 純粋さを描いていて「至上の恋」と副題されるのもそのプラトニック な関係故か。
 ともかく二人の関係を取りざたされながらも、ブラウンの心の支えで ヴィクトリアは公の場に復帰する。身分は一従者でしかないブラウンの 存在は、その死後女王の側近がもみ消すのだが、側近自身が自らを悪人 と呼ぶところに、ささやかな救いがある。

感想

 どう見ても地味な文芸作品だが、微妙な心模様はなかなか面白かった。 最初から最後まで女王の後をついて回っている三人の女官もなかなか良い。 確かに彼女らの立ち居振る舞いは女王の威光を高からしめる効果を感じる。
 役者の顔つきも、女官、側近、政治家etc.当時の肖像画から抜け出て 来たようでさすが英国作品という感じ。
 映画はBBS制作の松竹ホームビデオ発売だが、セピアの色調は意図的な ものかも知れないが、そこはかとなく解像度が低いのはビデオで方式変換を したせいか?ついでにコントラストも低くもやもや感が付きまとう。
 この画質は松竹の怠慢か、それともVHSのソフトの実力とはこの程度の 物だったか、すっかりDVDのクリアな画に馴染んだ目にはとうてい満足 できない画質であった。 [1999.11.15 Rental]

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文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!