抗ガン剤「塩酸イリノテカン(CPT-11またはCAMPTO)」について
マウスとヒトにおけるトポイソメラーゼI型の代謝機能の違い

ジョエル・ステルンナイメール



 トポイソメラーゼI型のインヒビターである塩酸イリノテカン(CPT-11またはCAMPTO)が、マウスを使った予備実験において有望な結果を収めたということで、現在その薬を使ってヒトでの臨床試験が行なわれている。この報告の目的は、マウスでの結果をヒトにまで延長して当てはめられそうもないことに注意を喚起することにある。というのも、ヒトの場合、トポイソメラーゼI型と、最近発見された血管形成インヒビターであるアンジオスタチンの間には、マウスと違ってアゴニストとしての作用が予測され、その結果として、たいていの場合、ヒトにこの薬を使うと血管形成が促進されてガンが悪化することが予想されるからである。そこで、直ちにこの臨床試験を中止することを提案する。

 他の公表物に記述したように(1)、タンパク質の生合成に伴って生じるスケール共鳴にはその生合成を後成的に制御するという効果があるため、個々のアミノ酸に対応する量子振動数を調べることにより、合成されるタンパク質のアミノ酸配列をもとにしてそのタンパク質のアゴニストとアンタゴニストを予測することができる。転移RNAにくっついた後のアミノ酸に附随する異なる10通りの振動数に0から9の数字を対応させると、トポイソメラーゼI型の初めの300個のアミノ酸と、重要な血管形成インヒビターであるアンジオスタチンとの間には、優に10を超える箇所で相同性が見られることがわかる。



ヒトDNAのトポイソメラーゼI型
(数字の上にカッコで示したのがマウス)

5204646442545147844426565456548568655655
^^^^   ・・・・     ・・・・・           +++++

5548552562425654255565555535654022556545
                       ******

6548455585555381204154555554072233545453

     (1)         (4)   (1)
5440873335544534583845443485355453543555
     〜〜〜〜〜〜〜〜〜   〜〜〜〜   〜〜〜〜
                        (1)
5585455554054553545454553353445555355555
                     ******       −−−−−−

5595995558835045957456503371338534354357
−−− ・・・・・・・・・

8840535542351553137715544658335547854775
                           ■■■■■■■

4985553455544434425347355258751535185552
5555454555455445580734544655841475453304
7808046355054588453544444325415332333065
9553864453394329354450245845443228450554
9558531884553345484588549525555385813148
7445414810455550531433033248356444635440

        (3)
5583357474054248884533355837544547554553
         ^^^^^ 

5444748443044456454455043153783841243455
5455431345443154428481481314434658133537
5525544535441555541418844521514153554153
5533525551358455545545351348554554140325
4484438433193559033455484535855719144514
54857



ヒトのアンジオスタチン
(トポイソメラーゼI型と振動数列が相同なものは数字の下に記号で示した。数字の上にカッコで示したのはマウス)

                         (1)
5384253530405488035253540433559223236838
  ・・・・                    −−−−−

7231363250455483843444350393833435588483

         (8)    (5)
4445355535632054840542535204535194252361
     ******      ^^^^^  ^^^^
                 (6) (0)
6084325734544554838434854839373343458954
       〜〜 〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜〜〜〜 

3443833333322033853450305488043133320633

                      (5)
5692153363648335473354445483843405813936
            ■■■■■■〜〜〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜〜
                 〜

3342538958354323422332355413313354333354
       ・・・・・
                                (2)
3860405288032233330553529225336865533548
                              +++++***
                                   (8)
34104354838434145039373343238958344553
        〜〜〜〜〜〜               ・・・・*****



 これを見てわかるように、これら2つのタンパク質の間には代謝上強力なアゴニスト作用があり、その結果、トポイソメラーゼI型を抑制すると、アンジオスタチンにも影響が及び、血管形成の抑制が解除される。逆に、これら相同箇所の大部分(12箇所のうちの9箇所。そのうちで最も意味のある部分の下に+、*、〜の印をつけた)は、マウスでは消えている(アンジオスタチンでは8箇所(2)、トポイソメラーゼI型では5箇所、両者に共通するところでは4箇所)。そのため、マウスで観察された結果をヒトに延長して当てはめることはできない。

 したがって、血管形成の別の調節ルート、つまりp53の変異によるトロンボモジュリンのルートと、血小板由来増殖因子βの変異による血小板第4因子のルートが働かなくなったときには、極めて厳しい結論が導かれる。そのため、このような臨床試験を行なう前に、少なくともガン遺伝子の分子解析を行なう必要があろう。現在の状況では、直ちに臨床試験の中止を勧める以外にできることはない。

 レプチンに関する同様の考察(3)を行なった後であるだけに、こうした臨床試験を実施する前には必ず、タンパク質の生合成に伴う振動数列の相同性の検討結果を考慮する必要があることを、改めて強調しておく。



参考文献

(1)ジョエル・ステルンナメール、『スケーリング波動』、欧州研究大学(パリ)で1994年から1995年にかけて行なわれたセミナー;
『スケール共鳴によりタンパク質の生合成を後成的に制御する方法』、フランス国特許出願第92 06765号(1992年);
『トロポニンCの振動数列との相同性を応用した代謝機能の予測』、プレプリント(1995年);
『タンパク質の生合成の後成的制御と、そのタンパク質のアミノ酸配列をもとにした代謝機能の予測』、プレプリント(1995年)。

(2)M. S. オレイリー他、『アンジオスタチン:血管形成と腫瘍の成長を抑制する循環内皮インヒビター』、コールド・スプリング・ハーバー・シンポジウムLIX、471ページ(1994年);"Cell", vol. 79, p. 315 (1994)。

(3)ジョエル・ステルンナメール、『ヒトとマウスにおけるレプチン(ob遺伝子の産物)の代謝の違いについて』、欧州研究大学のプレプリント、1995年。