シーン2
HELLO

「なあアニキこれからどうすんだい?」
「あぁ、始めるさ。計画どおりにな。人もそろったことだしよ。」
砂漠の中には町が点々と散在するが、ここは数十年前に捨てられた廃虚の町。
その崩れかけた建物の中で二人の男が話していた。一人はオレンジのシャツにパーマのかかった短い髪。そしてもう一人オレンジのシャツの男が兄貴と呼ぶ、黒のスーツに鳥打帽をかぶった、痩せて髭のある男。
「さぁ働いてもらいますか、みなさん。」
髭の兄貴は細く通る声で言った。

「つーかマリオ。この人達なに?」
「さあね、なんだろね、ただの盗賊じゃなかったみたいね。」
「でも、オレら縛られてるぜ?」
「まあ、怖い人達には違いないみたいだね。」
「だな、拳銃突き付けて話しかけて来る人にあまりいい人いないだろうしな。」
マリオとジンノは手足を縛られてほこりっぽい部屋の片隅に座らされていた。
「ハイハイハイ、それはこれから説明するから、ちょっとオレの話を聞いてくれ。」
髭の兄貴がパンパンと手を叩いて言った。オレンジのシャツの男はドロリとしたナマズの様な目でこちらを見ている、彼の銃口はこちらを狙ったままピクリとも動かない。
静かに聞けよ。その銃口がそう言っていた。

ガタガタガタ
「ん〜!!!!」
さっきから気になってたんだけど、俺達のほかにも連れて来られた奴がいるみたいだ。ていうかいるんだけどね一人。なんだかそいつは縛られてるだけじゃなく口をガムテープで止められていた。かなり怒ってるみたいで、叫べはしないんだけどうんうん唸ってヤなオーラを出してたんだ。
「おい、オレンジ。その女の口のヤツとってやれ。」
髭の兄貴がオレンジのシャツに言った、オレンジと言う名らしい。なんだいつもオレンジのシャツなのかよコイツは。
「また、うるさくするゼ、この女。」
「いいんだよ。そろそろこのお嬢様にもちゃんと理解してもらわなくちゃいかんからな。」
「まあアニキがそう言うんならいいけどよ。」
ほらよ。ビッと瞬間的にガムテープは剥がされた。
「あーーー!痛い痛いイタイぃ〜!なにすんのよアンタ、私の美し〜いこの肌が荒れちゃうじゃないの!バカじゃないの。レディの扱いも知らないなんて、なんて野蛮なのかし・・・・ん〜!」
マシンガンの様にまくしたてて喋り出したその少女の口をだまらしたのはオレンジの拳銃だった。
少女の口の中に拳銃をつっこんでオレンジは言った。
「なぁアニキだから言っただろう。」
「あぁそうだな。だけどお嬢さんもよーく分かったらしいぜ。」
ああ、俺もよく分かった。ジンノもよく分かっただろう。オレンジの凄味ではない。それもあるんだが、オレンジが銃で脅かしている時、髭の奴が後ろでじっと少女を見ていたその目だ。死んだら死んだでしかたないな、とでもいいたげな凍えるような冷たい目。あ〜ヤバいよ、この目は、今まで何の感情もなしに何人か殺してきた目だ。それにコイツは身なりからして少し知性を感じさせるところがある、こーゆーのが最低にヤバイんだってばよ。

静かな空気が流れる中ジンノが口火を切った。
「で、おじさん。話って何?」
「そうよ、いきなりつれてこられて何なの?あんた達?」
女もさっきよりいくぶんおとなし目にたずねた。まあ、それでも彼女のムカツキが顔にありありと出ていた。なんて女だ、自分の状況わかってんのかね。
髭の男はわかったから静かに、と言う様に両手をパッと上げた。
少し間を開けて、髭の男は口を開いた。
「だから、これから説明する。よく聞くように。君達の生死に関わる問題だからな。」
あ〜やっぱりそう来たの。つまりはこのまま帰してはくれないわけね。逃げたらあの男らしい拳銃でバン!変なコトに巻き込まれちまったなぁ。なぁ、ジンノ?
・・・・・ああ、ダメだ。ジンノすっごく楽しそうな顔してるよ。コイツはこういうトラブルを楽しむヤツだから。
「なあなあマリオ、なんだか面白くなってきたよな?な?」
はぁ前途は多難です神様。
信仰なんてこれっぽっちも持ってないけど、とりあえず俺は祈ることしかできなかったよ。本当に。

シーン3続く