Guideboard 案内板 (連載第438回)

 オリンピックの開催を1年後に控えた東京でちょっと気になるのが外国人向けの案内板(guideboard, guidepost)のあり方だ。私のように長年都内に住んでいて多少土地勘がある者は、普段ほとんど通らない駅構内や街中は案内板の矢印(arrows)を頼りに何とか歩けるが、それでもよく間違える。外国人のように他所から来た人(stranger)ならもっと難儀しそうだ。

 鉄道会社によっては駅名などを日本語と英語の他に中国語(簡体字や繁体字)や韓国語(ハングル)で表示しているが、率直なところ、繁雑で見づらい。オリンピックには中国・台湾や韓国以外の外国人が多数来日することも考慮すれば、公用語でも国際語でもない一部の外国語で表示するのは不公平でもあり、考えものだ。

 漢字もアルファベットも読めない外国人向けには、スマホの交通案内や観光案内アプリ(tourist guide app)を多言語に対応させることでおおかた解決するはずだ。スマホを使わない私が言うのも僭越だが、きょうび海外旅行する裕福な外国人ならスマホのひとつくらい持って来るだろう。

 英語表記に関しても気にする向きがある。例えば同じ道路名の英訳がavenueだったりstreetだったり、はたまたboulevardだったりする。米国のニューヨークでは南北方向に走る街路(大通り)をavenue、東西方向の横道をstreetと使い分けている。だが東京の場合、必ずしも京都や札幌のように道が碁盤の目のように走ってはいない。どう呼んだところで道は道に違いないのだから、その英語表記に一貫性が無いとしても、それ自体はたいした問題ではない。

 旅行者にとってもっと重大な問題のひとつは、自分が通ろうとしている道が自動車専用道路なのか、それとも自転車や歩行者も通れるのかということだ。自転車が誤って高速道路に侵入してしまうトラブルは意外に多いという。雑多な情報を様々な文字で表記したことで案内板の視認性や判読性(legibility)が損なわれる愚を避け、より重要な情報を誰にでも一目で分かる絵文字(pictogram)で大きく表示するなどの工夫が望まれる。

 もっともこの国の場合、案内板の表示に多少の過不足があったとしても、おもてなしの心とボランティア精神に溢れた親切な人々が手取り足取り案内してくれるので、それほど心配するには及ぶまい。道が分からなければ地元の人に尋ねてもらうのが一番かもしれない。

(『財界』2019年10月8日号掲載)


※掲載日:2019年10月22日
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