Fewer options 選択肢の減少 (連載第447回)

 昨年の暮れも押し迫った夜、家中が突然真っ暗になった。分電盤を見ると漏電ブレーカーが落ちていた。原因はただちに特定できた。20年来使ってきた食器洗い乾燥機が動作異常を起こしたのだ。例によってネットで調べてみたら、食洗機は往々にして水漏れによる漏電が起こるという。電源プラグを抜いてから漏電ブレーカーを上げると停電は完全に解消した。

 年が明けてから後継機(successor)を探し始めた私は失望した。同じサイズの製品が無い。長年わが家で活躍した食洗機の製造元である旧ナショナル(松下電器)、現パナソニックの製品群(product lineup)は大きく様変わりしていた。標準サイズの現行機種は先行機(predecessor)と比べて幅と高さが10cmほど大きく、わが家の狭いキッチンには置けない。小型機種なら幅と高さが先行機とほぼ同じでうまく収まるが、奥行きが浅く、食器がこれまでの半分しか入らない。

 一方、同業大手他社はこの製品分野または白物家電事業からすでに撤退している。給水栓に接続しないで使うタンク式の製品が複数の新参メーカーから出ているが、毎回5リットルもの水を手作業で注ぐといつかこぼしそうだという家内の反対により不採用。壊れた食洗機を修理して使い続けることも検討したが、メーカーのホームページで修理費の目安を見たら、案の定、新品を買うのとたいして変わらないと分かって断念した。

 結局、毎日2回ずつ食洗機を回すことで家内には納得してもらい、わが家で長年にわたる先行機の使用実績があるパナソニックの小型食洗機を買った。薄汚れたスチール製の専用台も買い替えたいと言い出した家内に私は、メーカーではもはやこの種の別売品(option)を供給していないから同じサイズの台を別途見つけない限り不可能だと説くと共に、シール剥がし液と同系色のテープを使ってセロテープの跡を取り除き塗料のはげた箇所や錆を覆い隠して承服させた。

 その昔、国内家電ブランドが隆盛を極めていた1960〜80年代にそのテレビCMソングを聞きながら育った私は、国産品の選択肢の減少と同業界の衰退ぶりを今回改めて思い知らされていささか落胆を禁じ得ない。数年後にまた家電品が壊れて買い替えるか修理しようとしたときに、国内ブランドが製造販売を続けていて代替品や修理用部品が手に入る(available)ように願ってやまない。

(『財界』2020年2月26日号掲載)


※掲載日:2020年3月1日
※このページの無断複写・転載は固くお断りします。
©Yoshifumi Urade 2020  All rights reserved.