朝日新聞1997年7月29日の記事より
抗がん剤「イリノテカン」
副作用死42人に
厚生省が緊急情報出す
肺がんなどの治療に使われる抗がん剤「塩酸イリノテカン」の投与を受けた患者が副作用で計42人が死亡していたことがわかり、厚生省は28日、使用上の警告をより強い文言で促す緊急安全性情報(ドクターレター)を医療機関あてに出した。厚生省は承認当初から添付文書で使用上の注意を警告してきたが、今月25日、中央薬事審議会副作用調査会が「さらに注意喚起が必要」との結論を出したのを受け、死者42人の症例をつけた異例のドクターレターとして発表した。
塩酸イリノテカンは、1994年4月からヤクルト本社と第一製薬が販売を開始。今年3月末までに約5450人に投与され、42人が白血球や血小板の減少などの骨髄機能の抑制を併発し、死亡している。
イリノテカンの副作用問題では、今年5月、愛知県がんセンターの福島雅典医師が文書で厚生省に情報の開示を求め、第一製薬が6月、副作用で24人が死亡していたことを公表。厚生省はこの時、「必要な対策はとってきた」として、ドクターレターの発表はない、としていた。
今回、一転して出したことについて同省安全対策課は「副作用について再度検討した結果、メーカーまかせにするのではなく、個々の症例を積極的に出して改めて注意を促すべきだと判断した」と話している。