ディタースドルフ

「コントラバスとヴィオラの為のコンチェルタンテ」より

第2・3楽章

96"4月号原稿

皆さん今日は、お元気ですか?

 ディッタースドルフの「コントラバスとヴィオラの為のコンチェルタンテ」の第1楽章とカデンツは、如何でしたでしょうか?

今月は、第2楽章Andantino・第3楽章Minuetへ進みましょう。

 市販の楽譜の第2楽章にも、当然ピアノ伴奏譜が付いていますが、この楽章は、伴奏無しで、コントラバスとヴィオラだけの二重奏で演奏することが多いです。

 それだけ、この楽章の完成度が高いとも言えます。私自身もこの曲中で、2楽章が特に好きです。2楽章の最初は、ヴィオラのメロディーに対しコントラバスが音階、アルページョ的進行で、対旋律を弾きます。この響きが、一般的なヴァイオリンとチェロなど他の楽器では出せない、ソフトで、優雅な、落ちついた雰囲気をかもし出し、この曲ならではの大きな魅力になっています。

 この楽章の奏法のポイントとしては、まず、右手が重要です。

弓を指板よりで、圧力をかけ過ぎないで、弓の量を多めに使って弾くと、柔らかい響きが生まれます。この響きを持続させなくてはなりません。その為には、右手の弓の返しを響きの中ですることです。

つまり、右肩から腕全体で一定の反復運動をして、16分音符の連続するスラーを、8分音符にテヌートが付いている連続した音系と思って弾けば、結果として綺麗にフレーズがつながって行くでしょう。

 次に、左手の運指、移弦、ポジション移動時に、音程を押さえる指が、弦から離れないことす。要するに、響きを持続させるため、その一つ一つの音を弾き終わっても、出来る限り、その指を残して弦を押さえているようにする事。また、その次に続く音を、インテンポの中で、その時あわてて押さえるのでなく、出来る限り前もって準備して押さえる様にすることです。

 11,12小節などの8分音符は、スタッカート・テヌートですから、少し、発音を意識して起こし、その余韻の響きを楽しめれば最高です。16小節から5小節続く2拍目の4分音符は、たっぷり響きを持続させて、スラー・クレッシェンドの架かっている次の小節の1拍目の8分音符に向かって下の音から支えます。

24・25小節の3連譜は、fで基本的には歯切れ良く、しかし、2拍目の裏と1拍目の表の音符にテヌートが付いています、これは、ヴィオラの動きにハーモニーを付けるためですから、響きに注意して下さい。27・28小節は、エコーが返ってくるように、pに一斉に落としましょう。

 後半は、前半より少し明るく活発に始めますが、基本的な奏法は同じです。

そして、この楽章最後2小節の8分音符7つの音を、発音、音程、余韻の響きなどに細心の注意を払って、2楽章を美しく、優雅で印象的に閉じます。

 第3楽章メヌエットは、同じ3拍子でも、ウインナ・ワルツ以前の宮廷舞曲形式です。ですから、テンポはゆっくり目でも、リズムの「強・弱・弱」をはっきり意識して下さい。9小節目から実際にはソロパートとしては、書いてないのですが、ピアノ伴奏の時tuttiの通奏低音として、この譜面に書かれている様に、ピアノの左手の補助的に弾くと響きの幅が広がって楽しいでしょう。

 TRIOから、コントラバスがメロディーです。メヌエットでは通常、トリオに入ると少しテンポを落とします。この曲でもそのパターンで、アウフタクトを歌い込んでから弾き始めましょう。しかし、33小節のアウフタクトは、元のテンポに戻す勢いで、強くはっきり弾き始め、エネルギー感を出します。そして、41小節のアウフタクトで、優雅さを再び出してダ・カーポします。メヌエットでは、通常ダ・カーポで、戻ったときのリピートは、しないでFINEで終わります。ですから、当然、D.Cするまでリピートは省略しないで、全部繰り返して下さい。

 この様な古い形式の舞曲も、譜面上は簡単に見えても、室内楽アンサンブルで、楽しく演奏できるまでには、技術的な事もさることながら、経験、センス、イメージなどの要素がモノを言います。出来れば皆さんも、若い学生の内から素敵な友達を沢山つくって、真の室内楽の楽しみを味わって下さい。

 写真は、わが家に開設した室内楽ホールでの「音楽の館 定期サロンコンサート」が今年の1月に100回を数えた、記念すべきコンサートのもようです。

プログラムは、現在掲載中のディッタースドルフの「コントラバスとヴィオラの為のコンチェルタンテ」、メンデルスゾーンの「ピアノ三重奏曲 第1番」そして休憩の後、シューベルトのピアノ五重奏曲「ます」でした。

出演者は、Vn漆原啓子、Vla山村茂、Vc秋津智承、Kb長谷川悟、Pf岡原慎也と言う日本を代表するソリスト達に恵まれ、とっても楽しい室内楽演奏で、耳の肥えた常連のお客様も、この日は特に満足されていた様子でした。

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