Hands-free ハンズフリー (連載第445回)

 ゴムバンドで頭につける懐中電灯(flashlight)を百円ショップで見かけて一つ買っておいたところ、これが家事に大いに役立っている。古いわが家でハウスダストやカビを抑えるために年中稼働している数台の空気清浄機と換気扇の清掃に以前はかなり時間がかかったが、頭につけたライトで手元を照らしながら両手を自在に使える(hands-free, handsfree)ようにしたことで作業効率が劇的に改善した。天井の照明器具を掃除しようとして取り外すと当然室内が暗くなるが、これさえあれば作業に支障が生じない。

 こんなに便利ならもっと早く購入すれば良かったと思うが、この種の器具は暗い炭鉱や電柱のような高所で働く作業員が使う高価な業務用品しか無いという固定観念が私にはあったのか思いつかなかった。私が買ったLED式のそれは安価ながら小型軽量でとても明るく、同様に百円ショップで入手できる単4電池3本で長時間使えるなかなかの優れものだ。

 百円ショップの常として、いつ店頭から消えるかもしれないと心配になった私は、故障や紛失に備えて同じ物をもう二つほど買っておいた。そのパッケージを改めて見ると「LEDヘッドライト」と書いてある。ヘッドライトと聞くと普通は自動車や自転車についている前照灯を想起しがちだ。例によってネットで検索してみたところ、日本語のヘッドライトはどちらの意味でも使われている。一方、英語のheadlightは普通は前照灯を意味する。頭につける懐中電灯をheadlamp(ヘッドランプ)と呼ぶこともあるが、この言葉も前照灯の意味で使われることが多い。なお件の百円商品のパッケージには英語でhead-mounted light(頭部装着型ライト)と併記してあるが、この書き方なら誤解を招かなくて良いかもしれない。

 その形状ではなく機能に基づいてhands-free lightという言い方もありうると思って検索してみたら、今日では前述の頭につけるもの以外に首にかけるタイプからバンドで腕に巻き付けるタイプまで様々な製品が出ており、日本語でもハンズフリーライトという言葉はそれらの総称(上位概念)として使われているようだ。

 言葉の意味にしろその言葉が表す物の効用にしろ、時代の変化や技術の進歩と共に変化することもあって、この年になっても知らないこと、気づかないことがたくさんある。

(『財界』2020年1月29日号掲載)


※掲載日:2020年2月3日
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