映画館がやってきた! 映画鑑賞記

満月のくちづけ

■DATA (1989年、日本)
製作総指揮:三宅祐二、監督:金田龍、キャスト:深津絵理、寺脇康文

Story

 とある女子校の仲良しグループが、 里絵(深津)と憧れの美術教師(寺脇)をくっつける恋の呪文をかけ、 恋愛の女神を呼び出すが、仲間のいたずらで儀式は失敗し、 悪霊が降りてきて、次々と関係者を殺していく。
 里絵と仲間は月の力を借りて悪魔を倒すために、満月の夜まで に何とか悪魔退散の呪文を完成させようとするが、彼女にも悪魔 の手が伸びる。

感想

 1999年、今は「踊る大捜査線」のすみれさんで有名な深津絵理が高校生で出演していた ホラー映画。
 深津絵理の当時の業績などは知らなかったが、「満月のくちづけ」で検索したら100件 近いページがヒットして、1989年映画「満月のくちづけ」で 第13回日本アカデミー賞新人俳優賞受賞とある。
 主な芸歴を見ると、10年前からフジTVのドラマには毎年出ていたらしいのだが、 ぜんぜん気付かなかった。ていうかフジTVのドラマを見てない。
 「満月のくちづけ」のエンディングテーマを歌っているのでびっくりしたが、 当時アルバム2枚も出しているようだし、実はアイドル扱いだったんですね…。 1986年の「ミス原宿グランプリ」というのが、そもそもの出身なのか。

 深津はショートカットで、派手な美少女という 感じではなく「真面目で地味だけれど良く見ると可愛い」という タイプ。美人やコメディエンヌはちゃんと他に揃って学園ドラマの 王道を形成している。どっちにしても現在の深津絵里と比べたら 気が付かないくらい子供の顔で新鮮である。
 寺脇さんはあまり変わっていないかな?
 前半、まだあまり怖くないシーンでは、女子高生がコロコロと 駆け回る姿が可愛くてなかなか良い。教師役が全員マンガに出て くるような、デフォルメされたステレオタイプで有るところが、 余計なウケ狙いという気はするが、夜の学校のシーンになると 途端にシリアスになる。
 次々と殺人が起こり、最後にヒタヒタと迫る悪霊付きの教師と 里絵の追いかけっこになるのだが、なかなか怖くて良い。何度も どんでん返しがあって飽きさせない。
 追いかけられるうちに里絵の内にある種のたくましさが育って くるようだが、あくまで無力な女子高生の本文を踏み外さないと 言うのも繊細で良い。最近のハリウッド映画には、女傑ばかり だから安心できるかも(^^?

 普段ホラーは見ない分新鮮だったが、三宅さんがこういう リリカルな作品を作っているとは知らなかったので、そういう 驚きもあった。三宅本人をはじめ東京エキセントリック・シアター の面々があちこちに出てくるのは却って違和感があるくらい、 全体のトーンは叙情的。不思議な味わいが面白かった。


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文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!