早指し将棋選手権戦・早指し新鋭戦(主催・テレビ東京)
決勝 北浜健介VS 山崎隆之
相矢倉55角型
天王山の角睨み-端攻めの妙
2002.7.14
マシュダ談話


「なんかいいたげですね」
「わしはハブオタではないゾ。ハブは第一人者であって素直に贔屓できん」
「ナニオタと?」
「ヤマサキオタ」
「どこがいいと?」
「後手でも先日手には絶対にせんという意気込み、トビウオのような勢い、つんのめる自負心。見てて気持ちいい将棋」
「今日はついに決勝戦です」
「嬉しい。ヤマサキが行方-松尾-大介連破して決勝とは文句なし。北浜とは因縁対決じゃね」
「相矢倉の出だしです」
「ますます嬉しい」
「最近みかけませんね」
「羽生世代はさんざんやったから。北浜やヤマサキがやってくれるとまた一味違う」
「なんと山崎五段6手目に62銀ではなく自分から先に54歩!」
「ええねー」
「意味は?」
「56歩突きなさいと後手から催促することで主導権を取りに行く意欲を見せつける」
「手抜くと?」
「5筋位取りの選択肢を後手に与える」
「北浜六段56歩と受けて後手も62銀で通常形です」
「9/48銀もこれが一番落ち着く」
「いきなり10/53銀!」
「ええねー」
「意味は?」
「やはり剥出しの戦闘意欲で相手に威圧感を与える。保守派には位の確保に見えても、矢倉の達人にはデメリットしかない」
「デメリットは?」
「形を10手目に決めたことで先手が囲いやすい。理論的にはトリトヌス空間の響きを自ら埋めるという硬直手」
「それのどこがいいと?」
「ヤマサキがやるとえーのよ。田丸がやるともー負けかと思う」
「11/58金に12/85歩で早くも飛車先ついちゃいましたけど」
「戦闘意欲剥出し。サウスポーがキビキビしとるね」
「北浜六段もサウスポーですが」
「13/77銀と素直に受けるとやや気分悪いじゃろーね」
「というと?」
「後手が別の手だと78金と先に備えて先手の選択肢は多い。53銀を硬直手のままにして駒組みがしやすい」
「角道止まったところでいきなり14/55歩とぶっつけました!」
「ええねー。ヤマサキの得意」
「昔流行りましたがなぜ今また?」
「ノリが軽くて作戦勝ちまで研究できそーで、結論でんのが矢倉」
「だからなぜそれをまたぶりかえすと?」
「歩の交換をいきなり後手から仕掛けるのは魅力的。この魅力は肌の艶。タカミチがやったらオカマ化粧」
「同歩同角ですごい形になりますね」
「16手目にして中盤戦。ここで後手の主張を検証
1=53銀の硬直手は54歩が消えたことで銀の自由度がひとつ増し5箇所総てに稼働
2=角が天王山で飛車を狙い4手目の34歩を双頭手に転化。先手は36歩が突けない
3=手持ちの歩入手」
「いいことづくめですねー」
「この誘惑に体当たりできるとこがえーねー」
「17/79角ですけど、角の活用で当然ですか?」
「それは曖昧な表現。後手はガムシャラに攻めておるからそんな悠長な場面ではない。次に35歩と位を取られるのを直接的に避けた手として必然」
「188/54銀!」
「めいっぱいやっとるね。早くも銀の自由度を自ら拘束。これで5箇所に行けた銀が2箇所にしか行けなくなる。換りにトリトヌス空間の響きを戻しつつ6筋からの攻めを一応見せる」
「一応と?」
「そりゃすぐにはどーにもならんからまずはパンチラ攻撃」
「19/78金で先手動じません」
「これでいつでも強襲や角交換は怖くないという必然手」
「なぜ必然手と?」
「後手に紛れを与えない先手の最善の特権と考える。ここで色気にはまって57銀とすると、拘束された後手銀をプラスに変化させてしまうだけでなく後手に3手角を許す」
「20/32銀」
「先手が誘いに乗らなければ囲い」
「21/69玉」
「これはなんともいえんね」
「普通の矢倉囲いですけど」
「ヤマサキはフツーにやっとらんのよ。あのずうずうしい角は74歩と突けば73-84と三手角で定位置に置けるが、北浜は79角としたんで持久戦になった時に26角の定位置に置くには4手角で手損。それは許せんから北浜には57銀や46歩はすでにないんじゃね。しかも48銀では2筋からの棒銀もない。飛車先突きたいが32銀と準備されておるから後続がない。残ったのが46角と北浜からぶつける筋。それをやらんで69玉ではヤマサキ指しやすい」
「22/42玉。ずうずうしいー玉ですか?」
「パンチラ攻撃効かないんで股ひろげたね」
「ここで手ーつっこむとか?」
「北浜チャンスっぽい。26歩-16歩からじわっと作戦勝ち目指すか、4筋からいきなり行くか。羽生は康光の55歩交換には先手で端攻めやっとったね」
「23/67金右でーす。北浜さんはそんなことしません」
「なんかねー」
「一番手堅い手ですけど」
「後手は今最も隙がある陣形。ここで先手さらに固めると後手の守備の出遅れのデメリットが消えてバランスが戻る」
「24/31玉で、もうバッチシです」
「こりゃ北浜作戦負けじゃね」
「ここで46角とぶつけると?」
「放置されて喜んで飛車を5筋に転回される。31玉対69玉のままでは戦えん」
「そこで25/56歩と打っちゃいました」
「相手が大股広げた時にはやはり逃げてはいかんね」
「26/46角で相変わらず角筋が飛車を睨んで36歩が突けません」
「そんなことよりせっかくの歩を打っては北浜いいとこまるでない」
「27/46角とぶっつけました!」
「証文の出しおくれ。次に64角-同歩-53角打があるから42金でふせぐだけのこと。歩を打ってもらったんで角交換はヤマサキ怖いとこない」
以下互いに手損を避けるために角交換せず、先手は4手角で26の定位置に。
「50/92飛!」
「ついに来たか!手持ちの1歩で端攻め」
「51/37桂馬ですが」
「おいおい、北浜そんな暇あっか?」
以下97歩-同香-同角成の端攻めで龍をつくった後手圧勝。
「なんで北浜82/45桂馬と打てんのかね」
「84/59歩成でと金つくられますが?」
「33桂成-同金右-55歩で銀のタダ取りでなんとか格好くらいつく」
「そこで87龍の両金取りなら?」
「さっき取った銀を78にぶち込んでなんでもない。よって87歩か58銀打」
「55歩で中央が広いですか?」
「20秒将棋ならわからんぞ」
「まさか飛車角香だけの端攻めがあんなうまく決まるなんて」
「玉が右翼に脱出して反撃できるパターンのはずなんじゃけどねー。北浜終始逃げ腰が敗因」
「後手決まりすぎて気持ちいー位です」
「では最後に一言」
「ヤマサキ!ようやった」