2002.2.17NHK杯 急戦中飛車-飛車先交換型

佐藤康光VS田村康介

肉体疲労のラブコール

マシュダ談 2002.2.17  2002.2.18UP


「田村五段のゴキゲン中飛車で11手まで王将戦第3局と同じです」

「この収録日わからんの?」

「王将戦第3局前のはずですが」

「NHKも放映後に収録日をテロップで入れてもらわんとね。秘密主義はいかん」

「12/82玉です」

「康光は王将戦第3局でここを62銀に改良した。それを見て羽生は問題の13手めに46歩をついたわけね。康光はそれを想定して14手めで33角として角交換強いるという作戦を練ったが、そのきっかけがこの対局のはず。なおさら収録日をテロップで入れてもらわんと」

「佐藤先生大長考で13手め24歩です!」

「康光は46歩のデメリット知っとる上に53地点が無防備じゃから行ける。53に角が打てるかその先を読んだね」

「24歩と突く時の大長考で田村五段は佐藤先生を何度も睨んでいましたが」

「康光は逃げない。田村はこれ得意。突くと思ったんじゃろ。その後の変化に自信もっとるからね。大内門下の猛者はみーんな師匠譲りの中飛車好き。康光はその中飛車軍団に独りで立ち向かってる。それが果敢に映るんで田村はガンたれる。ラブコールかもしれん」

「歩の交換、角交換後18手めで22飛」

「定跡手順。谷川も王将戦解説でこれ言っておったね」

「今日の解説も谷川先生です」

「通りですらすら言えるはず。だったら尚のこともちっと突っ込んでもらわんとね。羽生の46歩が危険手とぐらいは言ってもらいたかった」

「19/23歩ですが」

「飛車交換すると手順に銀を上がられ、自陣飛車まで打たされて面白くない」

「21/28飛」

「角で狙われるからトーゼン」

「22/72銀」

「田村はこーゆーとこ呑気。相手が康光であることにまるで脅威を感じとらんね。康光の24歩の長考の意味を定跡確認と思ってラブコール送ったか」

「23/53角」

「当然打つ」

「24/32金」

「定跡手順。 急戦中飛車-飛車先交換型24手組。ここらで田村、煙草吸うのかね」

「25/75角成。煙草吸う暇ありません」

「26/33桂馬か。肩が凝る戦形。11-33の四辺形は囲碁。ここをゆっくり解きほぐすのが醍醐味という煙草好き戦法。どこかでゆっくりせんと煙草吸えん」

「真綿でしめる首ですね」

「康光は馬を作ったが歩を打たされ、ここからの攻め筋がむずかしい。後手はすでに美濃が完成し先手の隙を伺うだけ」

「27/77桂馬です!」

「いきなり53地点狙い!凄まじいど迫力!」

「角を合わせるのは?」

「全然ダメ。桂馬跳んで21に隙がある。こりゃ受けてられんね。だから康光は怖い。呑気にラブコールやっとる暇なかったワイ!」

「28/44角です。田村五段大長考でした!」

「なーにやってんだか。ただ受けるだけの角。こりゃおしまいじゃね」

「田村五段ここで煙草に手をかけライター探してます」

「あわてふためいておるよ。情けない。精神レベル丸見え。しかも最初から上着など脱ぎおって」

「上着を脱ぐのはどういう意味なんですか?」

「飲み屋でケンカする時はまず上着を脱ぐ」

「それで今度は煙草で威嚇ですね」

「もー威嚇できん。康光は温泉気分。馬作ったから、あとは一歩入手すれば勝ち。後手の攻めはただ受けておればよい。後手は角が丸見えの上、32金がまるで使えんから楽勝」

「74/92玉です!」

「今ごろ大内流だしても師匠に怒鳴られるだけ。禁煙せんと康光には絶対勝てん。田村の肉体疲労見るような残酷な将棋。タイトル奪取する者の恐ろしさが身に染みたじゃろ。康光が脇息に身を傾けた姿は美しい」

「では一言」

「田村!ニコチンを抜け!」


89手にて佐藤九段勝ち