映画館がやってきた! | 映画鑑賞記 |
ドイツ貴族の娘エカテリーナはロシア皇太子の妃となるが、政略結婚の二人の間
に愛情は芽生えず、女帝エリザベートはエカテリーナに愛人を与えその子どもを宿らせる。 なんだかんだで、エカテリーナは愛も欲しい、権力も欲しいと権謀術作の 波乱の人生を送る。 |
しかしキャサリンは美しく撮れている。『マスク・オブ・ゾロ』
『エントラップメント』も美しいが、本作ではドイツの貴族がロシア皇帝家に嫁いだ
という背景もあってか、衣装もセットも豪華で輝くよう。キャサリンの美しさも
倍して見えるという具合。
単純に衣装の数だけとっても、たぶん同じものは二度と着ていないということで、
「アミダラ女王もびっくり」だろう。大人の魅力もある(笑)
ストーリーは概ね史実なのだろう。しかし彼女の嫁入りから、
近衛兵グリゴリー・オルローフの協力で夫である皇帝を殺して帝位につき、
「西ヨーロッパの目から見たらロシアの政治は時代遅れで、私の理想通りに
切り盛りしてロシアを改革してやるのよ!」という政治的サスペンスだったのが、
ラストで「エカテリーナと生涯最大の恋人、ポチョムキン将軍(彼女の力添えで近衛兵から
トントン出世した)との確執」というのをストーリーの中核にもって来たため、
「ピョートル三世を詐称して政権交代を狙ったブガチョフの乱」の
処分に関してポチョムキンと決裂したところで、彼女の晩年の回想のセリフに飛んで
ばっさり話が終わる。曰く、「その後の治世で私は『偉大なるキャサリン』と呼ば
れたけれど、愛は得られなかった」みたいな。
そんな配分なので、「キャサリンの一生」を期待して見る者には話の腰を折
られた気分だし、ラブストーリーの結末としても政治的な見解の相違で決裂と
は、ちと色気に欠けるのではないか…史実ではあっても。
というわけで、ちょっとはストーリーにも緊迫感があって、乗ってきたところで お終い…というむごい作品なのであった。もちろん、キャサリン・ファンなら見て 損はしないと思うのだけれど(^^;
●ツタヤに意見する
この『女帝キャサリン』の棚の広告文句に「衝撃のハードエロス」
とか「私の魅力に溺れなさい」とかなんとか、過激なコピーを並べて
いたけれど、これを見て借りた人はそうとう腰が砕けたと思う(^^;
確かに、「近衛兵上がりの軍人を愛人としていた」というのは、女帝的には
スキャンダラスな事であるけれど、話の基本は「政治的駆け引き」ばっかりで、
しかも最後には、「たとえ愛人が助命嘆願しても政敵は打ち首にする」という
厳しい話で、「どこをどう見てあのコピーを書いたんだろう??」という疑問は募る
ばかりである。
ウケ第一のB級作品とはいえ、ちょっとあんまり実のないコピーじゃないでしょか?
文:唐澤 清彦 | 映画館がやってきた! |