How dare you よくもそんなことを (連載第440回)

 How dare you!(よくもそんなことを!)―壇上の少女は怒りに満ちた口調で国連の気候行動サミット参加者、さらにテレビ画面を通して全世界の人々に訴えかけた。グレタ・トゥーンベリさんというこの若きスウェーデン人環境活動家は、気候変動(climate change)を引き起こす環境破壊への取り組みが遅い大人たちに業を煮やしたかのように強烈な演説をかました。曰く、If you choose to fail us, I say, we will never forgive you!(私たちを失望させる道を選ぶなら、言わせてもらうが、私たちは絶対にあなたがたを許さない)。

 感情的な表現を避ける大人の社会、まして国際会議やビジネスの場でこのような物言いを耳にすることは滅多に無い。たしか高校時代に使っていた英語の教本にHow dare you say such a thing!(よくもまあそんなことが言えたものだ)という例文が出ていたが、私自身は言ったことも書いたこともない。彼女の演説ではHow dare youが何度か繰り返し使われており、それによってスピーチに強いインパクトを持たせようという意図が垣間見える。環境問題に疎い私のような朴念仁までが思わず耳をそばだてたくらいだから、その点に関しては上出来と言えよう。

 一方、同じ会議に出席していた就任早々の小泉進次郎環境大臣の「環境問題への取り組みはセクシー(sexy)であるべきだ」という発言が、意味不明だの具体策に欠けるだのとマスコミや野党から辛辣な評価を受けた。小泉純一郎元首相の子息にして雄弁ぶりで注目を集めてきた彼のことだから、片言隻句をいちいちとらえられるのは致し方あるまい。その映像を見ると、彼は隣にいた別の参加者の発言を引いてそう言っただけで、特段深い意味は無かったようだ。sexyという形容詞が誤解を招くのなら、excitingとかfascinatingといった当たり障りのない言葉を使えばよかったかもしれないが、それでは世間の注目を集められなかっただろう。たとえ環境相としての彼に具体的な政策や理念が無いとしても、それはまた別の問題だ。

 だが、就任早々だから分からない、これから役所と相談するといったその場しのぎの彼の返答は、凡庸な大臣の答弁だった。そこはひとつ、環境問題はセクシーであると同時に一筋縄ではいかない難題(challenge)だ、だからこそ全世界の人々の英知を結集しつつ情熱をもって取り組みたい、といった力強い答えが欲しいところだ。

(『財界』2019年11月5日号掲載)


※掲載日:2019年11月19日
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