キオビヤドクガエルの成長記 特別編 
 
− キオビ闘病記 − 
 
2006年11月3日 公開、 11月10日 写真追加
 キオビヤドクガエルを導入して4年、SLSもあったし発生途中のオタマは何匹も落とした。それでも、大人のカエルはこれまでなんとか私のつたないビバリウムで生活し、キオビは丈夫なカエルだと安心していた。
 そんな中、なんと一斉に5匹も続けて死なせてしまう事件が起きた。逝ったのは母親のゆーこちゃんとその子供らの青年期の個体(ブラザーズ)だ。複数の原因が偶然重なり合ったような気もして、これだという原因は今も分らない。
 とにかく、「こんなことがありました」という報告だけはすべきだろうと思い公開します。
1st : セッシャ 上陸7ヶ月目(キオビブラザーズのビバリウムにて)
 
9月11日 キオビブラザーズ最年少の「セッシャ」がケージ前面でうつぶせになっているのを帰宅時に発見。タッパーに濡らしたキッチンペーパーを敷き、抗菌目薬をしみ込ませてその上に寝かせる。自発運動は殆ど無い状態だった。
  12日 朝、動かなくなっているのを発見。舌を出していたので呼吸困難があったかもしれない。
 
2nd : 里子予定個体 上陸3ヶ月目(個室子供部屋にて) 写真下参照
 
10月9日 朝は元気だった里子予定の子が帰宅時にひっくり返っているのに気が付く。触るとあらぬ方向にジャンプして仰向けにひっくり返る。元に戻すとしばらくは普通の姿勢でいるが、何かの拍子で仰向けになるとそのまま。
  10日 朝見ると腹部が異常に脹れている。相変わらず仰向けになる。
  11日 朝には動かなかった。帰宅後、可哀相だが腹部を切開すると大量の腹水が出てきた。腹水が大量に溜まって心肺を圧迫したのかもしれない。腹水は透明な液体である。内臓に著変なし。
 
3rd : エモン 上陸8ヶ月目(キオビブラザーズのビバリウムにて)
 
10月14日 ブラザー全員を個別ケージに移すためにビバリウム解体。立てかけたコルク板の間に死亡個体発見。かわいそうな「エモン」、死後2日は経っているだろう。開腹して得られる情報なし。
4th : ゆーこちゃん 上陸から5年6ヶ月(キオビ親ビバリウムにて)
 
10月14日 ゆーこちゃんの姿が見えないのでビバリウム中をひっくり返して探すと、入り組んだ朽木の奥の方にはまり込んでいた。弱っているようで、慌てて個室に移す。
   15日 力なくうつぶせになった状態は変わらず。
   16日 帰宅時に動かなくなっているのを発見。大量ではないが腹水貯留。卵巣に卵を確認。自分も精神的にひどいダメージを受ける。
 
5th : マルコ 上陸10ヶ月目(キオビブラザーズビバリウムから個別ケージへ)
 
10月16日 個別ケージに移した「マルコ」の様子がおかしい。仰向けになる。
   17日 マルコの腹部膨満。腹水による圧迫死を避けるため、少量抜いてみる。
   18日 さらに腹水をシリンジで0.5mL抜く。全く透明である。これで普通の腹回りになった。
   19日 体液を大量に失ったことから、通常の水の代わりにタイロード液でミズゴケを湿らせてみる。
 20〜23日 朝晩清潔なタイロード液に交換し、霧吹きで背中に水をかける。平衡感覚が全く無い状態なので、煮沸して清浄にしたミズゴケで身体を包む。
 シリンジで抜いた腹水を遠心分離し、肉眼では見えない沈殿物を見る。リンパ球と思われる単一の細胞が極僅かにあるのみ。
   24日 ミズゴケを交換しようとしたときに後肢が強直し、その後力が抜ける。脊椎にダメージを与えてしまったのかと心配。
 25〜27日 寝たきり患者の看病。後肢には全く力が入らない。それでも水をかければ目を動かすし、触れば前足でイヤイヤをする。
   28日 タイロード液を腹腔内に0.1mL注入。
   29日 前脚で顔を持ち上げたりするようになった。タイロードを皮下に0.05mL注入。
   30日 細胞培養の培地はどうかと、培地をひたひたにしたキッチンペーパーの上に3時間ほど乗せておく。ミズゴケがなくても前足で頭を持ち上げていた。良くなり始めたかと思った数時間後、うつぶせになり、当日深夜にとうとう動かなくなった。
 翌日解剖。まだ脂肪組織がある。直腸が黒く膨大。肺は正常な状態を見たことがないので分らない。が、これまでの例は全て色調は黒く、空気が入っているようには見えなかった。哺乳類の肺はピンク色なのが普通だが、ヤドクガエルはどうなのだろう。
 
 腹水を抜くところまでは正解だと思う。が、それ以降の処置がお粗末だったかもしれない、大間違いだったかもしれない。感染予防ができていなかったのではなかったか、輸液、補液が必要だったのではなかったのか、何か経腸で与えた方が良かったのではないか、培地は大間違いだったのではなかろうか。
 カエルたちの生命力にどう協力してあげれば良かったのか分らず、マルコは長患いしただけに不憫でたまらない気持ちになった。
結論の出ない考察
 
 一気に落ちたので感染症を恐れ、逆性石鹸と熱湯で器具器材を消毒していたが、そうでは無いする気がする。人為的な原因としては、餌、温湿度、水を考えた。しかし、ダークホース的原因としてSLSのように遺伝的なものというのはどうだろう。もちろん、5匹が同じ原因とは限らないが、平衡感覚を無くしたような異常行動、腹水の貯留という共通の症状があるものは同じ原因と思わざるをえない。
 
 餌に原因があるとすれば、コオロギの単食とカルシウム添加過剰があったかもしれない。推測でしかないが、消化不良の原因になった可能性はある。
 
 ケージ内の環境は、親ケージは1日6回の自動ミスティングであるのに対し、ブラザーズは朝晩の霧吹き、密閉度の高い仔ガエルケージのミスティングは気が向くときのみである。仔ガエルケージはキッチンペーパーを敷いているので、週1回以上は床敷きを交換している。
 水場は親ケージでは浅い皿にミスティングの水が溜まるようになっているので、月に一回洗う程度、ブラザーズでは毎日交換、仔ガエルも毎日交換。
 
 温度は25℃から30℃の範囲にあったようで、特に異常は無かったと思う。
 
 生き残ったのはボーイズ3人(年齢不詳)全て、ブラザーズは最年長(上陸11ヶ月目)のツキホシ1人、そして上陸2ヶ月目の幼い仔ガエルが3人である。
 あの悪夢がまた繰り返すのではないかと、疑心暗鬼でカエルの様子をまじまじと見る。もともと太り気味なので、腹水かどうかは判別しにくいが、腹水が溜まる前には行動異常が出てくる。餌の食いが悪くなるのが最初の兆候だったろうが、必ずしも全員が餌の時間に現れるのではないため、複数飼育のビバリウムでは発見が遅れた感がある。さらに出勤前の慌しい中に餌やリをするので、そのあたりの確認が甘くなっている。
 
 9月から10月にかけ、寒暖の差も激しく、気圧の変化も著しい日々であった。自分自身もあちこち体調が悪く、また仕事もひどく忙しかった。もう少し毎日良く見てやれば何とかなったような、今からすれば仕方の無いことだがひどく悔やまれる。
 
 ゆーこちゃんの残した子供たちをもう1人たりとも落としたくない。これまで以上に、心してカエルに接しよう、愛情をかけていこう。
 もし、同じような症状が現れて、その原因が明らかになった、あるいは治療法のアドバイスがあれば、どうぞ教えてください、お願いいたします。
ゆーこちゃん(2004年9月20日)
 
← 里子予定個体の外観
 
腹水が大量に貯留した状態。
仰向けになった状態から元に戻しておけば、しばらくはその姿勢を保っている。
 
 
← ゆーこちゃん
  腹水が溜まってしまい、弱っている状態で発見。
 
 
↓ 長患いをしたマルコ。
 
   左 : 痩せて下半身が動かなくなったが、上半身は動くので前脚で頭を持ち上げている。命を失う数時間前。
 
   右 : 命を失ったことは外観から分らない。苦しみから解放された顔に見えるのは人情、もっと生きていたかったろうに。