インターネットによる特許情報の利用

住友電工知財テクノセンター(株)
技術情報センター  臼井 裕一
(C)1998 Yuichi Usui All rights reserved.

1.はじめに

 インターネットの商用の利用が可能になってから、まだほんの数年しか経っていない にもかかわらず、現在インターネットにアクセスできなければ情報を扱うプロとは言え ないのみならず、仕事にならないという状況にまでなってきている。しかしながら、実 際に仕事でうまくこのインターネット上の情報を使いこなしている人は残念ながらほん のわずかであると言っていいだろう。
 この理由のひとつは、よく言われるようにインターネット上の情報は玉石混淆である 、言い換えれば情報の信頼性が必ずしも保証されていない点にある。また、もうひとつ にはその情報量のあまりの多さに有用な情報が埋もれてしまっている、言い換えればど こに求める情報があるのか探すのが非常に困難であるという点があげられるであろう。
 しかしながら実際問題としてインターネット上に有用な情報があるのは事実であるし 、また最近ではインターネットでしか得られない情報も出始めている。従って、特にわ れわれのように情報を扱う者は好むと好まざるとに関わらずインターネットをうまく活 用する方法を身につけなければならないであろう。

2.なぜ特許情報が、、、

 インターネット上の情報である程度信頼性の面でも間違いが無く、比較的利用しやす い情報として政府関連の情報と特許情報とがある。そもそも特許は一定期間発明者に独 占的にその使用権を与えるかわりに、その技術内容を開示して技術の発展にひいては社 会の発展に寄与するようにという性格を持っているため広くインターネットで公開され るようになるのは、ある意味で当然ともいえよう。また特許では技術内容を開示するた めに公報が発行されるが、比較的早い時期から電子化が進みこういった意味からもイン ターネット上で公開するための準備が早い時期から整っていたともいえよう。現在、イ ンターネット上で米国特許商標庁、日本特許庁、世界知的所有権機関(WIPO)で無料で特 許情報が公開されているが、この7月から三極ウェブサイトで日米欧の英文抄録が無料 で提供される予定となっており、これで世界の特許情報の約9割がカバーされることと なる。この詳細は特許庁のウェブサイトに説明がある。このように特許情報はその性格 上、また三極のハーモナイゼーションの動きに連動して特許庁から無料で提供されるよ うになってきている。
 これら公の機関が提供する以外にも、インターネット上では早い時期から特許情報が 無料であったり、あるいは非常に安い価格で提供されてきている。これらはあるいは有 料のサービスの一部を無料で提供したり、あるいはドキュメントデリバリのためのサー ビスであったりするが、うまく利用すれば非常に有力な武器になりうるであろう。

3.実際の利用

 日本特許では、まず特許庁が公報ジャーナルとして特許、実用新案、公表公報、再公 表公報について平成10年4月以降の公報全文を提供している。これは当初最近1カ月 分のみということであったが、現在は4月以降全てを提供することになっている。非常 に有益なサービスではあるが、非常に混雑していて繋がらない場合が多かったり、出力 の仕方等にもう少し考慮して欲しい点等はあるが、こうしたものが無料で提供されるよ うになった点は評価できる。また特許庁の提供するサービスでは平成5年の1月以降の 公開特許公報のフロントページ検索ができる公開特許公報フロントページ検索サービス もある。
 この他には会員制で有料のサービスとして野村総研のNRI、グリーンネットのG・ネ ット、ニッパツのNEF・NET、富士通のATMS等がある。これらはNEF・NETを除いて全て平成 5年以降の収録であるため特許庁の提供する無料のサービスと競合することになる。今 後の動きに注目する必要があろう。
 海外の特許情報では米国特許については、特許商標庁が提供するもの以外に多数ある が主なものには、Shadow Patent Office、QPAT-US、ChemicalPatents Plus、IBM Patent Server等がある。それぞれ使い勝手や出力形式が異なるので、それぞれの特徴をよく 把握した上で使用する事が望まれる。特にこのうちでもIBMの提供するサービスは全文 、また明細書全イメージが提供されるというインパクトの強いものであった。この他にW IPOが提供するPCT Gazetteの検索及びPCT Gazette in paper formでのPDF形式での提供 もある。あとこれでEPOが早くサービスを開始してくれればほとんどが無料で入手でき ることになる。これらの他に無料の情報としてDerwent社が提供する最近3週間発行の 40カ国の特許情報が検索できるPatent Discoveryのサービスもある。ただしこれは出 力はタイトル、特許番号、発明者、出願人だけであるがWPIと同様にオリジナルのタイ トルでなくある程度内容のわかるタイトルとなっているのが特徴である。有料のサービ スとしてはドキュメントデリバリサービスと一体になったやはりDerwent社のPatentExpl orerがEPも入手できることから安価で使いやすいサービスとなっている。

4.ただ程高いものはない?

 さて、このようにインターネット上にはかなりの程度無料で利用できる特許情報があ ることはわかった。では、これらをどのように使えばいいのか。先に述べたようにそれ ぞれの特徴をよく見定めて、目的に応じて適切なものを選んで使用するという以外にな いがひとつ気を付けておかなければならないことがある。無料のサービスは本当に無料 なのかよく考えて欲しいということである。例えばIBMのサービスを使えば一見無料で 明細書まで入手でき得をしたような気になるかもしれない。これは本当だろうか?確か に入手するのに検索も出力も課金はされない。しかし実際にやってみた人はわかると思 うが明細書を例えば10ページあったとして、ちゃんと出力するのにどれだけの手間がか かるか考えて欲しい。1ページずつプリントアウトしなければならないので、その間他 の仕事をしながらという訳にはいかない。それにかかるあなた自身の人件費を考えたと き本当に安くあがっていますか?
 そういう訳で明細書を取り寄せるのなら、外部のサービスを利用して購入した方がよ ほど安くつくことになる。他にも考えてみると結局商用のオンラインデータベースを使 用した方がいい場合も多々ありそうである。結局、インターネット上の特許情報につい ても選択肢が増えたということに過ぎないことを理解した上で使用して欲しい。

5.今後の動向

 日本におけるは特許庁の親切運動に見られるように、各国特許庁は保有する情報を無 料で提供していく方向にある。また三極ウェブサイトでの特許情報普及の促進、三極ネ ットワークの構築による三極間の審査情報等の交換、あるいは三極共同サーチ及び審査 等が進められており、種々の情報が無料(マージナルコストというべきか)で提供される ことは既に具体的に進められている。これらに対応して、従来の商用オンラインサービ スやインターネット上の有料のサービスも当然差別化のために何らかの動きを見せてく るものと思われる。
 ここしばらくはこれらの状況から目が離せない状態が続くものと思われるが、いずれ にせよわれわれにとって使いやすく安価なサービスがたくさん出てくる事を望むもので ある。