ゴキゲン中飛車全面戦争の構図
4つの構造基盤
サンプル=2004.02.06棋聖戦最終予選 中原VS久保

2004.03.25分析 マシュダ一家

ゴキゲン中飛車全面戦争の構図 4つの構造基盤 サンプル=2004.02.06棋聖戦最終予選 中原VS久保  No: 4727 [返信][削除]
 投稿者:マシュダ一家  04/03/25 Thu 11:43:02


サンプル棋譜
棋戦:棋聖戦最終予選
日時:2004.02.06
戦形:ゴキゲン中飛車
先手:中原誠永世十段
後手:久保利明八段

▲7六歩 ▽3四歩 ▲2六歩 ▽5四歩 ▲2五歩 ▽5二飛
▲7八金 ▽5五歩 ▲2四歩 ▽同 歩 ▲同 飛 ▽5六歩
▲同 歩 ▽同 飛 ▲6九玉 ▽3二金 ▲2八飛 ▽2六歩
▲5七歩 ▽7六飛 ▲7七金 ▽7四飛 ▲2六飛 ▽6二玉
▲2八飛 ▽2三歩 ▲4八銀 ▽7二銀 ▲6八銀 ▽7一玉
▲9六歩 ▽4二銀 ▲5六歩 ▽3五歩 ▲6六歩 ▽2四飛
▲2五歩 ▽3四飛 ▲7八玉 ▽8二玉 ▲7六金 ▽4四歩
▲6五歩 ▽3三角 ▲6七銀 ▽4五歩 ▲7七桂 ▽5三銀
▲5七銀 ▽4二金 ▲9五歩 ▽5二金寄 ▲8六歩 ▽6四歩
▲同 歩 ▽同 銀 ▲6五歩 ▽5三銀 ▲5八金 ▽3六歩
▲同 歩 ▽同 飛 ▲3七歩 ▽3四飛 ▲6六銀右 ▽6三金
▲5五歩 ▽6四歩 ▲8五桂 ▽6五歩 ▲同 銀 ▽8四歩
▲9三桂成 ▽同 玉 ▲2四歩 ▽6六歩 ▲同 銀 ▽2四飛
▲9四歩 ▽8二玉 ▲9三歩成 ▽同 香 ▲同香成 ▽同 玉
▲2六香 ▽1四飛 ▲2三香成 ▽4四角 ▲2五飛 ▽6四歩
▲5六銀 ▽9七歩 ▲9四歩 ▽8二玉 ▲8五歩 ▽5七歩
▲同 金 ▽9八歩成 ▲7七角 ▽6五桂 ▲9五角 ▽5七桂成
▲同 銀 ▽9七と ▲6七玉 ▽9六と ▲8四角 ▽9二歩
▲3六桂 ▽3三桂 ▲同成香 ▽同 角 ▲2一飛成 ▽6五歩
▲2四歩 ▽6四銀 ▲7五桂 ▽7四金 ▲6三桂成 ▽5一香
▲6四成桂 ▽同 金 ▲6二歩 ▽7一金 ▲3一龍 ▽6六香
▲同 銀 ▽同 歩 ▲同 角 ▽8六と ▲8四香 ▽9一玉
▲8六金 ▽6五銀 ▲同 銀 ▽同 金 ▲3三龍 ▽6六金
▲同 玉 ▽7四桂 ▲6五玉 ▽6六金 ▲7五玉 ▽8三銀打
▲6一歩成 ▽9七角 ▲投了

146手で後手の勝ち


2004年2月6日(金曜日)に行なわれた棋聖戦最終予選の棋譜が産経Webに公開された。久保のゴキゲン中飛車に対する中原の異常感覚には目を見張る。中原は9手め24歩を突き56歩の王手には69玉と寄る。そこで死滅したような変化77金で作戦負けと思っていない。むしろ26手めに久保に23歩と謝らせ作戦勝ちと思っているかもしれない。久保は美濃に組んでいるのに中原の陣形は天衣無縫。しかもゴキゲン特有の第二展開24飛の飛車交換要請に37手め25歩と先手も謝るのでは中原以外の棋士ならば100%先手作戦負けと言うところ。一体先手の陣形をどうまとめるのであろう?見ると41手めなんと76金。丸山が棋王戦で見せた転移無法の棒金と並ぶ発想。77金を連動手とすることで絶対に作戦負けではないという主張。しかしこれは玉を守る金。中原はこの76金で後手の美濃は94歩と突けないだろうと主張。9筋ブランコに付き合うと4段目の飛車筋が止まった時に95歩-同歩-94歩の三手一組が成立する。持ち駒1歩の利点を9筋に求めるために77金-76金を連動手とする発想。それだけではない。47手めに玉側の桂まで跳ねている。ここまでやられると森内も付いていけないであろう。対ゴキゲンでは先手最強の差し回し。後手は「先手は作戦負け」と何度も言っているのに先手は「これで先手良し」と言い張っているうちに67手めの局面まで来てしまう。先手が4つめの位を取った所。これが中原にしかできない煉獄の空中楼閣。極めつけは69手め85桂。横歩取りでは25桂、ゴキゲンでは85桂で最終盤へ持ち込む意欲は異常というより至高。中原はこんなこと当たり前と思って指している。森内まで9筋端攻めでやられたほど。9筋端に綾を付け2筋3筋に桂香を打って全面戦争へ持ち込む中原芸は見事と言うほかない。36桂はトリプル手。角取りで手番を掌握しつつ24飛を防御し自分の飛車だけ成る。このデザインはとてもマネできない。成り行きではなく永世名人の至芸。単細胞ゴキゲンで全駒駆使の最終盤構図へ持ち込める所が凄い。
ところがここでも中原の敗因は今週の中座飛車と同じ。駒アタリ奇数番1しかない。だから久保に簡単に受け切られてしまう。逆に言えば中座飛車とゴキゲン中飛車という戦形で全面駆使の王道を行くなら最終盤勝負しかない。先手の利を放棄してこのようなバカ単純な戦形にさえ全面戦争の構図を描ける中原こそ絶賛するべき。フツー人はもっと手堅く行く。
本譜では121手めの64成桂が最後の敗因。125手めの31龍がハッキリ緩手。しかしここまでゴキゲンで指せるのかと思うと惜しい。そこで中原逆転勝ちの作図開始。

棋戦:棋聖戦最終予選を元にしたマシュダ一家杯
日時:2004.02.06
先手:中原誠永世十段+MF1
後手:久保利明八段+MF2

▲7六歩 ▽3四歩 ▲2六歩 ▽5四歩 ▲2五歩 ▽5二飛
▲7八金 ▽5五歩 ▲2四歩 ▽同 歩 ▲同 飛 ▽5六歩
▲同 歩 ▽同 飛 ▲6九玉 ▽3二金 ▲2八飛 ▽2六歩
▲5七歩 ▽7六飛 ▲7七金 ▽7四飛 ▲2六飛 ▽6二玉
▲2八飛 ▽2三歩 ▲4八銀 ▽7二銀 ▲6八銀 ▽7一玉
▲9六歩 ▽4二銀 ▲5六歩 ▽3五歩 ▲6六歩 ▽2四飛
▲2五歩 ▽3四飛 ▲7八玉 ▽8二玉 ▲7六金 ▽4四歩
▲6五歩 ▽3三角 ▲6七銀 ▽4五歩 ▲7七桂 ▽5三銀
▲5七銀 ▽4二金 ▲9五歩 ▽5二金寄 ▲8六歩 ▽6四歩
▲同 歩 ▽同 銀 ▲6五歩 ▽5三銀 ▲5八金 ▽3六歩
▲同 歩 ▽同 飛 ▲3七歩 ▽3四飛 ▲6六銀右 ▽6三金
▲5五歩 ▽6四歩 ▲8五桂 ▽6五歩 ▲同 銀 ▽8四歩
▲9三桂成 ▽同 玉 ▲2四歩 ▽6六歩 ▲同 銀 ▽2四飛
▲9四歩 ▽8二玉 ▲9三歩成 ▽同 香 ▲同香成 ▽同 玉
▲2六香 ▽1四飛 ▲2三香成 ▽4四角 ▲2五飛 ▽6四歩
▲5六銀 ▽9七歩 ▲9四歩 ▽8二玉 ▲8五歩 ▽5七歩
▲同 金 ▽9八歩成 ▲7七角 ▽6五桂 ▲9五角 ▽5七桂成
▲同 銀 ▽9七と ▲6七玉 ▽9六と ▲8四角 ▽9二歩
▲3六桂 ▽3三桂 ▲同成香 ▽同 角 ▲2一飛成 ▽6五歩
▲2四歩 ▽6四銀 ▲7五桂 ▽7四金 ▲6三桂成 ▽5一香
▲3二龍 ▽4二金 ▲7二成桂 ▽同 金 ▲3一龍 ▽7五香
▲9三歩成 ▽同 歩 ▲6五銀 ▽同 銀 ▲同 金 ▽同 金
▲5一龍 ▽5六歩 ▲7七歩 ▽5二金打 ▲6一龍 ▽5七歩成
▲同 玉 ▽6二金左 ▲9一銀 ▽同 玉 ▲9三角成 ▽8三銀
▲6二龍 ▽5六銀 ▲4八玉 ▽9三桂 ▲7一銀 ▽8一銀
▲6一龍 ▽7七香成 ▲8四歩 ▽5五角 ▲8三歩成 ▽6六角
▲3八玉 ▽8三金 ▲9二歩 ▽同 玉 ▲6二龍 ▽8二歩
▲4二龍 ▽3五歩 ▲7二銀 ▽4七銀不成▲2八玉 ▽7二銀
▲同 龍 ▽3九角成 ▲2七玉 ▽3六銀成 ▲同 歩 ▽2四飛
▲2五歩 ▽同 飛 ▲1六玉 ▽投了

177手で先手の勝ち

マシュダ一家変化解題
135手め77歩=銀を捨てて香筋を遮断しないと先手負け。
136手め52金打=竜王戦森内の発想導入。
166手め47銀不成=いずれの変化も後手の狙い筋。
175手め25歩打=この中合いで詰まない。金を与えない成果。
177手め16玉=序盤で16歩を突かない変化の意味。
以下先手玉は詰まない。後手玉は必死。

上記変化は時間切迫の実戦では4-1で後手が圧倒的に勝ちやすい。77歩などまず打てないであろう。そこで実戦前に以下の構想基盤を確認しなければならない。
1=序盤からの一貫したコンセプトは16歩不突き。玉が逃げる最後の地点を確保。
2=
後手入手の金を攻めに使わせない。即ち金を後手陣へ打たせる。
3=後手が「寄せアリ」と確信するであろう局面まで歩で徹底挑発。
4=主役は中原36桂。戦死するまで24飛を阻止。