エックレス第二楽章

94年4月号執筆

 皆さん今日は、お元気ですか、エックレスのソナタは思うように弾けたでしょうか、音程、フィンガリング、ビヴラートの仕事をする左手、音楽的表現を表す右手、リラックスした筋肉、冷静に判断して命令を下す頭脳、何度も繰り返して練習する努力、喜怒哀楽を素直に音楽的に感じるハート、これらの条件を満たして初めて人に伝わる音楽に完成していくと思います。上手く弾けないといって現時点であきらめてはなりません。上達するために一番大切なことは、いつまでもコントラバスを弾き続ける情熱です。

 さて今回は、前回の一楽章に続き、二楽章Allegro con spiritoに進みましょう。目標は、1楽章と対照的に軽快な3拍子に仕上げることです。全体にスピッカート奏法だと思ってください。しかし音楽の流れで当然そうでない場面もつくります。@の和音は、それぞれG とB 、DとGに分けて二重音ずつ勢いよく「ジャ、ジャン」と弾くと、うまく鳴らせます。Aからはスピッカートでなく少しテヌート的に弾き、最初の男性的な二小節に対して女性的にすると聞き栄えするでしょう。Bもフォルテがピアノになっただけで同じように弾きますが、Aのフォルテよりエレガントに仕上げます。Cから少しずつテヌートぎみにクレッシェンドします。Dのトリルは付点四分音符長さ分正確に入れて、次の八分音符をEのアフタクトに感じてリズムがずれないように注意しましょう。Eの左手の形は親指クローズポジション(短三度)ですが親指がFisを押さえて3指がAです。Fは最初と同じように勢いよく重音を弾き出します。Gの1、2、3拍の頭の16分音符は少し強調してみましょう。Hの重音はFisだけを4指で押さえてD,Aはそれぞれオープン線を鳴らしてみましょう。最後の盛り上がりにふさわしい迫力が引き出せます。では、来月までこのソナタの2楽章を楽しんでください。

【コントラバスミニ通信】

2月2日から9日まで私の第二の故郷ウイーンに里帰りしてきました。大きな目的は2つで、1つはウイーンフィルの親友ミラン・サガト氏からコントラバスを譲ってもらうことでした。ウイーンにつくまでは、ウイーンの名器シュタルマンを買うつもりでしたが、去年の暮れに氏が手に入れた完璧な状態のイタリアの名器フィオリーニを見せられ、その美しさに一目惚れをしてしまった私は、後先考えずに、いやがる親を振りきって電撃結婚してしまいました。(写真1)が悲しむ親サガト氏と、今は私の新妻フィオリーニです。

第二の目的は、恩師シュトライヒャー教授のお見舞いにいくことです。去年の暮れに大手術をされたからです。心配して行ってみると、なんのこともない、いつものパワフルな勢いで玄関から迎え入れていただき、ほんの2時間の間でしたが、山のように沢山な話が飛び出しました。手術をして10日後にオーケストラをバックにコンチェルトを弾き、アンコールに「くまんばち」まで独奏したとかで、話を聞いているだけでやはり先生は人間ではなくコンバス惑星のどこかからきた宇宙人だと思いました。もうすぐ74歳になられる先生ですが、シューベルトの「アルペジオーネ」や、シューマンの「幻想小曲集」のレコーディングに燃えておられました。(写真2)は先生のお宅でウイーンの愛器レーンベック片手に話が止まらないシュトライヒャー教授と呆気にとられている筆者長谷川です。

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