2003.04.13NHK杯戦 勝浦VS南
ゴキゲン中飛車 3手め16歩の考察
参考 ゴキゲン中飛車分析1-10 第三ドメインの欠陥
MashudaBBS2003.04.13-14
表題:第53回NHK杯1回戦第2局
棋戦:NHK杯
戦型:ゴキゲン中飛車
先手:勝浦 修 九段
後手:南 芳一 九段
▲7六歩 ▽8四歩 ▲1六歩 ▽3四歩 ▲5六歩 ▽8五歩
▲5八飛 ▽3二金 ▲4八玉 ▽4一玉 ▲3八玉 ▽6二銀
▲2八玉 ▽1四歩 ▲3八銀 ▽3三角 ▲同角成 ▽同 金
▲8八銀 ▽8六歩 ▲同 歩 ▽同 飛 ▲8七歩 ▽8二飛
▲7八金 ▽3二玉 ▲5九飛 ▽4二銀 ▲7七銀 ▽6四歩
▲6六銀 ▽6三銀 ▲5五歩 ▽7四歩 ▲7七桂 ▽7三桂
▲8九飛 ▽8五歩 ▲4六歩 ▽4四歩 ▲4七銀 ▽3五歩
▲3六歩 ▽同 歩 ▲同 銀 ▽7五歩 ▲同 銀 ▽6五歩
▲5六角 ▽5四歩 ▲6五桂 ▽同 桂 ▲同 角 ▽6四歩
▲4七角 ▽5五歩 ▲3八金 ▽5二金 ▲3五歩 ▽4三金上
▲2六歩 ▽8一飛 ▲6八金 ▽5四銀 ▲7四角 ▽5三金
▲3四桂 ▽3一銀 ▲5七金 ▽4三金左 ▲4五歩 ▽7三歩
▲4四歩 ▽同金直 ▲6四銀 ▽同 金 ▲5二角成 ▽2四桂
▲2七銀 ▽4三銀 ▲5三馬 ▽5四金右 ▲6三馬 ▽6一飛
▲7二馬 ▽6四飛 ▲7三馬 ▽6一飛 ▲7二馬 ▽6四飛
▲7三馬 ▽6一飛 ▲7二馬 ▽6四飛 ▲7三馬 ▽5三角
▲4二歩 ▽3五金 ▲4一歩成 ▽同 玉 ▲4九飛 ▽4五歩
▲6四馬 ▽同 角 ▲6一飛 ▽5二玉 ▲6四飛成 ▽同 金
▲3二歩 ▽3七歩 ▲同 桂 ▽3六歩 ▲4五桂 ▽3四銀
▲3一歩成 ▽4五銀 ▲4四角 ▽4六桂 ▲3五角 ▽3八桂成
▲同 銀 ▽3七銀
南の注目すべき一手は8手めであった。固唾を飲んで見つめる場面である。このような所は無音の画面を見ているときが最も楽しい。果たして南はゴキゲン第一ドメイン52金を選択するかと期待するのである。緊張のひとときであった。ところが南は1分も考えてなんと32金である。これでこの将棋は勝浦があとはいかに手将棋を崩して往年の閃きを見せてくれるかという興味でしかない。佐々木までも倒して勝ちあがってきた勝浦の研究など関西の魔王南にはどうでもよいということであった。福ちゃん研究会はやはりお茶のみ会なのであろうか?福崎は白髪もきれいに染めて碓井に若いところを見せようとしているのに南は見せ場を知らない。取り柄は正座しかなくなってしまったがあれは腰が抜けているのであろう。勝浦の43手めはハッキリ驚く。先週のタナトラ顔負けの咆哮であった。しかし腰抜け相手に別に41手めに36歩でなくてもよいのである。勝浦に勝ち筋はあった。そして勝浦の中盤の構成力の方がはるかに面白い。序中盤の構成力というものは年に関係ない。将棋も囲碁と同様に年期が利点に感じられるようなゲームでありたい。本局の勝浦に棋道を感じたのは我々だけなのであろうか?
ゴキゲン中飛車における早めの端歩の意味を示唆したのは2003/1/23&24王将戦2局羽生善治VS佐藤康における康光の8手め94歩である。
http://www.bekkoame.ne.jp/i/yusai/030124ohsho02.htm
これは羽生の第一ドメイン58金に対する康光の遠大な構想の為の打診である。
この94歩は突き越すという意味として実践では顕在化したが、ゴキゲン第2ドメインの75角打ちには15角という変化がこの94歩で消滅する為に74歩が後手からのグランサタンとして成立し得る。しかしこの驚異の94歩に対して羽生は継続手の95歩を緩手にする強行手を選択したために全く違う変化となった。
勝浦の3手めは16歩である。この歩は既にこの一年で奇異なという表現もトップ棋士解説でされなくなった。マシュダ一家総力をあげての藤井システムへの援護射撃が実り棋士のある種の衒いが隠滅した為である。一年以上前はまだこの早めの端歩に驚きと共に違和感を覚える棋士が多かったことは様々な記録が立証している。藤井システムは素晴らしいなどと言いつつも心の中ではこんな手が棋理となるのでは困るというようなニュアンスを彼らは持たせていたのであった。だから難解だなどと言って褒め殺しだけして藤井システムを真似すらしなかったのである。ところが勝浦は先手番でゴキゲン中飛車であった。ゴキゲン中飛車とは後手番戦法である。先手がゴキゲン中飛車をやりたい場合、この歩を突くことで84歩を突かせ自ら後手番となることがある。この手法に我々は先月まで否定的であった。藤井システム以外の選択肢として3手めの16歩は志が低いということである。ところが先月の朝日オープン準決勝の羽生山崎戦を先後逆に読むことでこの先手の3手め16歩に作戦勝ちとなる意味が付与されている。あの時と同じ変化になった時に後手は15角と王手にすることができない。しかしA級順位戦の羽生青野戦のようになってはゴキゲン有利である。勝浦はそのテーマを南に堂々とぶつけたということである。予選を若手トップから勝ち抜いてNHK杯に颯爽と登場した老練勝浦にこの3手めで凄まじい迫力を感じる。
石橋幸緒は将棋ばかりか話術の達人である。言葉が洗練されており師匠の清水などとっくに越えている。このような優秀な人材をもっと使って頂きたい。矢内は一年で十分である。また囲碁将棋ジャーナルの司会が矢内ではこの番組が嫌になる。NHK講座の清水の内容のなさとワザトらしい演技には一回で懲りた。ビデオの録画の時間を変えたのは清水が初めてである。深浦中井コンビが初心者用に行なった講座は番組としてレベルが高かったがここまで低下した講座はNHK始まって以来であろう。
本日放映のNHKの囲碁将棋ジャーナル取材陣のインタビューで羽生はこのようにハッキリ述べている。
「(森内名人とは)20年位のつきあいになりますかね。子供の大会の決勝でよく顔を合わせたふたりが名人戦という一番の大きな舞台で戦えるわけですから、まあそういう意味では非常に有り難いというか、よかったナと思っています」
北浜は初出演であるが今後何度も出して頂きたい。「名人戦はフルセットまで行く」などと説得力ある発言ができるのは北浜だけである。普通なら「フルセットまで行ってほしい」などと言うところである。最近の矢内の突っ込みのナサは連盟の圧力であろうか?