映画館がやってきた!
映画鑑賞記
ゴースト・ドッグ
■DATA
キャスト:
Story
江戸時代の武士の心得を書いた書物『葉隠れ』。この本を愛読し武士道の世界に 憧れる孤独な暗殺者ゴースト・ドッグ。彼は以前命を助けられたマフィアを主と敬って いたが、「ファミリー内部の人間を消せ」という指令の現場にたまたまボスの娘が居合 わせたことがきっかけで、ボスの体面のために命を狙われる羽目になる。
彼は組織に逆襲しながら、武士としての節を通す。
感想
[2000.6.29]
★★ あまり殺し屋らしくない外見のビッグな黒人青年が主人公だが、 伝書鳩がお友達だったり、英語の通じないジャマイカン(?)とお友達だったりするし、 趣味は読書で、近所の人からは人嫌いで友達が居ないと思われているが、なかなか 良い奴だったりする。とにかく、妙なキャラクター。
ともあれ、殺し屋としての腕は立つ奴で、『葉隠れ』に書かれた武士の美学の 朗読を挿入しながら物語は進む。
監督の意図するところではないだろうが、彼の武士道は精神的なものはともかくとして、 風車のような刀の振り回し方は日本刀というより、中国の武術みたい(主役の弟が カンフーマニアだそうだ(^^;)だし、 ピストルを8の字に振り回してホルスターに収める動作は刀のしまい方を真似ている らしいのだが、なんか変。
だが、殺しのテクニックの手際よさは説得力があるし、ご近所の公園の回りで 出会う自由人達との人間関係のほのぼのさも、なんだか味がある。
とにかく、主人公の武士道からしてなんだか変なのだが、戦うべきマフィアも バリバリの悪の集団と言うより、なんだか全員高齢で時代遅れ人間の集団という バツの悪さが漂うし、まあ、大人も子供も登場人物全てが時代からちょっと 取り残されたような人ばかり。それが、この映画の妙な空白感を作っているのかも 知れない。
殺し屋映画なのに、ちょっと外したコメディーっぽいシーンが沢山あるのも 特徴かな。
とにかく『葉隠れ』だ。ちょいとばかりの解釈のよじれがコメディーに なっているような所はあるけれど、執拗に挿入されるその断片は映画全編を 貫く美学になっていて、時代に取り残された者たち、言葉の壁に阻まれながら もいたわり合う隣人達、少女と野良犬と伝書鳩…。ゴースト・ドッグと隣人達 の関係のドラマだ。
久しぶりに「人にも勧めたい映画」といえる。ロードショーのメジャー映画 でもないので、見ていない人も多いと思うが味わいあります。
最近はこういうSFXを使用せず派手な爆発もカーチェイスも無い映画… というだけでも逆に宣伝になってしまうかも知れない。殺し屋だから サイレンサー付けた二丁拳銃で「パシュ、パシュ」っと無口に敵を倒して いくのだ。真っ当に格好いい。
よその感想文ページを見ても、この映画の面白さを伝えるのには苦労 しているみたい。洒落たジョークが散りばめられ、個性的な登場人物が ゴースト・ドッグと交流して、一つ一つを取り上げて紹介する方法もある けれど、じわ〜んと効いてくるしみじみした面白さって、表現しにくいなぁ。 私は降参するから、自分で見てもらおう(^^; 低い評価を下しているひとが 誰もいないのがまた珍しいことだ。
DVDとして
●画質: まずまずの高画質だが全体が黒寄りにシフトしているので、 普段の設定のままでは潰れて見えない絵柄が多く、明るさをプラスした上での 高画質だ。ちょっと珍しい。
●おまけなど: 特典映像は、カットシーンが数分付いているが、後はキャスト紹介程度で 最近のものとしては、ちょっと寂しい。
■関連URL
オフィシャル・サイト
産経(監督インタビュー)
日本の公式サイト
カンヌ映画祭99(100%ねたばれ記事)
データ一式
ジム・ジャームッシュ監督記者会見 99.10.08
予告編
よくわかんない出来だけどねぇ…
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文:唐澤 清彦
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