映画館がやってきた! |
これまでのシステムでは、パイオニアのDVDプレイヤーDVL-909のコンポーネント出力を SONYの液晶プロジェクターVPL-VW10HTに入れて投影していた。 試しにプレイステーション2の絵も見たが、DVL-909とはほとんど変わらない印象。 909の方が多少絵に細工を感じるという程度で、DVDに記録された情報を掘り起こす本質的 な実力は僅差と感じた。ひとことで言えば、「階調と解像度の点でもう少しキリッとした 画が欲しいな」というレベル。
SONYの最新のDVDプレイヤーDVP-S9000ESの売りは多い。画質についてだけ言っても、
「プログレッシブ出力」背景ノイズ除去を行う「動き適応型FNR(Field Noise Reduction)」
ブロックノイズ検出を行いノイズの境界を目立たなくする「BNR(Block Noise Reduction)」
業界初の「12bit54MHzビデオD/Aコンバーター」などがある。
だが、とりあえず全てのスペックを忘れて接続して最初に出た絵を見た第一声は「これは、映画だ!」
まずS9000ESの絵には「空気感がある」。
プロジェクターのシャープネスは最小、
入力されたままの絵を出す状態。一切の細工、強調をしない状態でS9000ESが出す絵は
画面の中でシャープなピントを結ぶ主題から滑らかにボケていく遠景の柔らかな
画像までを緻密に再現する。
それは、撮影に使われたレンズの個性まで感じさせるような忠実度だ。
『フィフス・エレメント』のジャンプ・シーンは今まで感じなかったほどの
高さが出るし、どことなくビデオっぽい画調の『タイタニック』も、初めて
「映画らしい」と感じたのは強調感の無い自然な輪郭がフィルムに焼き付けられた
空気感を再現するからだろう。
もうひとつ劇的に変わったのは「暗部にノイズが乗らない」ということ。
今までは大面積の暗部に粒子がちらつくようなノイズが、いかにも電気信号的
で『恋におちたシェイクスピア』の夜のテムズ川を進むゴンドラ
のシーンのように真っ暗けの中に何か写っているような画面はザワザワしてとても
汚かったのが、S9000ESでは嘘のようにしっとりと落ち着いている。
また、『ターザン』のオス・ゴリラ
の毛皮の暗い色もなんだかザラザラしていたのが、すっかり滑らかになり、まるで
プロジェクターの暗部階調の表現力が向上したかのように見える。
これは、S9000ESの各種ノイズ・リダクション機能を全てoffにした状態で、
それでも圧倒的にSN比の良い絵が得られるということだ。
空気感と階調表現、おそらくこれは12bit/54MHzの映像DACの能力と、
それを支える電源や筐体の基礎的な質の高さがもたらしているものだと
思われる。
DVP-S9000ESによって初めて、DVDに圧縮された映画が本当に解凍された
という想いがわき上がって来た。
FL管まわりの表示も美しい。電源ON/OFFの時はじわっと点灯/消灯する
のもちょっと良い。
消灯/輝度低減モードでは、FL管以外にLED類もすべて輝度低下する。
アクリルパネルに埋め込まれたインジケータ類に書かれた文字は、 鏡のような仕上げのために見にくいが、どうせ文字など見ないという ことは言えるか(^^;? ディスクを入れていないとき、SACDの ロゴマークが点灯しているのが美しい。なんだかアピールしている(笑)
●不便なところ
プロジェクターのリモコンが、部屋中どちらを向いていても
動くのに対して、S9000ESはちゃんと狙わないと動かない。
どうも、あまりにもピカピカに輝くフロントパネルのガラス面
で全反射を起こしているのではないかという気がする。S9000ESの
リモコンでアンプの音量を操作すると、壁面からの
反射でも動作するくらいリモコンの出力は高いので(^^;
メニューの操作は、ちょっと機能が多いために目的の機能に
たどり着くまでに押すボタンの回数は多い。
●フィルム素材
まず、2-3フラグのあるソフトで綺麗に表示されるのは当たり前。
ビクターのDVDのように2-3フラグが頻繁に誤っているソフト
(例:『ロスト・イン・スペース』など)では、フラグが誤っている
ポイントでこの"FILM"ランプが消灯し、約1フレームだけ、
「すだれ画面」が見えて即座に通常再生に復帰する。ランプは
しばらく消えていたり即座に復帰したりするが、画面の方は
気付くかどうかギリギリの線くらいで破綻せずに表示している。
他社にはこのようなDVDではへろへろの表示になってしまう
機械もあるようなので、その点は信頼感があると言える。
この辺が「ファースト」なのか?
色々なDVDを見ていると、2-3フラグが頻繁に誤っているソフトは
かなり多い。ビクターを筆頭に、ヘラルドもかなりのものだし、
FOXもしばしば誤動作している。speもチャプターの境界で必ず
フラグが落ちる。
フラグが誤っていると、S9000ESはかなりの確率でこれを救うと
いっても、有る程度変換の誤動作は発生する。今後プログレ
対応機器の普及に対応してソフト側が丁寧な仕事をしてくれる
のを期待するしか無さそうだ。
字幕のすだれ現象は起きる。これもソフト側で設定されている 表示タイミングの問題だから将来は治るのか…?
●ビデオ素材
ビデオ素材のプログレッシブ出力についてはDRC-Pとほぼ
遜色なしか。ただし、VPL-VW10HTに接続するならインタレースで
入れてDRCx4で表示する方がいいのは間違いない。
インタレース/プログレの切り替えはメニューから出来るが
若干色味が変化するのは惜しいところ。それぞれ専用のDACを
通しているので、難しいのかも知れないけれど。
DVDからものすごくシャープで素直な信号が出力されているのは、
プロジェクターの画素変換無しのスルーモードで確認できる。
こうなると、問題はプロジェクターの画素変換能力ということ
になるが、100インチクラスのスクリーンでは、どう変換しても
ソースの解像度は約3mm角/ドットとなるので、絵柄に
よっては、もとがVGA相当の解像度しかないのを感じてしまう。
VW10HTの場合拡大率は、SQで約1.5倍、LBで約2倍と切りの
良い数字なので画素変換も多少は有利だと思うが、DRCx4モードが
存在しない画素を推測で補完してしまう絶妙な緻密さと
比較すると、かなわない。
スルーモードでは、ディスクに入っている情報を直接
確認できるわけだが、DVDに収録された解像度のチャートは
DVDの解像度の限界以上ではその細線がくっつきあって薄く
なったりしてしまうのが本当だが、DRCx4モードは推測で
元の細線を再現してしまう凄さがある参照:[VPL-VW10HTのモード別解像度比較]が、プログレッシブ
入力ではそういう曲芸的な再現は出来ない。
従って、VW10HTをはじめとしたDRCx4モードを搭載した
ディスプレイでは、インタレース出力も積極的に使用していくのが
総合的に高画質を得る使いこなしと言えると思う。
色再現などについては、先代よりかなり黒が沈み引き締まった
絵になっているが、そのためにプロジェクターの再調整も必要だった。
最暗部からハイライトまで、色の乗り方は安定しており、とても綺麗。
プロジェクターの追い込みがいもあるというものだ。
先代は静止画を表示しても暗部にざわざわした感じがあった
ものだが、そのような不安定感は一切無い。
このような色ズレを起こすDVDは極めて希だが、テレシネの段階から
コンポーネント信号でマスターを作っていればあり得ないことなので、
今後リリースされる作品では減っていくのかな? だいたい、これが
商品になること自体が不思議なのだが>JVC
●黒セットアップ
米国NTSC仕様のディスプレイに対応するように、黒レベルを上げる機能が付いている。
が、この機能はインタレースにだけ働く。
ということは、米国でもプログレッシブ信号にはセットアップレベルが付いていないのだな。
●ガンマ調整機能
もう一つの目玉は、ガンマの調整機能。使いこなせれば
コントラスト感の良くないソフトもかなり救済できそう。
設定は下記のような数値の列を+/-する事で行う。
MIN(固定)-32-64-96-128-160-192-224-MAX(固定)
●設定のメモリー機能
各種画質調整をディスクごとに300枚まで記憶できるので、
今までのようにディスクごとにプロジェクターをいじる必要が
無くなりそうなのが嬉しい。
調整した項目は、ディスクを抜くときに記憶される。無調整のディスクは
直前に使用していたディスクの設定を引き継ぐ。
設定はディスクに対するもの以外に本体に5種類設定できる。
ゲイン | バイアス | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
No | R | G | B | R | G | B | |
高 | 193 | 102 | 131 | 116 | 109 | 143 | プリセット |
1 | 248 | 69 | 121 | 78 | 62 | 94 | TVに近い色を狙った設定 |
2 | 209 | 72 | 171 | 98 | 71 | 99 | カスタム高、タイタニックなど |
3 | 248 | 76 | 174 | 73 | 62 | 99 | カスタム中 |
4 | 253 | 64 | 169 | 69 | 63 | 99 | カスタム低、恋におちたシェイクスピアなど |
1 | 235 | 76 | 149 | 104 | 98 | 128 | iTVに近い色、グランブルー、BW作品など |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2 | 253 | 69 | 178 | 96 | 75 | 94 | iカスタム低、恋におちたシェイクスピアなど |
3 | 232 | 82 | 217 | 107 | 91 | 109 | pカスタム高、タイタニックなど |
4 | 255 | 64 | 167 | 104 | 91 | 109 | pカスタム低、恋におちたシェイクスピアなど |
高 | 193 | 102 | 131 | 116 | 109 | 143 | プリセット |
No | R | G | B | R | G | B | |
ゲイン | バイアス |
DVL-909用の設定のままだと、黒が沈み暗部のカラーバランスも違う。
DVP-S9000ESのコンポーネント出力のi/pでも微妙にバランスが異なる
(プロジェクターの受け側のi/pの感度の特性が違うのかも知れないが、
どちらが、かは分からない)
「暗部のざわざわノイズが無くなって、暗部までしっかり見たくなった」ために
シビアに黒レベルを設定する必要もあると言える。
しかし、全黒スレスレの情報まで見える設定では場面によっては
「黒が締まらない」ようにも見えるため、液晶プロジェクターではある程度の
割り切りをしてローレベルを切ることも必要かと思う。
しばらく試行錯誤の結果、ゲインは従来とあまり変わらず、黒レベルの
バランスが違う設定が出来上がった。
i/pでは、黒レベルの平均値は違うものの、RGBのバランスは僅差なので、
すりあわせれば両方に使える値が作れるかも知れない。
「プレイヤー側の送り出し能力が上がった分だけ、暗部再現に欲が出て、結果 液晶プロジェクターの暗部再現の限界が気になるようになった」と言えそう。 今まで黒スレスレの領域はノイズに埋もれて、捨ててしまっても惜しくなかった わけだが、この再現性を見てしまうと今後のシステムアップに対する意欲も わいてくると言うもの…。
●その他プロジェクタのこと
・プログレッシブ入力には、黒伸張が無効
項目 | S9000 | DVL909 | 差平均 | |
---|---|---|---|---|
出画 | タイタニック | 11.2 | 19.2 | 11.1 |
アポロ13 | 11.8 | 27.0 | ||
ターミネーター2 | 12.5 | 22.5 | ||
レイヤー0→1 | タイタニック | 0.8 | 1.5 | 1.6 |
アポロ13 | 0.? | 2.2 | ||
ターミネーター2 | 2.2 | 4.5 | ||
本編1→メニュー | タイタニック | 2.0 | 3.0 | 0.9 |
アポロ13 | 1.6 | 2.6 | ||
ターミネーター2 | 1.4 | 2.2 | ||
本編2→メニュー | タイタニック | 2.2 | 5.0 | 2.3 |
アポロ13 | 1.8 | 3.5 | ||
ターミネーター2 | 1.7 | 4.0 |
●レイヤー0→1(二層の切り替え)
タイタニックでは船長がしゃべり終わって静止した瞬間で切り替わるので、どちらにしてもあまり
気にならない。
アポロ13は、暗転して切り替えにはいるため、S9000では全く気にならない。909は何故か
薄明るい画面が残った状態で2.2秒も掛かるので気になる。
ターミネーターは、他と盤の方式が違い最外周から最内周に戻って切り替わるため、
ピックアップが思い切り移動する時間を必要とするため、遅い。
いずれにしても、DVP-S9000ESの面切り替え速度だと、ほとんどのディスクで
切り替えは気にならない。例外は『マトリックス』のようにシーンの境目に
大きな音が入っているようなディスクで、これは、実際の切り替え時間は
速いのだが「ぷちっ」という感じで切り替わる。
●本編1→メニュー(チャプター1からメニュー)
ディスク上でメニューのある位置に近いチャプターからのメニュー呼び出しなので、
ピックアップの移動はほとんど無い。
タイタニックだけちょっと遅いのは、何か処理をしているのか?
●本編2→メニュー(二層切り替え直前のチャプター(最外周)からメニュー)
ピックアップのシークを伴うメニュー呼び出し。
上の結果との差がシークタイムだと思って良いので、S9000は、シークに0.3秒
ほどしか掛からないのが分かる。速い。909は2秒近く掛かるのではっきり
「しゅい〜ん」という移動音が聞こえるくらい。待たされる。
ちなみに、ディスクによってはメニューデータをディスクの中間地点に置いて
シークタイムを短くするように工夫している物も多いようだ。
全体に、DVP-S9000ESはサクサク反応して快適である。
●手順
電源オフ(スタンバイ)状態からリモコン操作[タイトル][クリア][電源]
●内容は
0.Syscon Diagnosis (システム・コンポーネント診断)
1.Drive Auto Adjustment
2.Drive Manual Operation
3.Mecha Aging
4.Emergency History (異常の履歴、レーザー使用時間)
5.Version Information (バージョン情報)
6.Video Level Adj.
7.Prog Level Adj.
[数字ボタン][決定]で各モードの実行。
[リターン]で戻る
[電源]で終了
ちなみにうちの機械のバージョンは1.301でした。
最新バージョンは1.401らしいです(2000.11.18)
初期不良対象品は 2000.11.20 以前の物だそうです
※最新バージョンは1.601らしいです(2000.12.22)
DVL-909 S出力 | DVP-S9000ES インタレース | DVP-S9000ES プログレッシブ |
文:唐澤 清彦 | 映画館がやってきた! |