視覚障害者介助の具体例〜こんなこともある、わかっていても気がつかない

神戸市 松本昌三
(☆の番号は後の川柳を参照のこと)


A 基本的理解のてがかり

1 全盲と弱視

このそれぞれにも視力の程度、種類(視野・明暗の弁別)がある。

2 同じ人でも同じ視力でも慣れたところかどうか、自分の視力にあった条件かにより、行動にちがいがでる。

3 全盲またはそれにちかい人でも日常の環境により3タイプにわけられる。

A 手引き慣れの人→普段家族や特定の人の手引きがなければ歩かない人、また手引きはいろいろな人にしてもらうが単独歩行は原則としてしない考えの人。

B 歩行慣れの人→手引きをされて歩くことも多いが原則として慣れたところは単独歩行をする人。

C 弱視の人→視力にも個人差が大きく不安なく歩ける環境にも制約のある人、そのことをなかなか表明できないで手引きをされて歩くことを原則としてはしないか、いやがる人。

Bのタイプは白い杖が十分前にでているがA・Cのタイプの人は杖が前にでていない。そのために、つまずいたり、ふみはずしたりすることが多い。

以上の類別は全く私の個人的見方であるが、このタイプによって手引きや案内の方法も異なってくる。初対面の人にたずねることもできず対応はむずかしい。 ☆24 しかし介助の経験をふむにつれて、すこし観察をすれば視線のむけかた足のふみだし方などで、ある程度わかるものである。

B 介助の具体例

1 広い会場やホールなどへの案内

(1)入口付近で場内の様子をことばで教えること。例えば何人ぐらいの収容か、椅子は固定ではねあげ式のものかパイプ椅子がならべてあるかなど、舞台の方向を知らせる。階段が不規則なつくり(ステップが広かったり狭かったり変則的なものが多い)になっていることは、ある程度予測はしている人が多いが実際に歩きだしてからそのことを知らせる必要がある。 ☆1・2 スロープになっているところでは「ここからスロープです」と教えると安心感を与える。

(2)横に座った場合には舞台の様子や出演者の動きを必要な範囲で小声で知らせる。あまり必要でないような態度であればたずねられたことだけを答えるのがよい。

(3)弱視の人の中には暗くなると急に視力がおちるため不安感をもつ人が多い。このときは「こちらから入りますよ」「ふたつむこうへいってください」など手をふれないで声かけによってそれとなく知らせてあげる配慮が必要である。

(4)トイレや買い物などにたつ場合は隣の席があいているかどうか通路まで何人分の席を通るのかを知らせてから誘導すれば予測が与えられる。歩行慣れの人では状況を知らせて単独で歩かせるのがよい場合もある。

2 会議室・集会室などへの誘導→部屋に入ったらどのくらいの席があるか正面はどちらになるかを知らせる。机のあるときは、その並び方の概略を知らせる。例えばコの字型に並んでいるとか全席が正面にむかって座るようになっている(教室式)など。それぞれの机のところでむかいあわせになっているかも教えてもらえればありがたい。これでメンタルマップが頭の中に描ける。円卓の場合もわかりにくい。喫茶店では、4人がけで2人ずつむかいあわせになど座る前にヒントがあればまごつかない。

3 食事の介助 ☆7・8 →全員に同じ料理や弁当をだすときは、はじめに全員に対して内容を概略説明するのが能率的である。このときクロックポジションで(時計の文字盤の位置になぞらえて)説明するのがよい。例えば12時のところにトマトが、9時のところにハムがのように。これは弱視の人や歩行慣れの人に場所を教えるのにも使える。「ここから9時の方向にトイレが」 ☆6 「10時のむきに売店が」など。お茶をくばるときは八分目についで必ず「お茶を置きます」と声でいいながら軽く音をさせて置くのがよい。置いた後、見えない人が、すぐに動かす場合もあるのでもとの位置にもどさないこと(自分のおぼえの位置に置こうとするためにこのように置きかえる) ☆10 刺身のわさびをいれてあげるとか、しきりのはらん(ビニール)をとりのけてあげるなど細かい配慮もいる。しかし横の人に自分で頼む人もあるので声かけはひかえめに。ビールや酒をだすときは種類(ビールか酒かジュースか)をいうことが必要。知らない人もあるので缶ビールに「ビール」「サケ」と点字で書いてあることを知らせるのもよい。 ☆9 あいた容器や茶碗をかたずけるときは声をかけてからのけてあげる。

4 お茶をだすとき→茶碗には八分目につぎ軽く音をさせて置く。やや離れた位置に置くことも必要、このときは3時の位置に置きますなどクロックポジションで知らせる。本人の前に書類やパンフレットが置かれているときも同じ。コーヒーや紅茶の場合砂糖やミルクをいれてあげるか本人がいれるかは、たずねてあげるとよい。自分でいれたいと思っている人もある。クリームソーダやウインナーコーヒーなどクリームが上にのっているときはそのことをそっといってあげるのが親切、ただし自分で注文をした人はそのことは先刻ご承知で経験のある場合もある。ケーキのときもまわりの紙をとってあげるなどの配慮がほしい。上にのっているいちごやクリームをおとして困ることがある。喫茶室などでは狭いため席につくときや立ち上がったときにテーブルの上のコップやスプーン・灰皿、勘定書の板などを落とすことが多い。椅子の背もたれをさわらせて自分で座らせるのがよい。歩行慣れの人なら背もたれをもてば、どんな椅子がどちらの向きにあるのか、すぐにわかる。 ☆23 大きい植木鉢の置いてあるのも困る。

5 狭い歩道を誘導するとき ☆16 →手引き慣れの人では介助者が後ろに手をまわしてそれをつかまえさせるのがよい。二人以上を介助するときには前の人が手引者の右側にくれば後ろの人はその左側につかまるようにするのがよい。(千鳥になって歩くのが横にひろがらず、ぶつかることもすくないから)障害物があることやまわりの様子を話しながら歩くのもよい。弱視の人には手引きをしないで「まがりますよ」「車が片足駐車しています」など、そっと告げるのがよい。「今日はよいお天気ですね」などなんでもない話でも話しながら歩くことは同行者との距離を知ったり、離れていないことの確認に役立つ。 ☆4

6 建物や駅構内に入るとき→急に外よりは暗いところに入るので歩く速度をややおとすことも必要。階段は手前でたちどまり ☆1 「階段を上がります(降ります)」とことばで告げる。(上り下りをいわない手引者が多い) ☆2  上がりきったとき、降りきったところでもすこしたちどまればわかりやすい。 ☆1

7 バス電車などの社内での誘導→前の席があいているときは「すぐ前があいていますよ」といってもらえばよい。すこし離れた席でその方につれていってもらっても席の方にむかっていないため右か左かがわからないときがある。見ていればすぐにわかるので「そこがあいています」となるができれば右か左かを教えてほしい。バスの前むきの席では背もたれか、ひじかけに触れさせてもらえばわかる。(必ずことばをそえること)電車やバスに乗るときは歩行慣れの人なら入口の前で手引きしている手をはなして自分で乗ってもらうのが安全(ひっぱったり危ないと思って抱えると、かえってぶつけることになる)

○私のつぶやき→以上は私の経験で書いたことです。いろいろな人(視力)やいろいろな状況があるのでこれとちがったり反対のこともあると考えてほしいのです。トイレの洗面でこちらの腕をとってひっぱられ頭を柱にぶつけた経験もあります。 ☆6・14 このときは水をすこし流してもらえばその音で自分で進みます(方向がさだまらないので壁などにそって歩こうとして、こうしたことがおこるのです) 大きな声でいえませんが(小さな声ではきこえませんが)ありがたいのですが単なる親切心で誘導されるよりは声でいってもらうか見ていてもらった方がよいのです。そういう人にかぎって黙って腕をむんずとつかまれます。(ごめんなさい) ☆14

◎見えない世界のバリア川柳     まさみ作(まさみは松本昌三の川柳名)

1 階段は 一歩手前で とまってね

2 階段の上り下りは 告げられず

3 さげ袋 これでも 障害物 わかり (ちょっと前にだしていると、わかるもの)

4 なにげない 天気の話も 距離わかる (私は歩けるのよ、でも)

5 早く見ろ いわれても こちらは ちょろ目だよ (ちょろ目とは弱視のこと)

6 水道を 流せば 場所は すぐわかる (なんでも音です)

7 気をつかう 中華料理は ごめんだよ (とりわけてもらうのに気をつかう)

8 会食で ここはがまんの 好き嫌い (なんでもいいですよ)

9 乾杯に ビールのグラスを さしちがえ (全盲同志が、どこや?どこや?)

10 位置確認 茶碗を自分で 置きかえる (自分で置けばおぼえていてこぼさない)

11 音声でも 体重計は 恥ずかしい (イヤホーンのついたものもある)

12 エレベーターを エスカレータと 教えられ (それほどの緊張?)

13 白い杖 他人の 携帯に 返事する (見えていれば、なんでもないのだが)

14 こわいのは 無言で 腕を つかむ人 (これが、いちばん多い)

15 困ります じいちゃん なぜなぜ 傘つくの (じいちゃんは目が見えていた)

16 動くなよ キャスターつきの 立て看板 (狭い歩道、夜になってからにして)

17 すぐ前と いわれて ポスト 横にそれ (前は見えません)

18 駅名が ききとれないよ 生徒たち (大きい鞄を置いて大声でしゃべるなよ)

19 この傷は 雨の日の キッスマークです (柱とガチャン)

20 蹴飛ばして やりたい ブロック上の物 (足をうって痛いときはこう思います)

21 低床バス 段差が 狂い よろけかけ (いつもの3段だと思っていたら)

22 白い杖 まっすぐゆきなは せっしょうだ (このようにいう人もいかに多いか)

23 洋服が かわりましたね ガイドさん (バスガイドじゃありませんよ)

24 初心者は 手引かれ下手で 苦労する (どちらも気をつかって)

25 すまないが 紙幣のマークは 頼れない (大蔵省は、きかんといて)

26 バラ銭を 優先席で よりわける (優先席に座れば手があきます)

27 そこ そこと いう 間に 君なぜひろわない (右や!左や!と、うるさいな)

28 楽しみは 目なし草での 一人旅 (なんと気楽な旅だなあ)






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このページの著者は松本昌三です。編集は松本吉生です。メールの宛先はyoc@bekkoame.ne.jp