もぐれ小田急線

第24号 1998年12月5日

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第24号 も く じ

政府責任裁定で違法となった小田急高架事業 я實ケ等複合汚染阻止訴訟は37部に係属

 在来線騒音問題は、公害等調整委員会の審理遅延工作や責任裁定を回避するための調停和解工作を進めようとしていた裁定委員会を追い込み、初めて受任限度を明示した責任裁定をようやく7月に勝ち取り、政府がが自らが在来線の騒音被害認定をしました。現実には, 政府が違法と認めた70dBでさえ越える被害が広範に存在し、結局, その被害者に賠償を命ぜざるを得なかったことは極めて大きな意味を持っています。
 しかし、騒音の受忍限度を70dB(デシベル)としたことや被害額の認定を月3000円以下に抑えるなど住民の納得のいかない結果に、被害住民はさらに1次(8月5日)、2次(8月21日)をあわせて139名で騒音等複合汚染阻止訴訟へと闘いの駒を進めました。政府が示した受忍限度の日平均の等価騒音で70dBを昼間は60dB, 夜間は55dBとすることと, 被害補償も1人月3万円と計算、過去10年の責任を問い, 360万円の保証金額を求めています。
 小田急線の高架事業でも、東京都と小田急が東京都条例に基づく環境アセスメントを実施しておりますが、高架完成後の騒音について, このアセスでは「現況の騒音とほぼ同じ程度」と表現し、場所によっては上回る」としています。このアセスでさえ「現況とほぼ同じ程度の騒音か場所によっては上回る」と指摘しており、高架化では違法騒音を是正することができないことがハッキリしてしまったのです。従って、小田急高架事業は騒音問題からいっても違法な事業なのです。
 騒音等複合汚染阻止訴訟は、1次・2次がこのほど東京地裁民事37部に統合されることが決まり、年明け早々にも第1回目の口頭弁論が開かれます。第3次についても追加訴訟として同部に係属されます。

窓が開けられない環境基準の告示で 全国問題化する小田急高架見直し

 小田急問題が私たちの住まいや街のあり方や環境考える普遍的な課題を提起していると私たちはかねてから考えてきたことです。この夏の在来線の騒音を規制する責任裁定の結果と新たな騒音等複合汚染訴訟の提訴によって小田急問題はもはや名実ともにローカルな存在ではなくなりました。
 在来線騒音の問題は国の環境行政の基本にかかわる問題です。しかも鉄道騒音問題は道路騒音問題とも不可分に結びついています。そしてさらに道路騒音問題は大気汚染問題と不可分です。道路騒音で日平均等価騒音60dBを受忍限度とした1995年の国道43号線の最高裁判決が小田急騒音の受忍限度をめぐっての攻防の影の主役であったことは間違いありません。そして国はなんとか国道43号線最高裁判決やこれと連動して広がりを見せる私たちの運動の成果を掘り崩そうと,政府の中央公害対策審議会の騒音部会の環境基準大改悪との連動していたのです。この騒音環境基準改訂は, 環境問題にけっこううるさいはずの大新聞やテレビでもほとんど取り上げられず, 基準改訂にもかかわらず記者への説明も環境庁の根回しで行われなかったという事実がのこりました。しかし、いち早くこれを環境行政の大幅な後退, もしくは環境行政とはいえない, 環境に背を向けた大改悪とみて, 33名の学者・研究者が集って「騒音の海峡基準の改訂に反対する専門家の会」を結成, 直ちに「騒音に係わる環境基準」の改訂に反対する緊急声明を出し, 環境基準改訂の告示が出される前日の9月29日に真鍋環境庁長官に代表者が声明を読み上げ, 「窓を開けられない環境行政の暴挙」を指摘し,中止を求めました。


「騒音に係わる環境基準」の改訂に反対する緊急声明

騒音の環境基準の改訂に反対する専門家の会

 今年(1998年)5月、中央環境審議会は、「騒音の評価手法等の在り方について」と題する環境庁長官からの諮問に対する答申をまとめた。そしてその後、政府はこの答申にもとづいて「騒音に係わる環境基準」を改訂する告示を強行しようとしている。  環境基準は「常に適切な科学的判断が加えられ、必要な改訂がなされなければならない」とされているから、騒音の評価や対策等に関する技術的進歩によって、時宜に適した見直しが行われることは当然のことである。今回の諮問の建前も環境騒音の評価方法の技術的見直しであるとされていた。  しかし実際はそのようなものではなく、今回の基準改訂は、以下に述べる理由から、極めて重大な問題を孕んでいる。これは環境を大切にするという我が国の国民のみならず、世界の諸国民がつちかってきた哲学の放棄であるのみならず、環境行政の根幹を揺るがすものであり、到底看過することができない。  しかも改訂の動機は、第2次大戦後、経験したことのない現在の大不況を環境無視の相も変わらぬ「公共投資」で打開しようという、およそ時代錯誤の打算である。このようなことを許せば、不況打開ができないことはもとより、我が国を取り返しのつかないものにするであろう。  われわれは、国民の健康と生活をまもり、よりよい環境と未来の創造を願う立場から、今回の基準の改訂を到底許容する事ができず、その速やかな中止を強く求めるものである。

1.今回の改訂基準は最高裁の認定した受忍限度をも越える著しく異常なもの

  今回の改訂基準のうち、もっとも問題となるのは幹線道路に面する地域での特例である。ここでの基準は、昼間70dB以下、夜間65dB以下となっており、3年前の1995年に国道43号線訴訟において最高裁が認定し、国などの賠償責任を認めた受忍限度をはるかに越えている。もとより「人の健康を保護しおよび生活環境を保全する上で維持することが望ましい基準」という環境基準の定義を著しく逸脱し、道路公害をとどまるところを知らないものとする。

2.環境の哲学の放棄

 さらに右の基準にかかわらず、同地域では、屋内の騒音が昼間45dB以下、夜間40dB以下を基準とすることができるとなっている。いいかえれば、屋外の騒音がどんなにひどくとも屋内の騒音がこれ以下であれば、生活環境が保全されているとみなすわけである。しかも、この屋内で評価する特例を幹線道路沿いの地域のみでなく、その背後の住宅地域等も拡大して、道路騒音が到達する高層住宅などにも適用するとしている。
 これまでの環境基準は地域の基準であり、当然、屋外値であったから、これは、地域での基準達成という騒音対策の責任を免責し、家屋の防音性能に転嫁させるものであるばかりでなく、いわば「シェルター」の思想であり、環境の哲学の放棄であるから、騒音に係わる環境行政の基本の変更を意味する。

3.他の騒音対策への波及

 環境騒音対策の目標を屋内レベルに置き換えるこのような考え方は、当然、鉄道、航空機などの環境基準、工場、事業所、建設工事、自動車等の騒音の規制の在り方、さらには地方自治体の条令等にも波及するおそれが極めて強い。

4.環境アセスメントの評価基準の決定的緩和

 地域開発における環境アセスメントでは、環境影響を予測し、各種の影響が限度内におさまるよう、開発計画を立てることが求められる。その際、影響評価の指針となるのが騒音の場合は環境基準であるから、幹線道路の屋外レベルが高くても、屋内の基準さえ満たされればよいことになれば、道路開発は容易になるに相違ない。さらに道路のみでなく、鉄道・空港等の開発にも波及することになる。

5.騒音被害の認定への影響

 国道43号線訴訟のみでなく、新幹線や空港の騒音に係わる訴訟においても、加害者側は各種騒音対策の実績を訴えてきた。そのなかで、民家の防音助成が屋外騒音の被害を軽減していると主張してきた。しかし多くの判決では、たとえ屋内の防音がはかられても、生活領域に侵入する屋外騒音のレベルによって、被害の程度を認定している。従って今回の改訂基準が屋内レベルによることを許容することになれば、今後の被害認定の方法にも大きな影響を与えることになる。

6.他の基準への影響

 屋内で暮らせればよいという発想は、大気環境基準にも当然つながる。エアクリーナーをつければ外の空気がどんなに汚れていてもよいということになるからである。水質等についても同様のことが言えるのであり、全ての環境基準を無いに等しいもの、言い換えれば公害の野放しとなり、とりかえしのつかないことになる。

1998年9月29日

騒音の環境基準の改訂に反対する専門家の会呼びかけ人

堂野 達也(元日本弁護士連合会会長)
鈴木 武夫(元国立公衆衛生院院長)
宇沢 弘文(東京大学経済学部名誉教授)
銀林  浩(明治大学経営学部名誉教授)
大谷 幸夫(東京大学工学部名誉教授)
宮本 憲一(立命館大学経済学部教授)
力石 定一(法政大学名誉教授)
淡路 剛久(立教大学法学部教授)
山本 剛夫(京都大学工学部名誉教授)
塚谷 恒雄(京都大学経済学部教授)
原田 正純(熊本大学医学部助教授)
宇井  純(沖縄大学環境学部教授)
寺西 俊一(一橋大学経済学部教授)
永井  進(法政大学経済学部教授)
田村 明弘(横浜国立大学工学部教授)
柴田 徳衛(東京経済大学経済学部名誉教授)
峰岸 壮一(桐朋学園大学教授)
福川 裕一(千葉大学工学部助教授)
岩田 昌征(千葉大学経済学部教授)
岩淵 慶一(立正大学文学部教授)
森田 尚人(中央大学文学部教授)
山田 弘康(横浜国立大学工学部教授)
村田 徳治(循環資源研究所所長)
磯野 弥生(東京経済大学経営学部教授)
熊本 一規(明治学院大学国際学部教授)
高畠 通敏(立教大学法学部教授)
畠山 武道(北海道大学法学部教授)
清水  誠(東京都立大学法学部名誉教授)
磯崎 博司(岩手大学助教授)
井上  真(東京大学助教授)
小原 秀雄(女子栄養大学名誉教授)
加藤 久和(名古屋大学教授)
斉藤  驍(弁護士)


経堂駅舎を広告塔にしたものの…
メドがたたない小田急線高架

 11月1日より小田急線経堂駅の駅舎の一部を立ち上げ、ここに上り線のみ通したことで小田急電鉄は、高架事業の進捗を宣伝しようとやっきになっています。各駅舎にポスターを張り、経堂小学校等からの見学会まで誘導して小学生に作文を書かせ、経堂駅や新宿で展示会の開催を予定するなど、宣伝にこれ努めています。
 上り線を今回通した経堂駅周辺の北側は小田急電鉄が以前から土地を広範に所有しており、比較的早く工事が進んだところです。ちょうど経堂駅が小山のようになっていて駅の手前からのぼり、駅を過ぎるとすぐ降りるという具合ですし、駅舎部分は北側壁面のみ一部急ごしらえの立て看板のような醜悪なオブジェです。
 ところで、小田急線の喜多見・梅丘間の工事の進捗率はどのくらいでしょうか、全体事業の予算執行率で平成9年度末で27%といいますが、これには用地費も含まれますので、実際の工事の進捗率は20%程度にも届きません。小田急事業は複々線連続立体事業ですから、例え、複々線部分を完成させたとしても複々線が通れるわけでもなく、工事としては50%の進捗率に過ぎません。
 都市計画事業としての完成期限は平成11年度末ですが、全くメドがたたないばかりか、喜多見・東北沢間の複々線完成の期限平成16年度も全くの夢物語です。しかも複々線を完成させるには下北沢地区の計画発表と手続きへの着手が不可欠ですが、この地域は以前から地下化でおこなうことを決めているため、経堂工区への影響も考えて発表を延ばし延ばしにしています
。  喜多見・梅丘間の複々線用地には未買収の用地がまだ残されています。違法な高架工事は用地買収の正当性を欠いているため、強制収容も事実上不可能です。早期完成をさせるには、全てのいきさつを捨て経堂工区を地下化へ転換させ下北沢工区と同時施行とするのがなによりもの早道です。地下化は在来線跡地に新たな価値を生むため東京都の数字を使っても、総コスト比較では高架化の三分の一で済むため、やり直してもまだまだ充分採算がとれるのです。


環境の全面崩壊防止を
小田急高架事業と本訴訟の核心

  小田急地下化実現・騒音等複合汚染阻止弁護団団長
斉 藤  驍

 去る8月5日、21日と既に2次にわたり、小田急小田原線の沿線住民(成城学園から代々木上原、約150名)が小田急線の地下化と従前の損害賠償(1月1万円,10 年合計360万円)を小田急を被告として東京地裁に提訴した。
 なお3次が予定されており、原告の数は少なくとも200名を越えるであろう。
 世間ではこの訴訟を騒音等の公害訴訟と考えているが、これに止まるものでは全くない。以下, その所以を明らかにする。

すべてで望ましい地下化
 高架複々線事業は、正しくは昭和44年9月、モータリゼーションが凄まじくなりつつあるときに、建設省運輸省が協定(以下建運協定という)を定めて制度として確立した線増連続立体交差事業という。この事業の最大の特長は、ガソリン税、重量税という道路特定財源から、国が事業の52.5%を補助する代わりに、踏切を解消するだけではなく、必ず道路を新設しなければならないところにある。
 被告のような鉄道事業者の費用負担はわずか7%にすぎず、残りは事業主体となる都道府県と地元の市町村が約2対1の比率で負担することになる(平成4年鉄道事業者の負担が14%に改められた)。ただし国等の公金の負担は原則として在来線の連続立体化に限られることになっていて、線増部分は鉄道事業者の負担ということになっている。
 しかし日本鉄道建設公団法によれば、高架複々線化事業は鉄道の「大改良事業」とされ、運輸大臣の認可をうければ同公団が事業主体となり、用地買収から高架施設の建設まで全て負担して施行し、事業完成後20年割賦で鉄道事業者に譲渡出来るとされている。高架複々線事業はこのように1つの事業であるのに、2つの顔をもっている。
 しかし、被告の立場からすれば事業が完成するまで、運輸大臣の認定さえとれば、在来線の事業費の7%、全体の約3.5%しか負担しなくてよいのである。2つの顔とは、関係自治体の負担を別とすれば、要するに建設省ルートと運輸省ルートの双方から金を引出し、かつ建設優位、道路優先で処理するためにつくられているのである。このためにこの事業は連続立体交差事業として、建設大臣の認可を条件に都道府県が事業主体でなければならないと建運協定で定められ、関係議会、都市計画手続等公の場ではこのように説明され、線増部分について、同公団が事業主体となることは長い間秘匿されてきた。
 被告も今年(1998年)5月、国会と裁判所で追及され、始めてこれを認めざるを得なかった。
 連続立体交差事業であるから、本来高架方式だけでなく、地下方式もある。
 昭和40年代は前述したとおり、事業費は高架方式の方が安かったが、昭和60年代に入ると逆転する。これは地下方式の1つであるシールド方式の進歩が著しかったことと、この方式では在来線の地下を二層二線でトンネルをつくれるため、線増部分の土地の買収を必要としないからである。昭和62年の東京都の積算数字に基づくと、被告の小田急小田原線(梅ケ丘〜喜多見)6.4キロの場合、高架2038億円、地下733億円となり、実に地下は高架の約3分の1ですむのである。  騒音等本件の鉄道公害は、大気汚染を別として、地下にすれば全てなくなるといって過言ではない。地下が高架より環境の点から考えた場合、あらゆる意味で優れていることは、いまでは万人が知っている。ただ、事業費(コスト)が問題ではないかと考えている人はいるし、被告や建設、運輸の官僚達も意識的に強調してきたし、現在もそうである。  しかし事業費の点でも地下が優位であることは先述した通りであり、原告らが行った住民訴訟(平成2年(行ウ)232号等、損害賠償請求事件、被告都知事ほか)の東京地方裁判所民事2部の判決が、昨年2月にこれを認めている。  にもかかわらず、何故被告が、また東京都が大蔵、建設、運輸の役人が高架複々線に固執しているのであろうか。「決めたことだから」とか、「すでに工事が進んでしまっているから」といっているが、これは本当の理由ではない。本当の理由は鉄道と道路の新設(複々線化も鉄道の新設の1つである)を基軸として不動産開発(都市大再開)を行うという先述したこの事業の本質のうちにある。
 先述の今大問題になっている被告の高架複々線事業区間(梅ケ丘〜喜多見、以下 本事業区間という)は駅を除くと4.9キロメートルにすぎないが、このわずかな区間に17本の道路を拡幅し、8本の道路を新設、すなわち計25本の道路をつくって南北に交差させ、さらに「日照のための側道」等と称して線路沿い、すなわち東西に道路を新設し、このなかには幅54メートルの道路もあるのである。
 東京都と被告の説明と自認によれば、(昭和62年当時)高架事業が2400億円とされているが、道路の事業費の全貌はいまだ不透明である。しかし原告らが情報公開で勝ち取った基礎調査の一部などから推認すると、道路事業費は約3000億円となる。用途地域指定、建ぺい率、容積率は道路を基準として定められている。これだけの道路を新設すれば用途地域指定を変え、容積率等を容易に変えることができる。いままで低層の住宅地であったところを一気に高層化できる。すでに本件事業区間の中心である経堂駅周辺に32階建高層ビル計画が公表されている。いわば経堂をミニ新宿西口にしようというわけである。
 これらの再開発事業は少なくとも5000億円を越えると推認されるから、鉄道はわずか6.4キロメートルの区間であるのに、全体の事業費は1兆円を越えるのである。
 高架駅は、高層都市のシンボルであり、高架は道路新設の突破口である。のみならず、高架複々線は線増用地のために多くの人々を立退かせることが必要であるが、これらの人々は立退くところを求めなければならない。25本の道路の場合は延キロ数は少なくとも100キロを越えるから、立退かなければならない人々の数のケタが違うし、移動の範囲も世田谷全域さらにこれを越えて大きく広がる。
 これをあらかじめ予測して土地を買収しておくというのは、ディヴェロッパーの常套手段であり、もとより被告だけが独占出来るものではない。三井不動産、三菱地所、住友不動産等、代表的なところが参画している。

典型的公害にとどまらぬ
 このような再開発を被告のところだけでなく、JRを含めて東京から政令指定都市に至るまで大々的に展開しようとしたのが、昭和50年代の後半から昭和60年大前半を支配した中曾根内閣のアーバンルネッサンスだったのである。しかも被告の高架複々線事業に限定してもこれが完成すればいかなる被害が生じるか。その被害は一言では表現できない深さと広さをもっている。
 長い間暮らしてきた土地と家を離れることはいうまでもなく金銭にかえがたい苦痛である。このことからすれば、本件鉄道事業がこの犠牲を払ってもなおかつやらなければならない公共性があり、選択しうる唯一のものであるなら格別、そうでなければ立ち退き等そのものを被害といわなけれならない。
 また高架鉄道と道路にはさまれる住民の数はその何倍になるかわらない。またいままで低層で比較的閑静な住宅地であったところが、数十階建てのマンションやビルに取り囲まれる人はさらにその何倍にもおよぶ。
 従って本件被害の特長は、なによりもそのすそ野が広いことであり、かつ立ち退きに象徴されるような従前の生活環境の全面的崩壊というその深さなのである。
 今まで公害といえば、水俣病に代表される疾病、光化学スモッグ、大阪空港のような騒音等によるストレス等、その深度は別として、相対的にみれば限局されたフィールドであった。だがいうまでもなくそれだけでも耐えがたい苦痛があったのである。
 それに較べて本件事業の被害はこのような大気汚染、産業廃棄物による疾病等という典型的公害被害に止まらず、今まで享受してきた財産的、精神的、肉体的価値のすべてを失うことにまでおよび、さらに町が町でなくなるという環境の激変は、金銭で代償することができないばかりでなく、原状回復がほとんで不可能であるところから、子々孫々にまで残ることになる。
 本件被害を考える場合には、今述べたことが最も本質的な事柄なのであり、本訴はこれを未然に防ぎ、日本の公共事業を根本的に改めるため提訴されたのである。


違法騒音の小田急は地下に! 道路新設・拡幅と排ガスの街はイヤだ

 私たちは、小田急沿線や街なかに青い幟旗を立てポスターを張る運動を展開しています。メインの文言は「違法騒音の小田急は地下に、道路新設・拡幅と排ガスの街はイヤだ」です。皆で知恵を絞って考えた文言です。ポスターはパソコンで作りカラーコピーしたものをビニール袋に入れて使っています。ご希望の方は事務局に申し出てください。パソコンですので文言も変幻自在、特注品も作ります。「排ガスは環境ホルモンだ。道路拡幅・新設反対」などの注文も若い男性からきています。小田急線高架と道路新設・拡幅、大規模再開発に反対する標語を寄せていただければ幸甚です。


こんな暴挙は許されない
鬼頭季郎裁判長、原告側弁護士等を暴力で排除

   東京鉄道立体整備株式会社への行政支出をめぐる第3セクター住民訴訟控訴審の11月26日の法廷は異様なものでした。予め20名近いガードマンが法定と廊下に配置されものものしい雰囲気の中で法廷が開かれました。開廷と同時に原告代理人の斉藤驍弁護士が裁判の進行と調書問題での追及を始めると、鬼頭季郎裁判長は答える必要がないと答弁。追及が問題の核心に触れてきた段階で、発言制限を行った上、退廷を命じ、ガードマンを使って実力で同弁護士を排除。これに抗議の発言をした木下泰之世田谷区議(同訴訟原告)も同じく実力で排除しました。
 民事裁判で弁護士が言論をもって裁判所および裁判官の対応を厳しく批判したのに対し、退廷命令をなし、弁護士や原告を予め用意したガードマンによって強権排除するという前代未聞の暴力的対応は決して許されることではありません。
 同訴訟控訴審は、昨年の9月から始まりましたが、最初に係属したはずの法廷がいつのまにか別の法廷に変えられ、第1回目の裁判に望んでみると右陪席には認可取り消し訴訟を担当していた佐藤久夫裁判官が座っていました。つまり、高裁は意図的に地裁で最近まで小田急の同種事件を担当した裁判官が高裁に栄転したのを機会に、この事件を担当させようとしたのです。これは三審裁判制度の事実上の無視であり、極めて公正を欠くことから原告代理人の斉藤驍弁護士は異議を申し立てていました。ところがで鬼頭裁判長は法廷での異議申立ての発言を制限。不信に思った代理人が「口頭弁論調書」を取り寄せてみると、異議申立てに関連する事項は一切記載されていないばかりか、発言を制限したことさえ記載されていませんでした。そこで第4回目の口頭弁論でこの事実を追求したところ、紛糾。鬼頭裁判長は事実認定は訂正しましたが、閉廷を宣することもせず, 期日も決めず法廷からかってに逃げ去りました。そのうえ11月26日に一方的に弁論を入れ、今回の事件を引き起こしたのです。
 鬼頭季郎裁判長の対応は極めて奇矯でもあり、裁判官の資格を疑われざるを得ません。法廷の言論を暴力をもって封ずることはファシズムにも通じます。言論とあらゆる制度的対応を通じて対決していくことをここに明らかにしておきます。
 ちなみに同日の法廷で佐藤久夫裁判官は他の裁判官に変えられていました。これは原告側の追及に高等裁判所側が抗しきれなかったものであり、法廷での厳しい追及は効を奏しています。


□□会員便り・・経堂の会員Kさん宅をお訪ねして

 経堂の駅の近くで小田急沿線にお住まいのKさん宅をお訪ねした。庭先に立つと急行電車が通過していく時、地響きがして家が振動している。

Kさん繹^電車の騒音でテレビや電話はまるで聞こえません。殊に夜間の騒音はひどいです。更に千代田線が通ると格別なうるさい音になります。車種が違うんですかね。このうえ4車線も走るようになったらどういうことになるのでしょう。スピードアップされるでしょうからね。

 下りの高架はKさん宅の数メートル先に立とうとしている。上りの高架はすでに完成ずみで、空を遮るようにそびえ立っていた。

Kさん繹^地震があったらわが家はひとたまりもないです。それから高架下は何になるのでしょうか。私たち住人には何も知らされていません。今は駐車場になっていますが、毎日車の排気ガスを吹きつけられて、たまったものではありません。高架ができる以前よりすっかり環境が悪くなってしまいました。


◇11月26日の裁判を傍聴して

 11月26日の東京鉄道立体整備への行政支出取消第三セクター住民訴訟控訴審の異様な法廷については先に紹介しましたが、住民の方も多数傍聴に来られ、この前代未聞の鬼頭裁判長の言動と彼の指示によるガードマンによる暴力をつぶさに見てしまう結果となり、次のような感想を述べておりました。
Aさん^^あれは裁判じゃありません。どんなやりとりがあろうとも、裁判官が事前に警察官みたいな人達を10数人も廊下や傍聴席に配置して、傍聴人にも威圧感を与えるなんて戦時中の恐い時代を思い出しました。
Bさん繹^オウムの裁判じゃあるまいし、環境のことを扱っている内容なのにそちらはどうなったんでしょう。本末転倒です。
Cさん繹^裁判には何年も通いましたが、あんな異様な裁判は初めてです。裁判所のやり方に不信感を持ちました。
Dさん繹^あのやり方が鬼頭裁判長の答えであり、あのやり方しか彼には考えられなかったのでしょう。
Eさん繹^私の身内に裁判官がおりましたので(もう50年も前のことですが)、いま裁判を傍聴に行くとどうしても裁判官の人格的なものに関心がいって、見守っています。失礼ながら鬼頭裁判長のヒステリックな一面見てしまって質が落ちているなと感じました。
Fさん繹^民事の裁判に、それも前から配置を要請してガードマンを置くなんて信じられません。裁判官も公僕なのに密室性が高く, 何か日本で一番保守的な匂いがしました。国民に余り知られていない面、今後は注意深く裁判官の仕事ぶりをチェックする必要があるな繧ニ思いました。

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小田急高架と街づくりを見直す会 会長 中本信幸
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