生命の星

written by UTUMI Mario


生命の星
序章

うわわあわわあああああああああ
五万以上の声が空間を埋めつくす
ステージに彼が現われた

「ルーシー・テラ・ナティー」

一ヵ月前にデビューしたミュージシャンだ。
透き通るような白い肌、ととのった顔立ち、薄い色のサングラスから覗く見透かしたような瞳、細みの体に腰のあたりまである黒い髪、妖しさの魅力をもつ彼。
ある大手のプロダクションからの記者会見で「今世紀最大で最後の新人」と発表され、テレビ、ラジオなどすべてのメディアに公開、翌週のCD発売と同時にセールスがミリオンを突破、現在すべてのセールスの記録を破り、ルーシー効果と言われる経済効果まで引き起こす人気の加熱ぶりはこの国でけでなく全世界へも飛び火していった。
そして今回初めてのツアーコンサートが行われる。

鳴りやまない歓声、ルーシーがマイクスタンドに近づいていく。高鳴る鼓動、観客はいつの間にか手を握り締め息を殺している会場の音が一つまた一つ消えていき動くものはなにもない。
ルーシーの唇が軽くマイクにふれる。
「・・・ようこそ僕の世界へ。」
頭の中に直接ひびくような声、そしてスピーカーから音が流れる。
「ヘヴンズ・ゲイト」彼のデビューシングルだ。そして彼の声が歌う。
うわああわあああああああああああああ
空気を震わして観客が叫ぶ、吠える、しかしルーシーの声はそえれさえも歌にとりこみ言葉をつむぎ投げかける。
「もっと・・・もっとだ!。」

「私が見たすべてのものより感動をあたえてくれました。」
「サイコーすげーよアイツ!。」
「もうすごかったです私終わったあと座りこんじゃってしばらく立てなかったんですよ。」
「オレさぁはじめてコンサートで泣いたよ、いやマジで。」
音楽雑誌はもちろんのこと新聞、そしてBBCニュースまでも大々的に彼のことを取り上げた。
中には批評の声ももちろんあったが、そのほとんどがねたみや嫉妬による感情的な言葉でそのことがさらにルーシー・テラ・ナティの人気を不動のものにした。

ガチャ
マンションのドアを閉め内側から鍵をかける。
「ふうっ・・・なあどうだった今日のできは」
ルーシーは冷蔵庫からエビアン水を取り出してグラスに注ぎながら聞いてみた。
「いいかんじだぜ。おまえの声はもちろんだがホールの環境や音響設定もトラブルなくいったみたいだな。」
「そうか・・それはよかったあの音のどれか一つでも欠ければこのシステムは作動しない、まあ今はまだ実験段階だから最高の環境とは言えないが。」
「ルーシー言っておくがムチャはするなよ少しづつやっていけばいいんだからな。」
ルーシーは唇の端を少しゆがめて笑う。
「ははは心配してくれるのかい?君には感謝しているよ。大丈夫、今僕は最高の気分なんだ。なにせ音楽のことだけを考えていればいいんだからね。生活のいろいろのことは君がやってくれる。」
「そのことだが、おまえもそろそろ人と話せるようになれよ。本当にこんなとこはいつまでたっても子供なんだから。」
「うるさいなぁもう!わかってるよ!っとそれより千里さん来たみたいだよ、じゃ、あとたのんだね、おやすみ、ナティ。」
「あっもうルーシーのヤツ!。」
玄関からの音、ハイヒールの足音がとびらの前で止まりインターホンを押す指の爪の音
受話器を取ると千里さんの声が聞こえた。
「はろールーシー元気ぃ〜?。」
なんか間の抜けた声だがこれでもルーシーの専属マネージャー仕事は腕は最高だ。
「ああ千里さん今カギ開けるからまってて。」
オレは手元のリモコンを操作してドアのロックを解除した。

「ハイ、ルーシー今日は最高だったわよ。」
「ああ、ありがとまああがってよ。それとすまないんだが仕事以外のときはナティって呼んでくれないかい、どうも落ち着かなくってね。」
「ああ、そうだったわね。・・・じゃあナティ、これたのまれていたものね。」
そう言って千里は紙袋をテーブルの上においてソファーに腰を掛けた。
オレは紙袋から、箱を取りだし中のコンピューター部品を確認しうなずいた。
「うん、これだよよく見つけられたね。」
「昔のつてでねそういうのに詳しいヤツがいるのよ、でもそいつが聞いてたわよ。こんなのオマエが使うのかって、私が友達にたのまれただけよって答えたら、そいつに一度合わせてくれないか?そいつとは話が合いそうだとか言ってたけど、まさかルーシー・テラ・ナティよ、なんて言えるわけないから適当にうけながしてたけど、なんなのこれ?。」
「ん〜説明すると長くなるから?いい?。」
「それならいいわ。」
こういう淡泊で切り捨てる時間を知っているこれが彼女のマネージャーとしての才能だろう。
まあこの部品のことを聞かれても困るんだがな。
これはルーシーの担当だ。
「じゃあナティ明日のスケジュールはこれに書いてあるから遅れないようにね。」
テーブルにメモを置いてさっと風のように去っていった。
「ひゃ〜相変わらずてきぱき動く人だね。」
ルーシーだ。人がいなくなるとすぐ出てきやがる。困ったもんだ。
「さあナティこれからは僕の時間だよ、野望の第一歩だ。」
そうルーシーが言っているうちにオレは眠りについた。

第二回へつづく
やあ私はまりお、つづきができたよ暇なら読め!
眠たいなら寝る グー