ドルビー・デジタルの基礎知識


 映画館の音響を自宅で再現したい。ということで、雑誌やカタログを毎日毎日
読んで勉強しました。今回はそのお勉強の成果から。
 「ドルビーデジタルって何だ」というお話です。

●映画館の音響を家庭に

 普通のオーディオがいわゆる「ステレオ」で、二つのスピーカーを使って音に 広がりを出しているのはご存じのことでしょう。  映画館ではたくさんのスピーカーを使うことによって、音に囲まれる雰囲気を 作り出します。家庭でTVを見るのでは絶対に得られない臨場感「そこにいる感覚」 を得るために、画面のサイズだけでなく「映画館の音響」が大切であることは、 映画館に行ったことのある人なら誰でもイメージすることができるでしょう。  TVでは聞くことのできない映画館の音。そのためのキーワードが、重低音と サラウンドなのです。

●重低音

 オーディオ好きの人ならば、TVの音声をステレオのスピーカーからも 出せるようにしている人は結構多いのではないかと思います。  一方、TVのスピーカーの低音に関する一般的水準は100Hz前後止まりじゃない かと思います。これじゃ中低音止まり。普通のオケの音を鳴らすだけでも50Hzは 欲しいところです。  たとえサラウンドでなくても、TVの音声出力をスーパーウーファー(または サブ・ウーファー(=SW))に繋ぐことにより、劇的なリアリティーが生まれます。  安いSWなら、3万円程度から有り、TVの音を良くしたい人には絶大なコスト パフォーマンスを持っています。

●サラウンド

 昔の映画や比較的最近のものでもアニメだとモノラルが多いですが、それが ステレオになり、サラウンドになり、そのサラウンドのチャンネル数が増えて 現在は、ドルビーデジタル方式に代表される、5チャンネル再生が主流です。  スピーカーは前後左右+センター(台詞用)これに重低音専用チャンネルも 加わります。  ステレオ再生と、サラウンド再生と何が違うかと言えば、露骨に前から後ろに 音が駆け抜ける効果もありますが、何となく周囲の音がする、つまり「雰囲気」 が生まれることではないかと思います。  けっしてアクション映画の為だけのものではないと言うわけです。  サラウンドがあれば、画面の外にも気配が生じます。つまり、客観的に眺めて いた画面の中に入っていく事が出来ると言うことです。

●ドルビーデジタルの基礎知識

 では、最新のサラウンド方式である「DOLBYデジタル」とは。  これは、最近の映画で普及しているサラウンドの形式で、DVDの標準音声 フォーマットでもあります。レーザーディスクでは、以前からある「ドルビー サラウンド(プロ・ロジック)」という形式に加えて、数年前からやはりDOLBY デジタルによる作品が多数発売されるようになってきました。  ドルビーデジタルはその名の通りデジタル記録で、DVDはそもそもデジタル 記録ですが、LDは、アナログ音声トラックを一つつぶしてそこに入れています。  ビデオカセットでは、こういう芸当が使えないので、今も「ドルビーサラウン ド(プロ・ロジック)」のみです。  DOLBYデジタルは、従来のドルビーサラウンドと何が違うかというと、  ・ドルビーサラウンド … 左右(L/R)、中央(C)、効果音(S)の4チャンネル   ■L ■C ■R  をアナログ的に2チャンネルにまとめたもので、効果音は           モノラルで、周波数レンジにも制限がある。   ■S ■S   実際、この方式によるサラウンドを単純に再生すると、           効果音はなんとなく後ろから聞こえますが、後ろだけから           音がする状態というのは作れません。たくさんスピーカー           がある割には、制約があるのです。  ・ドルビーデジタル … 左右(L/R)、中央(C)、効果音の左右(Ls/Rs)、   ■L ■C ■R   重低音専用チャンネル(SW)の6チャンネルをデジタルで        ■SW 圧縮して収める規格で、効果音もステレオになり、           5チャンネルすべてCDと同等の周波数レンジがあります。   ■Ls ■Rs  重低音専用チャンネルがあるのも特徴で、このチャン           ネルは120Hzまでの低音専用なのでこれを0.1チャンネルと     ↑     表現し"5.1ch"と呼びます。  スピーカーの配置 低音が独立していることで、他のスピーカーに負担をか           けずに連続的な重低音再生ができます。(迫力の点ばかりで           なく、連続的な重低音はとても電気を食うので、これを切           り離すことで他のチャンネルの音質も向上するようです)  なにより重要なことは、この方式が代表的な「劇場用音声」と同じ方式である ことでしょう。  残念なことに、日本の映画館の音響は、特に古い館では満足とは言い難く、 (方式ばかりでなく設備の問題)家庭でうまくドルビー・デジタルを再生した方が 迫力がある。ということも冗談でなくあり得ると思います。  ちなみに、雑誌の映画館リストなどで[D] [SR] [SRD] [SDDS] [DTS] [THX] などという記号が書いてありますが、[SRD]というのが、ドルビーサラウンド のことです。  小さくて古い館は[D][SR]しか無いところがありますが、この二種類しかない 館ではあまり、ド迫力は味わえないと言うことになりますね。

●ドルビーデジタルに必要な機材

 以上の音響を実現するためには、  ・対応するLD/DVDプレイヤー  ・フロントスピーカー(L/R)  ・センタースピーカー(C) 主にセリフを再生  ・リアスピーカー (Ls/Rs)  ・サブウーファー (SW) 主に爆発音などの重低音を再生  ・対応5.1チャンネルアンプ  が必要です。  アンプはこの中でもかなり重要です。映画館と同じ音を出しても、入れ物 (部屋の空間)の容積が全く違うので、そのままでは同じ響きを得ることは出来 ません。そのためにアンプには様々な音を加工する仕組みが仕掛けられている のです。

●センタースピーカーの重要性

 ステレオは2本のスピーカーで再生できるのに、何故センタースピーカーが 必要なのか?  これは、主にサービスエリアの問題と思って良いと思います。  理想的なステレオ再生は、「スピーカーを底辺とする二等辺三角形の頂点で 聴く場合」ですが、一人で聴くとき以外、そんなことは実現不可能です。  そこで、センターに物理的にスピーカーを追加することで、部屋のどこで聴い ても、台詞は画面の中から聞こえるようになります。TVサイズくらいなら別に気 にならないかも知れませんが、大画面再生で左右のスピーカーが離れると、これ は効果てきめんです。  また、台詞が聞き易いように、独立して音質調節できると言うことも上げられ ます。  残響を付加する機能を持ったAVアンプの場合は、効果音は響かせながら、 台詞だけは残響を付けずに、明瞭に聴かせるという技も有ります。

次回は「映画の音声方式」です
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