Go viral バズる (連載第437回)

 私も歳のせいか、月日が経つのをますます早く感じるようになった。気がつけばツイッター(Twitter)を使い始めて今秋で10年になる。その使い勝手や長短については本連載でも何度か触れてきたが、長年使っているうちにそれも少しずつ変わってきた。

 社会への影響力がもともと大きい著名人やマスメディアにとって、ツイッターは低コストで手軽な情報発信手段だ。米国のトランプ大統領が政策や人事をツイッターに書き込むだけで、そのメッセージは瞬時に全世界に伝わる。

 だが私のような無名人(nobody)の場合、ツイッターはその点ではあまり役に立たない。自分ではなかなか気の利いたことを書いたつもりでも、それを読むのはせいぜい数人程度の常連読者だけだ。一方、無名の一般人でも投稿した記事があっという間に拡散されることがある。ネットで俗に「バズる」と呼ばれる現象だ。この言葉、「炎上」(連載第435回「炎上中」参照)とは違って否定的な意味は無い。自分のツイート(tweet, 投稿記事)がバズったことのない私は最近までこのネット用語を知らなかったが、口コミマーケティングの意味で使われるbuzz(原義は「噂話」)marketingに由来しているらしい。ただし英語ではふつうgo viral([ウイルスのように]急速に拡散する)などと言う。

 近頃の私はツイッターを専ら情報収集に使っている。報道記事の閲覧だけなら昔ながらのテレビ・ラジオや新聞・雑誌による情報収集と大差ないが、ツイッターでは、有用な情報や大義に適う主張を含む投稿をリツイート(retweet, 転載)するようにしている。私がリツイートした記事を直接読む人はごく少数でも、それが次々と他人にリツイートされて拡散し、事によっては多数の人々に共有される。

 もちろん、情報の出所(source)や信憑性(authenticity)を確かめずに不用意にツイートを拡散することは厳に慎まなければならない。偏向した記事や偏見の持ち主の挑発的なツイートには一切関わらずにスルー(無視)するのが良策だ。言うのは簡単だが、現実にはなかなか微妙なところもある。あからさまなフェイク(fake, 偽)ニュースではない記事でも、文章にせよ映像にせよ編集の仕方次第では情報の受け手に誤った見方を植え付けかねない。  玉石混交の情報の山から適切な情報を取捨選択するには、何事も批判的に考えてみることだ。

(『財界』2019年9月24日号掲載)


※掲載日:2019年9月26日
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