2劇通信・幕の内タケ第7号 1997年(平成9年)6月16日
作者 四夜原 茂インタビュー
「やってもた」のルツボを覗く
四夜原 「流された」「騙された」と来て、今回は「やってもた」。タイトルの意味不明さは増してるけど、内容は濃いよ。なんたって、きよしとむつみの完結編。これまでの謎が、スーっと解けちゃうかもね。
中山 舞台は監獄らしいじやないの?
四夜原 どう君、拘留されたことある?
中山 パトカーの中ならね。
四夜原 交通違反か。それじやダメだ。ところで、監獄ってこちら側の社会から見ると、かなり異質な空間だよね。
中山 窓がとても高いところにあるし、空調は付いてるのかしら?
四夜原 まあ、そうだけど。ポイントはそこに流れてる時間だよ。とある本で見たんだけど、死刑囚と無期囚が居ると、そのそれぞれが生きている時間は、全く連うらしい。明日にも刑が下るかも知れない死刑囚は、張りつめた緊張のなかに生きていて、ある意味でとても充実した時間を過ごす。その一方無期囚は、ボンヤリと弛緩した時間を生きるらしいんだ。とすると、死刑囚のきよしは、時間をどんなに感じるだろうね?
中山 充実してるから、短くかな。
四夜原 そう。それにこちら側の社会につきもののストレスもあまり感じないから、時間はあっという間、老け込むことを知らない。つまりきよしは、若さを保ったまま、徐々に時間の感覚をマヒさせて行くんだよ。
中山 ほほう。浦島太郎だね。
四夜原 太郎が覗いた世界は、どんなだった?
中山 そりゃパラダイスだよ。ガブガブ飲んで、チヤホヤされて・…・。
四夜原 まあ、パーフェクトなパラダイスは監獄にはないだろうけどね。きよしにとっては居心地のいい世界かも知れない。そこに、いろんな不条理が起こるわけだよ。
中山 ふうん。で、フーテンも囚人ね。ちょっと待ってよ!最終作はバシッとスーツを着させくれるって約東じやないか?
四夜原 あれ、そうだったけ?しかし例のレゲエ頭にスーツが似合うかなあ?
中山 五本も同じ役だと、いい加減キレイな格好をしたくなるもんだよ。
四夜原 わからないけど、スーツはないな。でさあ、浦島太郎って、どうしてああも正直に、箱を開けたんだろう?オレだったら、こりや怪しいと思って、庭に埋めておくね。
中山 やっぱ、手出しちやうよ。ガブガブにチヤホヤと来たら、箱の中はきっとピカピカってね。ひょっとして、きよしも禁断の箱を開け、ドカーンじゃないだろうね?
四夜原 フンフン。やっぱ開けちゃうか・……・。まっ、ちょっと気になっただけさ。