映画館がやってきた! 映画鑑賞記

女帝キャサリン

■DATA (1999 米TV作品) マービン.J.チョムスキー監督
キャスト:ゼタ=ジョーンズ(エカテリーナ2世),ポール=マクガーン(ポチョムキン) ,ジョン=レイ=デイビス(ピョートル3世),ジャンヌ=モロー(エリザベート),メル=ファーラー(大司教)ほか

Story

 ドイツ貴族の娘エカテリーナはロシア皇太子の妃となるが、政略結婚の二人の間 に愛情は芽生えず、女帝エリザベートはエカテリーナに愛人を与えその子どもを宿らせる。
 なんだかんだで、エカテリーナは愛も欲しい、権力も欲しいと権謀術作の 波乱の人生を送る。

感想

[2000.9.1](VHS) ★
 ロシアの女帝キャサリン(エカテリーナ)を、キャサリン・ゼタ・ジョーンズが 演ずる…って、それだけで結構B級な香り(笑)
 なんとなく「TV映画」らしくちょっと雰囲気が映画じゃない…というのは、シーン の合間合間にキャサリンの語りが入って、それで細々したことを説明しながら先に 進むので、なんだか大河ドラマの総集編みたいな気分がするのだ。

 しかしキャサリンは美しく撮れている。『マスク・オブ・ゾロ』 『エントラップメント』も美しいが、本作ではドイツの貴族がロシア皇帝家に嫁いだ という背景もあってか、衣装もセットも豪華で輝くよう。キャサリンの美しさも 倍して見えるという具合。
 単純に衣装の数だけとっても、たぶん同じものは二度と着ていないということで、 「アミダラ女王もびっくり」だろう。大人の魅力もある(笑)

 ストーリーは概ね史実なのだろう。しかし彼女の嫁入りから、 近衛兵グリゴリー・オルローフの協力で夫である皇帝を殺して帝位につき、 「西ヨーロッパの目から見たらロシアの政治は時代遅れで、私の理想通りに 切り盛りしてロシアを改革してやるのよ!」という政治的サスペンスだったのが、 ラストで「エカテリーナと生涯最大の恋人、ポチョムキン将軍(彼女の力添えで近衛兵から トントン出世した)との確執」というのをストーリーの中核にもって来たため、 「ピョートル三世を詐称して政権交代を狙ったブガチョフの乱」の 処分に関してポチョムキンと決裂したところで、彼女の晩年の回想のセリフに飛んで ばっさり話が終わる。曰く、「その後の治世で私は『偉大なるキャサリン』と呼ば れたけれど、愛は得られなかった」みたいな。
 そんな配分なので、「キャサリンの一生」を期待して見る者には話の腰を折 られた気分だし、ラブストーリーの結末としても政治的な見解の相違で決裂と は、ちと色気に欠けるのではないか…史実ではあっても。

 というわけで、ちょっとはストーリーにも緊迫感があって、乗ってきたところで お終い…というむごい作品なのであった。もちろん、キャサリン・ファンなら見て 損はしないと思うのだけれど(^^;

●ツタヤに意見する
 この『女帝キャサリン』の棚の広告文句に「衝撃のハードエロス」 とか「私の魅力に溺れなさい」とかなんとか、過激なコピーを並べて いたけれど、これを見て借りた人はそうとう腰が砕けたと思う(^^;

 確かに、「近衛兵上がりの軍人を愛人としていた」というのは、女帝的には スキャンダラスな事であるけれど、話の基本は「政治的駆け引き」ばっかりで、 しかも最後には、「たとえ愛人が助命嘆願しても政敵は打ち首にする」という 厳しい話で、「どこをどう見てあのコピーを書いたんだろう??」という疑問は募る ばかりである。
 ウケ第一のB級作品とはいえ、ちょっとあんまり実のないコピーじゃないでしょか?


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文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!