Under fire 炎上中 (連載第435回)

 有名人の失言や非行によるネットの炎上騒ぎは今に始まったことではないが、このところ顧客や従業員などの一般人が会社とのトラブルをネットで告発して会社側が非難の集中砲火を浴びる(come under fire)ケースが相次いでいる。某化学メーカーでは育児休暇取得後に遠地への転勤を命じられた従業員の妻がパタハラ(パタニティハラスメント=和製英語)を、遊園地の戦隊ヒーローショーではMCを務めていた元女性従業員がセクハラ(sexual harassment)をいずれもツイッターで訴えて世間の知るところとなった。

 会社側がただちにしかるべき部署または責任者に命じて事実関係を調査・公表し、率直に非を認めて謝罪すれば、問題はそれほど拡大せずに済む。前述のセクハラ事件はそのケースだ。投稿者がただちにその謝罪を受け入れたことをツイッターで報告すると、事態は一気に沈静化した。

 しかし、初動対応を誤って初期消火に失敗すると、会社の社会的信用が地に堕ちるほどの危機を招きかねない。某チェーンホテルで結婚式を挙げた夫婦が式中に起きたスタッフの数々の失態や違約内容を口コミサイトに書き込み、その友人がそれをツイッターに投稿したところ、リツイート(転載)が10万以上に達した。悪事千里を走る(Bad news travels fast)と昔から言うが、SNSが一般に普及した今日、この種の不祥事は一両日中に全国に知られてしまう。

 問題の経緯をざっと読んでみたところ、ホテル側はすでに事実関係をほぼすべて認めてマネージャーが謝罪したものの、その応対ぶりがけんもほろろだったのが新婚夫婦の怒りを買ったようだ。さらにそのホテルが後日ネットに掲載した文章には「一部のインターネットの書き込み」により利用客の皆様に「ご心配ご心労をおかけして」とだけあって、事実関係や責任の所在に一切触れていなかったことから、これで真摯に謝罪するつもりがあるのかとまた叩かれた。もちろん、数ある投稿の中にはそのホテルへの好意的な評価や、ホテル従業員に対する個人攻撃は良くないとたしなめる意見もあったが、圧倒的多数の非難の声にかき消された。

 もし支配人か本社のコンプライアンス担当役員などの要職者が早い段階で動いていたら、これほど炎上が拡大しなかっただろう。他の企業で起こった炎上騒ぎを対岸の火事とばかりぼうっと見ていてはダメだ。

(『財界』2019年8月27日号掲載)


※掲載日:2019年8月27日
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