オーロラを撮影するためにはどのような機材、技術が必要か、注意点は何か、紹介されている失敗談は他の方々の WWW ページでいろいろ、しかも詳しく紹介されていますので、そちらをご覧下さい。
で、このページは、というと、そのような素晴らしい内容ではなく、むしろ、旅のトラブル集のカメラ編というべきものです。
予期しないトラブルというものがあって、それはそれで面白いこともあるのですが、こおゆうトラブルはちょっと…
私のページで northern light を撮影した道具は以下の通りです。つまり、ごく普通。
カメラは今を去ること 25年前くらいに私の親が買ったもので、私が一旦受け継ぎましたが、1986 年くらいから使われることなく、実家 (親の家) で保管されていたものです。 古い上に、約10年放置されたまま眠っていたので、果たして使えるかどうか危ぶまれました。
しかし、電池駆動部分は露出計のみで、他はすべて機械式のカメラとはタフであって、そして、一旦操作に熟知したカメラは扱いやすく、久しぶりに取り出したに拘わらず、問題なく動くことがわかりました。
ただ、長期間手入れがされていなかったので、光路部品のいくつかに黴が生えていました。ただ、写真の出来映えに関係する部分ではないこともわかったので、黴は気にしないことにしました。 電池は 1.3V 水銀電池が指定されていましたが、もうそんなものは売っていないので、 1.5V のもので代用しました。それでもなんとかなりました。
結論 : その状態で Alaska に出かけて、オーロラの写真は撮れました。
が、徐々に不具合点も現われてきました。いくら古いカメラとはいえ、フィルムを何コマ目まで撮影したかを示すカウンタが付いており、フィルム交換のため裏蓋を開けたらリセットされる (「S」表示になる) 設計なのですが、それが、2日目には 4コマ目を示す「4」までしか戻りませんでした。
翌日のフィルム交換時には、数字が全く戻らず「28」のままでした (前日の「4」+「24枚取り」=「28」だったらしい)。カウンタは更に進んで「38」まで行くと、それ以上の数字は用意されていなかったらしく、それ以上大きい数字にはなりませんでした。また、フィルム交換時に裏蓋を開けても数字は「38」のまま動かず。
フィルム巻き上げ機構そのものは健全だったので、写真は撮れました。しかし、既に何枚撮影したかわからなくなってしまったことと、フィルムの終わりの部分で巻き取り穴 (術語忘れました) が切れてしまったため、最後の何コマかは重なって写っていました。それでも、フィルムが切れる、という、よくあるらしい、一番遭遇したくないトラブルにはならなくて何よりでした。
ここまではまだ良かったのですが、帰国後、もっと重大なトラブルが発覚しました。なんと、カメラの裏蓋がしっかりとは閉まらなくなったのです。
Canon FT-QL は、裏蓋のフックを本体のバネ仕掛けのフックにカチリと引っかけることで、閉じた裏蓋をロックしています。その本体フックのバネが縮んだら伸びない状況になった (ロックが効かなくなった) らしく思われました。蓋は一応閉まるのですが、閉めるときに必ずバネが縮んだ状態になります。と、カチリと引っかかった状況にならないので、見かけは裏蓋は閉まっているけれど、何の障害もなく裏蓋を開けてしまうことが出来てしまいます。
フィルムをセットし、裏蓋を閉じてから、ガムテープか何かで開閉部を固定すれば、取りあえず使い続けられるでしょうが、いかにもみっともない。
さて、修理。+--+-------------------------+----+----------------------------+--------------+---------+ |品| 故 障 現 象 |指定| 修 理 内 容 (処理) | 使用部品 | 部品代 | +--+-------------------------+----+----------------------------+--------------+---------+ | 1|裏蓋 関係不具合 | ※ |調整致しました。 | |¥ | | 1|カウンター機能不良 | ※ |調整致しました。 | | | | 1|ペンタプリズム バル切れ | |部品交換の上調整しました。 |ペンタプリズム| 7,000 | | 1|分解掃除 | |分解掃除一式致しました。 |小物部品 | 1,000 | | 2|レンズカビ / 汚れ | |出来る限り清掃致しました。 | | | | 2|分解掃除 | |分解掃除一式致しました。 | | | +--+-+----------+------------+----+---+--------+------------+--+---+-------+--+---------+ | | 修理区分 | 修理技術料 | 部品代 |付属品代|修理料金小計|運送代| 消費税|修理料金合計| |修 +----------+------------+--------+--------+------------+------+-------+------------+ |理 1| 重修理 | 20,000 | 8,000 | | | | | | |料 2| 重修理 | 9,000 | | | |(税込)| | | |金 3| | | | | 37,000 | 600 | 1,850 | 39,450 | +----+----------+------------+--------+--------+------------+------+-------+------------+キャノン販売株式会社
さて、修理なったこの CANON FT-QL を持って '98 は Greenland (Kangerlussuaq) へと向かいました。その寒さは Chena Hot Springs 以上であったに拘わらず、装備はそれと同等か、それ以下だったので、寒さとの戦いになりました。寒さで息が凍って、眼鏡が曇るため、足元さえ見えなくなることがありました。
そのため三脚に立てたカメラを一度は安定が悪くて倒し、もう一回は足で引っかけて倒しました。前者の衝撃で、レリーズの先端が折れ、後者の衝撃で三脚の脚の一本が中間で折損しました。
レリーズ (金属製) の先端が折れた方は、歯で折れた付近を噛んで少し真っ直ぐにし、続けて使う以外にはありませんでした。 そうして使っていると、つぎはバネが駄目になり、レリーズを取り付けるのと、押し込む方は辛うじて出来ても、戻らなくなりました。予定した露光時間が終わると、レンズを手で塞いで余計な光を遮り、レリーズを無理矢理はずしてシャッターを閉じさせる動作が必要になりました。厄介千万でした。次回以降買い換える必要がありそうです。
三脚の足が折れた方は、他の二脚も折れた一脚と同じ長さまで縮めて使う以外ありませんでした。教訓として、良い三脚を買いましょう、少し大きくて重いけど、ということが挙げられると思います。
私は目が悪いため、上記 CANON FT-QL (ミラーコンデンサが旧式) では、上手くピントが合わせられず、ピンぼけになってしまうことが多々あります。 そこで新しく買ったカメラは、必然、オートフォーカスのものになりました。
このカメラは、シャッター速度最長 60sec ですが、シャッター速度調整にはボタンを何カ所も複雑に押す必要があって、そんなことは暗がりでは不便です。レリーズを差し込むこともできないので、このカメラはオーロラ撮影には使いませんでした。
しかし、昼間時には便利なところもあるので、頻りに使っていました。特に、他人にカメラを渡して、撮ってくれ、と頼むときは、オートフォーカスのものにならざるを得ません、今日。
Kangerlussuaq 郊外の Icecap なる内陸氷河末端を見物に行ったときのこと、ガイドが私のカメラを手にして写真を撮ってくれたのは良いのですが、それを私に返すときに地面に落としてしまいました。
Kangerlussuaq は積雪量が少なく、その薄い雪の下は分厚い氷の層ですから、地面はとても硬いのです (Alaska なら雪がクッションになったでしょうが)。おかげで鏡胴が少し曲がってしまい、レンズが前後には動かなくなりました。Hotel に帰ってごそごそやっていると、なんとかレンズは前後動するようにはなりましたが、その動作は見かけも音も鈍く、完全復帰でないことは明らかでした。
なんとか動くのか、と期待し、このカメラを Ilulissat へ持って行きました。ところが、やはり途中でレンズの前後動が悪くなり、被写体にピントが合わなくなりました。フィルムの残りのコマの撮影を諦め、巻き戻しの SW を押しました。と、あろうことか、ウンともスンともいわなくなりました。フィルム巻き取りモーターはレンズの焦点合わせのモーター等とは別系統のはずなのに〜。
あれこれいじくっても動かないものは動きません。今日の Ilulissat の写真だけでも何とか救い出さなくてはならない、そう考えました。手段はたったひとつ、カメラの裏蓋を暗所で開けて、フィルムをすべてパトローネ内に巻き取ることだけです。
これには勇気が必要でした。なにしろ、失敗、即、Ilulissat の写真全滅ですから。しかも、わざわざ高感度フィルムを入れてあるので、わずかの光も避けるべき状況でした。
まず、撮影済み等のパトローネを用いて、フィルム巻き取りの予行演習。パトローネの上端 (?) の部分に army knife のしかるべき部分を差し込んでクルクル回せばフィルムを巻き取ることが出来るのはわかりました。
ついで、暗所の探索。夜になるのを待てませんでした。「そうだ、昼でも bath room は暗い!」 部屋のカーテンも全部閉め、外の明るさを遮って、Bath room (トイレと洗面台も一緒) の入口の扉を閉めると、室内は暗くなりました。3分ほどじっとしていて闇に目が慣れたつもりの頃になっても、自分の目の前で手を結んで開いてしても全く見えない。扉の隙間に顔を近づけると外が薄明るいな、という程度です。
意を決して、カメラの裏蓋を開け、予行演習通りフィルムを巻き取ろうとしたら、さらに意外や意外、フィルム固定力は人力よりも強くて全く動かず、パトローネ内に巻き取ることが出来ません。一旦蓋を閉め、ため息を付きました。このまま日本へ持って帰ってカメラ屋にやらせる手もあるでしょうが、ちゃんとやってくれるかどうか不安です。
フィルム固定力が強いのは、巻き取りモーターがしっかりしているからですが、どうせ修理に出すんだから、モーターがさらに壊れてもいいや、とねじ込んだ army knife を力を込めて回すと、フィルムが切れるんじゃないかとの少しの不安の後、ついに人力が勝利しました。明らかにパトローネ内にすべてのフィルムが巻き取られた感触がきたときはホッとしました。
巻き取るまでに数分以上かかったので、いくら暗い室内のつもりでも相当露光してしまったかもしれないな、との考えが頭をよぎりましたが。
この作業が最終的に成功だったかどうかは、Ilulissat 訪問記のページ をご覧下さい。
帰国後に修理に出しました。
+----+------------+----------------+------+---------------+------------------------+ |品名| L-10 SUPER |ご購入 年 月 |有料 *|修理区分 重修理|見積・修理 工料 11,900 | | No.| 1202467 |保証内 保証外 *|無料 |工料 | 交換部品 5,900 | +----+------------+----------------+------+---------------+ 小 計 17,800 | |お預り ソフトケース ネックストラップ | 運賃諸掛り 650 | |付属品 フロントキャップ フィルター デンチ | 消費税 922 | | | 合計 19,372 | +-------------------------------+-------------------------+------------------------+ | 修理内容 | 交換部品No. 交換部品名 数 価格 | +-------------------------------+--------------------------------------------------+ | ショック **** | ALZ3000 ホンワククミブヒン | | 鏡胴 作動不良 交換 | CF840800 カムワク | | ズーム 作動不良 交換 | ALH2000 ヘリコイドコブヒン | | シャッター 作動不良 修理 | | | 各部点検 点検 | | +----+--------------------------+--------------------------------------------------+ | 記 | | | 事 | カヨイバコ フィルター マガリアリ | | 欄 | | +----+--------------------------+--------------------------------------------------+