Web楽譜批評

スキャンノートの実力
対象楽譜:http://www1.odn.ne.jp/~caa35060/Sample.html
一休 (http://www.asn.co.jp) 1999年6月12日(土) 09:54

いやはや、凄い楽譜を見つけてしまいました(^^)

これを見て、よもやコンピュータで書かれていると思われる方はそうはいないんじゃないでしょうか。楽譜の大きさも絶妙なバランスだし、スペーシングに関しては、この曲をどうこれ以上いいスペーシングにするんだ、という感じですから。しいて問題点をあげるとすれば、こんな曲を演奏できる人がどれくらいいるか、ということでしょうか(^^;?1段目の文字類もちょっと重なってて読みづらいですね。ただ、GIF画像ではなく印刷されたものならもう少し視認性が上がってくると思いますが。
しかし、これは、Illustrator等は使わずに、スキャンノートだけでこれだけのことが出来てしまうんでしょうか?だとすると、Finale使いとしてはすごくうらやましい箇所がいくつかあるんですよね。
例えば…

・8- - - - ┐の囲みを閉じてる部分が、ちゃんと‘┐’のところになっている。
 これ、Finaleだけでやるのは大変なんですよね。画面であわせても印刷するとずれてたりするし。

・個人的には、もう少し丸みがある方が好きなんですが、1〜3段目にかけて出てくる長いスラーの両端の形がきれいですよね。これは、コントロールポイントが最大4つのFinaleではなかなか描けません。

・3段目に出てくるようなS字(逆S字)スラーが描ける。
 これって、画像ではちょっとつなぎ目が見えるんですが、実際はどうなんでしょう?

・最後の段に途中から点線にかわるスラーがでてくる。
 これ、やっぱりつなぎ合わせですかね。もしできるとしたら凄いですね。値段も凄いんですが(^^;。

いやあ、浄書ソフトによくあるサンプルなんかでも、これ見よがしにすんごい楽譜が載ってたりしますが、派手さばかり追っていて、浄書的に見ると間違いが結構あったりするんですが、この方は浄書家さんだけあって、そのへんはけちのつけようがないですね。凸版もただで宣伝してもらってるようなもんですよねえ。
ただ、スキャンノートを買えば誰でもこんな楽譜が作れるわけでは、決してないでしょうけど(^^)。

というより、浄書家の実力でしょう
Hossy (http://www.bekkoame.ne.jp/ro/hossy/) 1999年6月12日(土) 13:57

ふふふ、ついにこの楽譜を見つけましたね。

 この楽譜を書いた神野浄書技研の神野氏は、おそらく国内のコンピュータ浄書家の中でも、3指の中に入る実力の持ち主と断言できます。
 一休さんのご指摘通り、Scan-noteを使えば誰でもこんな楽譜が書けるわけではなく、彼の技術力の高さがこれだけの楽譜を書かせたといえるでしょう(ここの「浄書家作品ギャラリー」にも彼の作品があります)。

 で、私も以前は会社でScan-noteを使っていたので、このソフトのことはよく知っています。一休さんの疑問にお答えしましょう。

 まず、この楽譜はScan-noteだけではなく、Illustratorも使っています。この楽譜では、文字との衝突を避けるために、松葉やステムの一部がカットされている部分がありますが、Scan-noteではこれはできません(Finaleならできるけど)。

 8 - - - ┐のフックですが、これはScan-noteの優れた部分で、どんな長さの点線を書いても、点線の間隔を調整して、角が必ず┐になります。また、
 poco a poco cresc. - - - -
なんて間隔の広い点線も、始点と終点を指示すれば、その間に等間隔に並べてくれます。これをFinaleでやろうとするとどんなに大変なことか……。

 スラーの形ですが、Scan-noteには一般のスラーとかまぼこ型スラーという2種類のスラーがあって、場所によって使い分けられます。欠点は、その中間の形を表現できないこと、一方が普通でもう一方がかまぼこ型といった非対称のスラーが書けないことです。そういった意味では、スラーの形はScan-noteもFinaleもなかなか満足したものが書けません。私の見てきたところ、Scoreのスラーが一番自由度があって、私の理想に近いです。
 Scan-noteのスラーは、Finaleのようなベジェ曲線で描かれるのではなく、細かい線分をつなぎ合わせた多角形で描かれています(Scoreもそうです)。先の2つのスラーの母型があって、それをソフト的に変形しているのです。
 また、Scan-noteはS字スラーは書けなくはないのですが、3段目のような形は書けません。ところが、Scan-noteには、スラーやタイを任意の場所でカットする機能があり、一休さんのご指摘通り、3段目のS字スラーにはちょっとつなぎ目が見えるので、これは2つのスラーを合成して書かれているのでしょう。したがって、途中から点線スラーになるといった芸当も出来なくはないのですが、上手くつなぎ合わせるのは至難の業です。この楽譜ではIllustratorでの仕事かな?

>しいて問題点をあげるとすれば、こんな曲を演奏できる人がどれくらいいるか、ということでしょうか(^^;?

 この楽譜、密度が濃いので一見難しそうに見えますが、ゆっくりしたテンポだし、譜読みそのものは意外とそんなに難しくもないんですよ。むしろ、細かく指示されている標語を音楽的に反映させて演奏することのほうが難しいかも知れません。


日本のソフトなんですねえ
一休 (http://www.asn.co.jp) 1999年6月13日(日) 10:15

そうでしたか、やはり8 - - - ┐の囲みは、自動的に角をあわせてくれるのですね。う〜ん、やっぱりその辺の細やかな部分は日本製のソフトだなあという感じですね。Finaleだと角はおろか、点線の間隔も画面表示と印刷結果が違ってきますもんね。しかもポストスクリプトのプレビュー表示をさせても変わらない、という。あれってなんのための機能なんですかね。
だから、cre - - scen - - - do みたいな、間隔の長い点線などはハイフンを一個ずつ並べてますからね。このへんの大雑把さがやはりアメリカ製のソフトなんですかね。
ただ、総合的に見ると、アメリカ製のFinaleの方が、柔軟な発想で作られてるみたいですね。
スラーの形などが多角形で作られてたり、五線が線ではなく五個の細長い長方形として描かれたりするのは、ファイル容量や処理速度にとっては不利な仕様ですよね。

#といってもFinaleとてそんなに柔軟なソフトだとは思えませんが(^^;。それにつけてもSibeliusですかね。このソフト、イギリス製のようですがFinaleが苦手とする細やかな部分はどうなんでしょうね。デモンストレーションなどを見る限り、やはりアメリカよりのソフトだなあ、なんて印象を持ったんですけど。はやくマック版でないかなあ。


老舗ソフトの弱点
Hossy (http://www.bekkoame.ne.jp/ro/hossy/) 1999年6月13日(日) 14:07

 凸版のScan-noteは、じつは純和製ではないらしいです。もともとは、デンマーク(だったかな?)のなんとかさん(名前失念!!)がおおもとのプログラムを作ったということです。それがどうして日本の凸版印刷のものになったかの経緯は私には分かりません。
 このソフトもアバウト画面によると88年が開発の始まりと書かれていますから、かなり古いソフトです。当時はポストスクリプトもない時代ですから、当然ベジェ曲線もなく、フォントもType1やTrueTypeもありませんから、全ての文字や図形を多角形の線分で表すしか方法がなかったのでしょうね。
 そういう時代のソフトですから、面白いことに、このソフトがいまだに標準で持っているTimesとかCenturyという書体は、アウトラインの線分で表す書体なんです。和文もカナだけは独自に持っていましたから、当時の英語システムでもカナの歌詞が書けたのです。もちろん、現在は一般のType1フォントも使えますが、あらかじめ使う書体を登録しなければならないなど、不便です。また、音楽記号フォントもずっと後になってオプションとしてType1フォントになりました(オプションですよ!!)。それでも、標準的なピアノ曲をEPSファイルにすると、1M近くになります。Finaleならその約1/10で済みます。
 このソフトの最大の欠点は、1ファイル1ページしか扱えないという点です(Illustratorみたいだ)。しかも、複数ページを同時に開くことはできず、1ページごとに終了しては、また新たに立ちあげ直すというシロモノです。したがって、ページ割りが変わるような修正が入ると大変です。そういう場合は、ScoreEditという別ソフトでの編集になります。1ファイル1ページですから、スコアからパート譜を作るのも非常に面倒です。当時のマシンパワーと少ないメモリ下の環境ではやむを得なかったのでしょうが、今となっては完全に時代遅れのソフトです。

 ScoreやFinaleにもいえることですが、開発が古いソフトほど、データの持ち方とか、操作体系といった根本的な部分が、現状にそぐわなくなっても容易に変更できないという弱点を持っていますね。Sibeliusのようなリアルタイムでスペーシングが変わるといったような発想は、当時のマシンパワーでは考えられなかったことです。そういった点で、後発のSibeliusは、現在のマシンパワーを最大限に活かせるプログラムで作られているという点で、強みがあるでしょうね。
 さあ、Finaleはどう出るでしょうか?


そういえば
BOZZA 1999年6月13日(日) 22:38

Hossyさん、一休さん、割り込みすみません。

昔読んだ本の中(確かMacやFinaleが世に出る前だったと思います)に、
「いずれ、ワープロのように楽譜を打つコトが可能になってくるだろう。だが
現状は手書き浄書とコンピュータ浄書のコストはさほど変わらない。
現在国内でも2大印刷会社がシステムを構築中」(以上、要旨)と書いてありました。

「国内でも2大印刷会社がシステムを構築中」・・・。1つは凸版の
Scan-Noteだと思うのですが、もう一つって、ひょっとして
市ヶ谷にあるあの会社だったのかなぁ、と思うわけです。
そんなウワサはあったのでしょうか??


その噂は本当です。
Hossy (http://www.bekkoame.ne.jp/ro/hossy/) 1999年6月14日(月) 11:35

BOZZAさん、こんにちは。

 2大印刷会社のうち、凸版印刷のもう一方で市ヶ谷にある会社といえば、大日本印刷ですね。
 噂ではなく真実です。ただ、私も現物を見たわけではなく、人づてに聞いた話なのですが、その大日本印刷のものは、楽譜作成システムといっても、楽譜を1から入力するというより、市販の印刷楽譜を読み取って楽譜を再構築する、いわゆるOCRソフトのようなものだったようです。これも人づての情報ですが、85年のつくば科学万博で、ワスボット君という楽譜を読み取ってそれをエレクトーンで演奏するロボットがデモンストレーションを行っていましたが(私は目の前で見た)、その技術が使われていたという話です。

>現状は手書き浄書とコンピュータ浄書のコストはさほど変わらない。

 これって、少なくとも、80年前半の時点での話ですよね。この当時はまだパソコンの黎明期ですから、そのコンピュータといえば汎用コンピュータということになりますか。ただ、それでも、その当時の技術では、せいぜい簡単なCメロ譜程度の楽譜しか書けなかったと思います。手書きの浄書と肩を並べて仕事を取れるほどではなかったと思いますがね。
 コストといえば、現在においてもなお、手書きに比べてコンピュータ浄書が格安でできるというわけではありませんね。出版レベルの楽譜になると、まだまだコンピュータにおまかせでハイできあがり、というわけにはいきませんからね。やはりそれなりの専門的技術が必要です。
 ただ、移調譜を作るとか、スコアからパート譜を作るといった作業は、やはりコンピュータにはかないません。そういう部分はたしかにコストは軽減できますね。手書きなら1から書かなければなりませんからね。

 でも、BOZZAさんが読んだその本のそのフレーズ、私もどこかで聞いた憶えがあるぞ。私もその本どこかで読んだのかなぁ。


DNPですが・・・。
BOZZA 1999年6月14日(月) 22:20

Hossyさん、こんにちは。スカパーで「欽ドン!」を
見ながら書いています。イヤー懐かしい。私がまだ
幼稚園に入園する前の頃です。。

ご指摘の通り、2大印刷会社の1つ、大日本印刷です。
(至極当然か・・・^^;)
実は、ウチの会社はDNPともつきあいがあるので、えらい人に
それとなく聞いてみたのですが、やはりというか、
もうプロジェクトは閉じてしまっているようでした。

でもDNPの開発していたのはOCR系のソフトだったかもしれないんですね。ひょっとしたら
某カワイのソフトは、DNPの技術を移管したのかも
しれませんね。なんだか夢が広がるなぁ。(^^)

私が読んだその本、今押入から引っぱり出してきました。
高橋淳 著、「楽譜の正しい選び方」(春秋社)にその
記述が書いてありました。1989年初版なので、マックが
登場した直後(まさにその年?)ですね。
各国の出版社の住所や、歴史が書かれてあって、当時はすごく
参考になりました。代表的なお抱えの作曲家まで記してあって、
私の虎の巻になっています。たぶん絶版でしょう。。。

たぶんHossyさんもお持ちだと思いますよ。