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2008.04.17
 

「のれそれ」と透明料理

のれそれ。透明な魚なので、何匹いるか分かるだろうか?

これが透明料理。のれそれ、葛、寒天の和え物。


 4月10日(木)、曇り。いつもの魚屋さんに見かけない魚が出ていた。旬のホタルイカの隣りに何かの幼魚のような小さな白い魚が入ったパックが並んでいる。よく見ると、その魚は平べったくて透き通っている。形が「きしめん」に似ている。上に貼ってあるラベルに「のれそれ」と書かれている。のれそれ、はて?
 
 のれそれ、と言われても、日本語だとは思うが何のことかまるで見当もつかない。台の上には2パックあるだけ。いつもは、これいいよとその日のお薦めの売り込みに声をかけてくる店の人も、よそを向いて気づかないふりしている。先日は、そこにイカナゴが並んでいた。神戸の方では旬の魚だけど関東ではほとんど出回っていない。ここでも1度出たぐらいだった。そうか、あまり入荷してなくて、得意先の料理屋さんに出したいってことかな。早々、1パック持って帰ってきた。
 
 「のれそれ」について調べてみた。高知の呼び名で、あなごの幼魚だという。春を告げる魚として親しまれているらしい。「のれそれ」の語源が面白い。地引き網を引き上げるとき、この魚は、網の底に乗(の)ったり、逸(そ)れたりしながら滑ってくという。そこから、のったり、それたり→のり、それ→のれそれになったという。ネットには必ずそんな説明がついている。しかしこの話しどこまで本当なのだろうか?
 
 箸でつまんでみると、体は透き通っていて、唯一、分かるのは小さな黒い玉の目だ。絵皿の上に載せると地の絵が見える。体は透明なので一瞬、何も存在してないようにも見える。透明なのは稚魚のとき外敵から身を守るための究極的な保護色ではないか。そういえば昨年、イギリスで透明戦車の開発に成功したというニュースがあった。この戦車は、車体がカメレオンのように背景と同化する仕組みで、透き通るのではない。
 天狗の隠れ蓑とか、透明人間とか、人間にとって透明な存在は、なんとも御しがたく、かといってそれだけでは恐怖というほどでもない。透明という要素は、どこまでも防衛的で、攻撃性が皆無なところがそんな印象を生みだしているのではないか。だいたい恐ろしいとか怖いというのは、姿を見て感じるもので、透明ではとらえどころがない。奇妙な存在だ。
 
 透明料理をこしらえてみた。Googleにも透明料理は出てこない。のれそれは、ポン酢でそのまま食べるようだ。それなら他に透明な食材をあわせてみようと、すぐ手に入るものを探してみた。結局、葛(くず)と寒天をあわせてみることにした。
 葛の方が寒天よりは透明度が高い。とくに茹でたばかりの葛は水の中で、かなり同化していて分からない。寒天は水でもどすだけだが、半透明の白っぽいところがある。3点を葉蘭の葉に盛りつけた。
 完全に透明で、皿の上には何もない……ならばすごいのだが、実物はご覧のように姿が見える。
 ツルツル系の歯触りで独特の食感がある。ズル〜、ドロっと滑るように口の中を滑っていく。ズル〜は葛で、ドロっとしてるのはのれそれの食感。生臭さとか癖はなく爽やかだった。今が旬の魚だが、夏にぴったりの風味だ。
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