初心忘るべからず!基礎をもう一度!

1996年、新年明けまして、おめでとうございます。

ストリング2月号原稿

皆さんこんにちは、お元気ですか?読者の皆さんは、どんな新年を迎えられたのでしょう。

初詣、祈願、初日の出、海外旅行、寝正月、ファミコン三昧、色々あるでしょうが、恐らく読者の皆さんは、初弾き、初練で、コントラバスに向かい初心表明をされたことでしょう。今年も実り多き一年にしたい思いは皆同じです。

 では、実際に、どんな事をすれば、より多き実りを得ることが出来るでしょうか。よく、「チャンスをにがすな!」「好機到来!」と言いますが、どんな時でも自分自身に、そのチャンスを受け入れる精神的、技術的能力の容積に余裕が無くては、ただ通り去ってしまうだけです。

 人との出会いもそうですね。自分を磨けば磨く程、今まで憧れの存在だった人、或いは、雲の上と思っていた人とも、話せるようになるのですから・・・・。

 それでは、初心に帰って、自分の精神的、技術的能力の容積を本物に近づける為の努力を、今一度見直しながら、基礎勉強を始めましょう。

「その1」(楽器を持つ姿勢)

 なによりも大事なことは、内面的、外面的な楽器を持つ姿勢に無理のないこと、背筋を伸ばして最愛の恋人に礼儀正しく、しかし自分の全てをさらけ出し、お互いが理解し合えるまでトコトン話し合う様に楽器に向かう事です。

 楽器は、写真1・2の様に地面に垂直に立て、(オーケストラなどでコンバスの椅子に座って弾くときは若干手前に倒す)しっかり体に固定しているようにする。

楽器から体が離れないように!

「その2」(弓を持つ手と腕の運弓)

 圧力と脱力は、とても難しく矛盾しているかの様ですが、関節・筋肉を硬直状態にしないで、ある時は、羽のように軽くしなやかに、そしてある時は嵐のように荒ましく、また、岩のように重々しく、腕から・肩・上半身の体重を七色変化自在にコントロールして弓が弦上に乗ることです。

 特に難しいのは、岩のように重々しく、腕から・肩・上半身の体重を乗せることです。この感覚が解るまで、写真3モ4のように弓の毛が駒側に向かう角度をキープして、駒のすぐ上で、腕の重みが指板の切れ目側から駒に向かって落ちる様に上半身をコントロールして圧力を作り、ffのロングトーン練習を続けましょう。

 この練習を続けることによって色々な音色の元になる、楽器の響きそのものを、いつのまにか、理屈でなく体で覚えていくことでしょう。

 また、これと正反対の、羽のように軽く自由に弓を扱うことも覚えましょう。弓を指板寄りに来るよう、腕を曲げるのではなく、腕、背筋を伸ばして腰でコントロールして、上半身や腕の重みをかけないで、弓の何グラムかの重みだけを弦上に乗せて、弓の弾く場所を決めます。弓の毛3本位しか弦に触れていないような感覚の軽さです。勿論どこの関節にも力は入りません。

「その3」(ポジションの音程を作る左手)

まず、写真5・6の様に、ネックや、弦に対して直角に腕や指が向かいます。そして、どんなffでもppの音でもその音程を押さえている指先には、可成りの体重が乗っていなくては綺麗な楽器の振動が得られません。

 左腕・左手首の無駄な力を無くして、音程を押さえる指先のポイントだけに圧力がかかる様、常に心がけて下さい。

 指板と押さえている弦を横から見て、隙間が見えるようでは、話になりません。練習を続けて左手の指先だけで、自分の体重を支えられる様になるまで鍛えましょう。

 「初心忘るべからず」基本のワザをしっかり、しかも、奥深いところで、一つでも多くマスターする事に、読者の皆さんと一緒に精進出来ることは、私自身とても幸せです。!

 今回、なぜまた基本を書いたかと言うと、勿論大事なことだからですが、実は、昨年の暮れに音楽大学や、アマチュア・オーケストラの定期演奏会にお手伝いにいった時、みんなの音楽に対する純粋な喜び、先輩、師匠に対する謙虚な態度、そして、そのコントラバスに対する熱意が、本当に素敵だと思ったのです。

 しかし、それだけに、学生たちは、気持ちが先に走って、身体(技術)が付いてきてくれない葛藤と焦りを持って演奏しているかのように感じました。

 そのことを克服するためには、やはり、基礎がしっかりしていて、その上に、正しい練習方法を、どれだけ効率よく積み重ねていくか、と言うことからしか問題を解決できないからです。

 才能の差より、努力の差の方が大きく引き離しますよね。とにかく、これからも引き続いて、その日の基礎練習と、目標に向かって、一生懸命頑張って下さい。そうすれば、間違いなく、貴方は必ず上達します。

 一年後、どれだけ上達したか、昨年出会った諸君の演奏をもう一度聞かせてもらえるチャンスがあれば幸せです。そんな、楽しい再会をしたいですね。

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