ディタースドルフ

「コントラバスとヴィオラの為のコンチェルタンテ」より

第1楽章とカデンツ

ストリング3月号原稿

 皆さんこんにちは、お元気ですか?

 前々回までガンバの説明とバッハのガンバソナタNo.2を取り上げていました。その時に、コントラバスはヴァイオリンやチェロよりも、ガンバ(ヴィオール)やヴィオラの方が親戚関係にあり、同じルーツを持つ仲間だと説明しました。

 今回、より一層ヴィオール属との親戚付き合いを、深めるために、一般的には非常に珍しい組み合わせの作品、ディタースドルフ作曲、「コントラバスとヴィオラの為のコンチェルタンテ」を取り上げましょう。

 オーケストラや室内楽曲の中で、ヴァイオリンやチェロと違ってあまり目立ってソロやメロディーを弾く機会が少ない我々の為に、特に作曲されたこの作品は、宮廷音楽としても大変興味深く、楽しく、優雅で趣のある曲想です。

本来、室内オーケストラの伴奏で2人が独奏するスタイルが取られます。

 今回は、ピアノ伴奏で、これに、シュトライヒャー教授が技巧的なカデンツを付け加えレコーディングされた貴重な楽譜に、私が易しく運指を付けたものを掲載します。

 第1楽章Allegroの軽快な前奏から始まり、少しゆったりしていて、優雅な感じでコントラバスとヴィオラが語り合います。しかし、カデンツは、技巧的で華やかにエンディングに向けて盛り上げましょう。

 まず、最初の入りの4小節間、左手は多めのヴィブラート、右手のボーイングは伸びのある柔らかい音で、ヴィオラと共に美しいハーモニーを作り出しての挨拶です。

次の6小節間はお互いに自己紹介している感じです。二人で8分音符のスタッカートの感じを揃えましょう。(しっかりしたテンポ感のある歯切れの良い音で!)

27小節目から連続する8分音符の3連音符はヴィオラが4分音符で「カエルの歌」の様なメロディーを弾きますからG音以外の動いている音は少し強調してハーモニーを作ることと、テンポが崩れないように気を付けましょう。勿論クレッシェンド・ディミニエンドも一緒です。

45小節目からの8分音符は、少しテヌート気味に長めです。

57小節の3・4拍目の4分音符は、響きを楽しめればここの雰囲気が出ます。

65小節から69小節に掛けてのクレッシェンドは、タイの掛かっている最後の音に向かってすれば効果的です。84小節からは、又、最初の弾き方を再現して下さい。

 カデンツは少しゆたりしたテンポで始めてみましょう。カデンツの7小節目でインテンポです。14小節目リタルダンドして15小節目はa tempoで立ち上げましょう。

22小節めからは、menoつまり少しテンポを落として情感を出します。29小節2拍目は、かなりゆっくりしたテンポではじめてaccell.(だんだんはやく)してみましょう。

35小節の3拍目はa tempoです。37小節のダブルの音程を決めて華やかに弾ききって第1楽章のエンディングです。どうです?楽譜を眺めてイメージが湧きましたか?

 写真は、1982年の第2回広島国際音楽祭でリサイタルを開いたときに、応援に駆けつけて下さった日本ヴィオラ界のパイオニア小野耕之補氏と、この曲を協演した時の写真です。ホラスタッカートやチゴイネルワイゼンなどヴァイオリンの難曲をいとも簡単にヴィオラで弾いてしまう小野さんには、全くこの曲のヴィオラパートは退屈だったに違い有りません。しかし、当時駆け出しだった私には大変心強く、リサイタルを格調高く盛り上げて下さいました。あれから14年経った今でも、小野さんの人柄がそのまま素晴らしい音色になっていたことが、私の記憶に新しいところです。

 では、今日から貴方も協演して下さる素敵なヴィオラ奏者に巡り会ったとき、いつでもこの曲が演奏できるように準備いたしましょう。次回は2楽章からです。

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