デジタルシネマサウンド

〜 TA-V88ESのサラウンド効果を効く 〜

 さて、いよいよSONYのAVアンプの目玉機能『デジタルシネマサウンド』の巻き
です。

●映画館音響の特徴

 ソフトに入っている音を再生するとき、最終的には  ■L  ■C  ■R スピーカーから出た音が鳴り響く空間の問題に当たり  ■SW ます。簡単に言えば、「劇場は広い」ことと「リヤ    スピーカーが沢山ある」ことが、家庭での再生とは   ■LS    ■RS 決定的な違いです。                 ■LS    ■RS                            ■LS  ■RS  右図のように、劇場ではサラウンドチャンネルの音 を複数のスピーカーから出しています。  また、映画は音楽ホールと違って、残響が短くなる ように設計されています。これは、映画では「必要な残響は元々のサウンド トラックに電気的に入れておく」という約束のためです。  もし、音楽用の響きの良いホールで映画を上映したとすると、砂漠のど真ん中 や、宇宙空間の物音にまで豊かな残響が付いて不自然なことになるでしょう。

●デジタルシネマサウンドとは

 「デジタルシネマサウンド」とは、SONYのAVアンプなどに搭載されている サラウンド技術の総称で、上記のような映画館の音響をシミュレートします。  各社から色々なサラウンド機能を持ったAVアンプが出ていますが、旧来からの いわゆる「デジタル・リバーブ」による残響付加では、広がり感は生まれるもの の、不自然になることもあるのは、想像できると思います。  そこで、デジタルシネマサウンドでは、 「ハリウッドの映画のダビングステージの音響を再現する」モード(シネマスタ ジオ)と、「仮想スピーカーを創出する」モード(バーチャル3D)の二つを目玉 にしています。

●シネマスタジオモード

(ハリウッドの映画のダビングステージの音響を再現) [解説]  ダビングステージというのは、映画製作の中で映像に効果音などを付けて音声 を仕上げる作業をするための、実際の映画館の形をしたスタジオです。  要するに、このスタジオの音響特性を再現すれば、エンジニアが作業の時に聞 いていた音にもっとも近いはずという理屈です。 [調整]  さて、これをどう使いこなすかというと、単に効果の強弱の設定だけなのです が、もともと残響の少ない映画館のシミュレーションなので、最大にしても大し た変化はありません(^^;  もともと、わが家のスピーカーのセッティングなどの基本が「シャープに」を 求めたものなので、もともとの映画の音を聞くということを考えると、ほんの少 しだけ効果をかけたときの微妙に空間が和らいだような感じがこのモードの本来 の効果のようです。  少ししか変化がないからといって、最大にしたりすると、ただ音がぼやけるだ けで、ボリューム感は出ますが、方向感が損なわれます。

●バーチャル3Dモード

(仮想スピーカーを創出する) [解説]  その名の通り、存在しないスピーカーを作る機能。これは面白い(^^)  バーチャル・マルチ・リヤは、映画館のようにリヤ ■L ■C ■R スピーカーがたくさんある状態を作り出します。 →                          □   □                          □ 人 □ ■L ■C ■R  ← バーチャル・リヤ・シフトは   □   □         部屋の奥行きが無くて、スピー   LS■ ■RS ■LS人 ■RS  カーがリスナーの横にしか置け         ない場合にも、後ろから音が聞  □ □    こえるようにします。                          ■L ■C ■  バーチャル・エンハンス・サラウンドは、リヤ → スピーカーが無くても後ろから音が聞こえるよう     人 にします。                    □   □ [調整]  わが家のシステムでは全てのスピーカーがあるので、「マルチ・リヤ」モード を主に使いますが、これもポイントは、控えめに効果をかけると言うことでしょ う。  おそらく、映画の種類によってもこれらの効果の量は変えられるべきものだろ うと思います。  面白いと言ったら、フロントスピーカーだけでサラウンドしてしまう、「バー チャル・エンハンス・サラウンド」でしょう。  他にもフロントだけでサラウンドさせるというふれこみの機能は色々なメー カーから出ていますが、これは「本当に後ろにスピーカーがある感じ」がします。 ちょっと驚愕しました(^^;;  しかも、音はフロントスピーカーのコピーなので、下手にちゃちなリヤスピー カーを繋ぐくらいならこっちの方がいいかと思わせるほど。  「サラウンドは体験したいけれど、リヤスピーカーまでは置き場がない」とい う人は、ぜひこの機能を体験してみると良いと思います。                 ----*----  さて、サラウンド関係の調整をしてみて思ったのは「ダイレクトの音」が 迫力があって結構良い。ということ。  なんだか身もフタもない結論ですが、空間の広がりよりリアルな定位を求める なら、ダイレクトな音が一番良いのはあきらかで、そこに少しだけ効果を効かせ てやることで、広がりを感じさせることが出来るということでしょう。いずれに せよ、微妙なものです。  映画館が本来「残響が少ない」ことを基本として設計されているからには、 そういう結果になるのでしょう。  これを突き詰めて考えると、AVアンプによる「残響付加」をあれこれ考えるよ りも、部屋の中の「残響防止」に力を注いだほうが効果があるのではないかと思 います。鉄筋コンクリートのマンションなんてものは良く響きますからね。  その上で、各種のサラウンド機能を効かせれば、ぐっと良くなるんじゃないか と思います。  なんだか結局問題はピュアオーディオの世界に立ち戻ったという感じですね。

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